第20話:長岡の友人との別れ

文字数 1,688文字

 飯山線のすぐ横を、ずっと信濃川「長野県に入り千曲川名が変わる」と併走しており、景色が非常にきれいで、長野県に入ると田園風景が広がり違った美しさがあったと語った。2時間程度で着き、意外に早いので驚いたと話した。今日は、長野に、行かず、湯田中、志賀高原、万座温泉、嬬恋、軽井沢へ行く事にした。

 横手山の山頂の雲上レストランで、コーヒーとボルシチとパンをいただいた。そこのパンの旨い事といったら例えようもない。「筆舌に尽くせない、おいしさ」というのは、こういう事を言うんだろうなと、思った位だ。また標高2300メートルと高く、吹く風も涼しいを通り越して、寒いくらい。今晩は、天下の名湯、草津温泉に宿を予約しておいた。

 明るいうちに到着して、ゆっくり部屋で食事をした。温泉につかり、彼女から、つもる話をいろいろ聞かされた。お見合いさせられた話や新しい会社での出来事など女性は、とにかく、良くしゃべる。ビールを飲みながら途中で、買った野沢菜をつまみに、それを聞いていた。そして、その晩は久しぶりに逢瀬を楽しんだ。

 前よりグラマーになったねと言うと30才を過ぎたら急に肉がついてきたと言っていた。その方が僕には、良いだけれどねと笑った。腰のはりや胸も一回り大きくなり一段と色気が増した。
疲れ切った身体が、また息を吹き返さずに、いられなかった。久しぶりの逢瀬に何回も営みを、重ねて、十分に、満足した夜だった。
 
 翌日も良く晴れた日で、朝の涼しいうちに散歩した。歩きながら、村下さんが、いなくなったら、誰か、良い人見つけて、さっさと結婚しちゃおっと、いたずらっぽい目で笑った。そうだな30代になったんだから早い方が良いかもねと言うと、ほんとに意地悪なんだからと軽くこちらを睨んだ。今日は、嬬恋高原、鬼押し出しを通り、軽井沢へ行った。

 そこでゆっくりし喫茶店で休み磯部を抜けて高崎へ行くという計画を立てた。翌日は旧軽井沢など、名所は、かなり混雑していて落ち着かないので、早々に軽井沢を後にし妙義山を見ながら予定より早めに予約しておいた高崎のビジネスホテルについた。午後16時過ぎ、到着した。今夜は、最後の夜なのでスナックで思いっきり、歌おうという事で夜の町にくり出した。

 町の中は意外に、すいており、いろんな歌をデュエットした。また、他の人の歌で、踊り続けた。酔いもまわりはじめ早めにホテルに帰った。帰ってソファーに座りながら最初にであった時の話や長岡のホテルでの最初の逢瀬の思い出を語り合った。彼女が、栄子と村下をきっと神様が会わせてくれたんだよ。

 そー、そーに違いないと、酔って、言ってるのか、本心で言ってるのか、わからないが、真剣なまなざしで、話し続けた。でもね、後悔なんて、ちっともしてないよ。むしろ感謝してるくらいさ。だってこんな経験、そんなに誰もが、できることじゃないしね。そして、あと腐れなく、さっぱりと、きれいに・・と言うと、また、大声で泣きだした。

 大声出すなよと、村下が言うと、ごめん、でも、泣きたいんだよ。今夜は、とっても、泣きたいんだよと、村下に抱きついてきた。泣きながら、しっかりと最後になるであろう逢瀬を、十分に楽しむ事になったのである。そして知らぬ間に、お互い爆睡してしまった。翌朝、彼女は、さっぱりとした顔で村下さん、こんな栄子に、つき合ってくれて、ほんとにありがとう。

 栄子は、これから普通の主婦になって、脇目もふらずに生きていくよ、約束すると言い、また例の、指切りげんまんをした。だって、こんな楽しい、思い出をつくってくれたんだもんと、さばさばした感じで、きっぱりと言った。栄子は、今日は本当に送らなくていいからと村下に告げて、今回は、駅まで一人で歩いて行くからと言った。

 村下は、何か、送ってこないでと振りかえられたような気がして、そのまま黙ってうつむいた。彼女が別れ際、深々と頭を下げ、いろいろ、お世話になりました。それでは、お元気でと、言って、早足で、部屋を出て行った。なんか、むなしさというか、おかしさというか、妙に、爽やかな、気がする村下だった。
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