第8話:レ線写真をコンピュターに取り込む実験1

文字数 1,728文字

 信州大学を含め大学系の病院でも信州大メディカル・パソコンクラブのメンバーが増え、村下と長野県の売上に大きく貢献してくれるようになり、全県的に、業績が伸びてきた。パソコンのフロッピーディスクを久光先生に渡して欲しいという要請を多くの先生から受ける様になった。 学会発表の用のスライドを見てもらいチェックしてもらうらしい。

 仕事面で、この年は、植えた種が、芽を出し、花開きつつある良い年であり順調に売上もついてきた。その後、久光先生からの電話が入り、村下が、電話をかけ直すと、大至急、教授に会って欲しいのとの連絡だった。そこで、急いで、医局へ向かった。教授に、お会いし、お話を聞くため教授室に入った。

 その時の内容は、白黒のレントゲン写真は、24階調「黒白の濃淡程度が24段階で非常に細かいと言う事」であり、その微妙な違いを医者が見分けて骨折している場所と、その程度を見ると言うのだ。そのレントゲン写真をパソコンにデータとして取り込む事ができるだろうか、という質問だった。

 もし、それが、できれば、医学にとって、非常に役立つし、画像データベースとして、是非、使いたいという話だった。早速、調べてみますと、お答えして、失礼した。NEC、富士通に、問い合わせてみたが、どの会社も現状では、できないとの回答だった。パソコンの販売会社に聞くと理論的には可能ですが、現状では、できないと語った。

その理由は、多くのメモリーが必要であり、高額り、そんな、パーソナルコンピューターはないし、そのために大型コンピューターを使うという訳にはいかないだろうと言うのだ。また、写真の画像を取り込むとしても、そんな高性能スキャナーは、日本にはないのではないかと、どこの
技術屋さんも否定的だった。

 どうしても試してみたいというと、心当たりのある所に、聞いてみると約束してくれた。待つ事、1時間。IBMが、興味を示してきたと連絡が入った。もし、成功した場合、その結果を会社の宣伝として、使わせてくれるなら実験しに行くとの返事をもらったと答えた。翌日、この話を教授に伝えたところコンピューターの宣伝許可の話は、承知したと返事だった。

 教授の空いてる日を聞いて、再度、直接をIBMに、話してみますと伝え失礼した。IBMと打ち合わせをして、翌月10日19時から、大学の医局で、実験をする事となった。当日は、大型トラック一台と小型クレーン車と、乗用車一台で、IBMの社員が5人で、信州大学医局にやってきた。

 大学病院の廊下を大きな台車にのせた大型イメージ・スキャナー「画像取込装置」と、大きいパソコンとハードディスク装置とモニターを医局に持ちこんだ。医局は、広いが、機械を操作するのに5人と、データベース研究会の5人と教授の11人が入ると、いっぱいになった。そして、教授が今回のテストのことを説明。

 次に、IBMの技術屋さんが、この実験は、日本発は、もちろん、世界中でも、多分、最初の実験ではないかと語った。そして、画像データの取り込み方法について、概略説明をした。その後、早速、レントゲン写真を取り込む事を始めてくれと教授が依頼した。

 最初、機械の電源を入れて約5分待ち安定したのを確認して、イメージ・スキャナ「画像取込装置」の上にレントゲン写真をのせ、イメージ・スキャナのスタートボタンを押した。独特の音を立てて、少しずつ光が動くのが見えた。1枚を取り込むのに、約5分、メモリーに画像データをため込み、次に、そのデータをハードディスクに書き込むのである。

 メモリへの取り込みとハードディスクへの書き込みに、合計、約十分かかった。その画像を、
24インチのモニターに映し出すと、見事にレントゲン写真の白黒映像が、モニター画面に映し出された。大きな、どよめきと、ため息がまじった声が、医局内にひびいた。それを教授が見始めた。

 すると、画像が暗いからモニターの明るさを上げる様にと、教授からの指示が出て、係員がモニターを調節した。その画像を、じっくりと見てから、数分して、教授が100点満点中、70点位かなとの評価を下した。そして、もう一つ解像度が欲しいと語った。骨折している部分はは、完全にわかる。
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