第179話 孤独と疎外感 5 Aパート

文字数 7,758文字


 午前中の間、断続的にではあるけれどメガネからと思われる嫌な視線を休み時間の度に感じてはいた。ただ、もう受験シーズンの時期も手伝ってなのか、授業中だけはあのまとわりつくような視線は感じなかった。
 そして私の方も先週一週間は朱先輩からの参考書や家庭教師もあって、机に向かうようにはしていたから、特に分からない所も無かったし、授業について行けないトラブルも無かった。
 ただ教室内1/4程の空席の中で行われた授業は全て重苦しく、変に静かで息詰まる雰囲気だった。
 だから根本が解決しない教室の中、昼休みに入ったとしてもその教室な雰囲気は中々軽くはならない。

 その中で昨日雪野さんとメッセージで約束の確認をしていたからと、久しぶりにお母さんが用意してくれたお弁当を手に教室内で待っていたら、今まで私には分からない所があった時くらいしか喋った事の無い九重さんが、私の方へ向かって来る。
「岡本さん久しぶり。先週は大変だったんだってね『?!?!』もし何か分からない所とか、困った事があったら、同じクラスの俺に言ってくれたら力になるから」
 かと思ったら何の前触れも無く私の肩に手を置く、その聞き間違いようのない声の主、島崎――メガネ。
 前から来る九重さんを迎えるつもりをしていた所へ、私の肩へ手を置くだけでなく、肩を撫でるようにその手を動かすメガネ改めセクハラメガネ。
 あまりにも意表を突かれてびっくりした私は、あの倉本君に腕を掴まれた時同様、体が硬直してしまう。
 その上、前から嫌悪感を持っていた事、以前のセクハラまがいな行為も合わせて思い出した私の身体から、嫌な汗がじわりと滲み出て来るのが自分でも分かる。
 一方咲夜さんが復学してから、昼休みだけは二人の日課になっているのか二人で教室を出て行こうとしていたにもかかわらず、メガネの私に対する行動を見てびっくりした咲夜さんが、朝の優希君との約束を果たそうと私の方へ慌てて向かって来てくれる。
「ちょっと島崎君。いくら月森さんの協力があるって言っても嫌がる女子にそう言うの良くないって。これ以上この教室での揉め事は辞めてよ」
 なのにそれすらも弾くような言い方をしてメガネを弾く九重さん。もちろんメガネを止めてくれた九重さんには感謝なんだけれど、私の方へ歩み寄ろうとしていた咲夜さんの足も止めてしまうのは、どうなんだろう。
「……じゃあ岡本さん。同じクラスのよしみで俺も力になるから、何かあったらいつでも声かけてよ」
 一方メガネの方にもやっぱり今のクラスには思う所があるのか、いつもみたいな“こうあるべき”と言う押し付けも無く、そのまま引き下がる。
 雪野さんが顔を出してくれるから、お昼を一緒とは行かないけれどせめて一声はと思っていた所に、
「ちょっと岡本さん大丈夫? まだ調子悪いんじゃないの?」
 私の顔に残る暴力痕、青みなんかを見ながら改めて声を掛けてくれる九重さん。その気持ちは嬉しいけれど、実祝さんと一緒に出て行った気落ちした咲夜さんを見ていると、何とも言えない気持ちになってしまう。
「そう言う訳じゃ無いよ。この顔の見てくれはこんなだけれど、痛みとかはもうないよ。でもありがとう。助かった」
 それでもやっぱり私は優希君の彼女だからと言うのも手伝って、嫌悪感や好きでもない男の人に、触られるのを体全体が嫌がっているのが分かる。
「ううん。うちもこうなるまで何も言えなかったわけだから決して他人をどうこう言えない。ただ前に一度言ったと思うけど、面白半分腹いせ半分で他の男子をけしかけるなんて、同じ女子として最低だと思う」
 蒼ちゃん同様、誰に対しての言葉なのかはすぐに分かった。しかもその感情は以前、私が咲夜さんに無理やり告白させようとしていたあの女子グループに抱いた感想と同じだと言うのも分かってしまう。
「……それでも咲夜さんからは謝ってもらっているし、あのメガ――男子も何とかしてくれるって約束はしてくれた」
 だからって同調する事は間違っても無いけれど、咲夜さんを擁護するにしても、どうしても弱くなるし事実を伝える事くらいしか出来ない自分もいる。
 それに私自身もこんなに早くこんな気持ちになるなんて思ってもいなかったから、九重さんを窘める言葉も出て来ない。
「それでも夕摘さんと出て行っちゃったけどね。岡本さんが統括会やってるからって言うのは分かるけど、人が良すぎるって言うのは付け込まれる原因にもなるよ」
 だけれど私は統括会をやっているからって言うのはあんまり関係が無い。というより因果関係がこれも反対なのだ。
 人の笑顔が好きだから、朱先輩の勧めもあって統括会に参加したのであって、統括会の立場だから人を笑顔にしないといけないと言うのとは少し違う。あくまで一人の人間として、友達として接したいのだ。
「ありがとう。色々考えてみるよ」
 それでもクラスメイトとして私を心配してくれているのは十分に伝わるから、お礼だけは口にしておく。
 それにしても統括会か……私なりに少しでも学校生活を楽しんで欲しくて一つでも笑顔を増やしたかっただけなのに、親友や友達、その笑顔一つがこんなにも難しいだなんて。
 考えれば考える程気落ちしながら、用事が済んだとばかりに去って行く九重さんを見送っていると、
「……」
 雪野さんが教室のドア越しに会釈して来る。


 何に対してか、誰に対して変わらない後ろ髪を引かれながらまずは今、ともすれば何も悪い事はしていないはずなのに同調圧力に負けそうになってしまっている雪野さんの元へと向かう。
「……今日は雨が降っているから、いつもと違う場所でも良い?」
「……」
 いつも雪野さんとお昼をしてたベンチは木陰にはなっているけれど、特に屋根があったりするわけじゃない。
 だから先に断りを入れるけれど、二度三度と私の顔を気にしてくれたきり、私から視線を逸らしたまま手に持った以前と同じキャラクタに包まれたお弁当を握りしめる雪野さん。明らかに自責を背負いながら私の顔を気にしてくれてるんだと思う。
「……それじゃあ少し濡れるけれど、グラウンドの方にある屋根付きのテーブルの方へ行こっか」
 だけれど、今ここで指摘しても雪野さんは口を開かないだろうし、話が出来るとも思えない。あらかじめそう結論付けている私は、以前倉本――会長や蒼ちゃん、彩風さんなど、メンバーを変えてお昼をしていたあのグラウンド横の四人掛けのテーブルへ向かおうと決める。今ばかりは優希君からの傘を持たずに。
「……」
 けれど、他の二年ないしは友達から植え付け

罪悪感からか、まったく口を利く事なく黙って私の後をついてくる雪野さん。
 とにかくこの昼休み一杯を使って雪野さんとしっかり話をしようと、今日は雨が降っているから人気の少ないグラウンドの横へ、それ以降は私も口を開く事なく目的地へと向かう。

 今日のお弁当はお母さんが久しぶりに作ってくれたから、その中身も全く知らない。本当ならそう言うワクワクも含めた楽しみがお弁当の醍醐味なんだと思うけれど、例の通り諸々の問題が解決するまでは、私には楽しいお昼はやって来ないのだと割り切る事にする……せっかくのお母さんのお弁当だけれど。
 その上で雪野さんに対する接し方、突破口が私の予想通りで良いのかどうか。どうしても最後に確かめておきたくて私から口火を切る事にする。
「……9月4日の金曜日、私から雪野さんとの約束を取り付けたのに、すっぽかして本当にごめんなさい」
 もちろん顔を突き合わせて話をしている以上、雪野さんからの言い訳が立たないのを分かった上で。
 果たして雪野さんはどう反応するのか――
「?! ちょっとやめて下さいっ! 岡本先輩! 何で先輩が謝るんですか! お願いですから頭を上げて下さい!」
 ――私に罪悪感が生まれる程の声で、私の頭を上げにかかる雪野さん。
「なんで? 私が約束をすっぽかしたのは事実じゃない。だったらハッキリしておかないといけないって言うのは雪野さんの考え方じゃないの?」
 だけれど、最終的に雪野さんの笑顔に繋がるんだったら、このくらいの罪悪感。私だってちゃんと向き合う。
「何でですか! ワタシがそう仕向けたんですから、岡本先輩が謝る事ないじゃないですか! ワタシのせいだって、いつもの二枚舌で罵って頂ければ良いじゃないですかっ!」
 辺り漂うペトリコールすらも洗い流すかのような雨の中、今も瞳を揺らしているこの頭の固い後輩は一体何なのか。
 私の予想通りの反応をするくせに、随所に私に対する黒い印象や、罵倒みたいなのを混ぜられないといけないのか。
「……他の人だとか、誰のせいだとかそんなの関係ないよ。そこにある事実は電話で連絡、伝える手段もあったのに、何の手も打たなかった私が悪かったの。だから私の方が本当にごめんなさい」
 だったら私も意地だ。私の勘が間違っていなかったわけだから、後は雪野さんに思う通りの行動を取ってもらうだけだ。
 その為ならなんだってやってやる。
 そう今みたいに持って来たお弁当を横に退けて座りながらではあるけれど、深々と頭を下げる程度なら。
「――! なんでなんですかっ! 何も悪くない先輩が頭を下げる意味が分かりません! お願いですから頭を上げて下さい。そしていつもみたいにワタシに手を上げて下さい!」
 そんな言い方をしたって、頭なんて上げてあげない。そもそも約束を破った日の昼休みは、雪野さんの友達は全く関係無くて、同じクラスの連中とあの戸塚が問題だったのだから、雪野さんが責任を感じる必要は何処にもないのだ。

「どうして当事者でもない、何も悪くない被害者である岡本先輩が頭を下げっぱなしなんですか! どうして影からワタシに後ろ指を刺さないんですか! どうしていつもみたいにワタシを叱ってくれないんですかぁ」
 二年で何をされているのか、どう言う同調圧力にさらされているのか、その片鱗を口にしてくれる雪野さん。だから私も一度頭を上げて、雪野さんに正面から向き直る。
「どうしても何も、今回

どう考えたって雪野さんが被害者でしょ? 雪野さんが私に殴りかかったの? 雪野さんが文字通り私や親友の蒼ちゃんを病院送りにしたの?」
 私は自分の想いを伝えながら、もう一度お弁当箱を横に退ける。
「……」
 のを、親の仇のように見る雪野さん。
 雨だからか周りに誰も人がいない上、雨のおかげで私たちの声もすぐにかき消される。本当に今日が雨で良かったかもしれない。
 私は横に退けたお弁当箱を目の前に置き直して、雪野さんの涙で濡れた表情を正面から見据える。
「どうしてですか……ワタシの友達が働いた暴力なんですから、ワタシがしたも――」
「――雪野さん。逃げんな。流されんな」
 私は雪野さんの言葉を、手近な椅子を蹴りながら途中で切り捨てる。雪野さんを目論見通り私と同じ土俵に立たせる事が出来ればもうこっちのもんだ。
「逃げるも何も、ワタシが謝れば――」
「――雪野さんがまだ言うんなら、もう一回頭下げるよ。分かって貰えるまで何度でも頭、下げるよ」
 言いながら再三私がお弁当箱を横に退けるのを、雪野さんが目に涙を浮かべながら憎々しげに見つめる。
 頭の固い雪野さんならこんな問答なんて必要ないはずなのに。悪くないと分かっている雪野さん自身が頭を下げるのは、誰であっても誰に対しても認めないはずなのだ。
「……じゃあワタシはどうしたら良いんですかっ! どうやって岡本先輩やご友人にお詫びすれば良いんですか! 治療費ならいくらでも払いますけど――っ!!」
「――ふざけんなよ? 誰がお金の話をした? 誰が雪野さんを悪いって言ったの? 雪野さんにだけは言っといてあげるけれど、もうお金で済む話じゃなくなってんの。もし蒼ちゃんが妊娠していたら『……っっ』お金で済む話じゃなくなるの。そうでなくてもお金の問題じゃない事くらい、同じ女だから分かってんだろ! それに、雪野さんが蒼ちゃんを妊娠させられんの? 同じ女同志で蒼ちゃんを妊娠させられんのかっ!」
 お金と言うのは雪野さんにとっては、間違いなく免罪符となりうる一つのより所だったのだろう。その気持ちは分からないでもない。
 だけれど雪野さんは何も悪くないのだ。同じ女同士でどうやって蒼ちゃんの女としての尊厳まで踏みにじれるのか。
 どうやって蒼ちゃんを妊娠させられるのか。
 私が話した事で、どう考えても雪野さん自身が責任を取れないと分かったのか、両手で顔を覆って声を上げる。
 だから私は、雨に濡れて風邪をひいてしまわない様にとの

で、雪野さんの手にハンカチを握らせる。
「その上でもう一回だけ聞いてあげる。私と蒼ちゃんを病院送りにさせたのは、雪野さん自身なの? 蒼ちゃんを妊娠させようとしたのは雪野さんなの?」
 両手で顔を覆ったままの雪野さん。その気持ちの整理がつくまでくらいなら私だって待つつもりで、雨降る中、雪野さんの一挙動に注目する。
 やがて私のハンカチで顔を拭った雪野さんが
「ワタシの友達――」
「――だから逃げんなっつってんだろ! 『っ!』いつもの頭の固い雪野さんはどうしたよ。雪野さんが逃げんのを辞めるまで、授業をすっぽかそうが先生に怒られようが、粘るよ」
 ……もう一度今度はテーブルの天板を蹴りつけて雪野さんの言動を全部止めてしまう。
 今回の学校の騒動は、雪野さんからしたらお互いによく知っていたはずの雪野さんの友達の停学、しかも二回目と言う事も助けて無期停学だったか。だから余計に堪えたと言うのはよく分かる。
 だけれど、私たち統括会も、学校側でさえも雪野さん自身が悪いなんて誰一人思っていない。ただ二年の噂で勝手にそう流れているだけだ。多分その本人を見つけてしまえば私は止まれないと思う。
「逃げるも何も、実際皆さんが仰ってる事じゃないですか! ワタシが原因だって。またワタシが騒ぎを起こしたって」
 この場に最近可愛さが戻った後輩と、対照的に全く可愛さが無くなってしまった後輩を同席させてやりたかった。
 そして今の雪野さんを見て、何を思うのか、どう思うのか、自分の頭で考えて言葉にさせてやりたかった。
「分かった。じゃあ少し聞き方を変えるよ。

病院送りにしたのは雪野さん?」
 腹立っている私が、その他一切何も余計な気を一切回さなくても良いように、質問自体の登場人物を減らした上で、強弱を付け加えた上で、答え自体も二択まで簡単にしてしまう。
「……は……」
 だから頭の固い雪野さんは、そう簡単に
“「……は

……」”
 とは言えないのだ。だったら全く可愛さの無くなってしまった彩風さんと違って、これ以上雪野さんを追い込む必要なんてどこにもない。
 むしろ今後、雪野さんの扱い方が分かった分だけこっちは大きな前進とすることが出来るのだ。
「じゃあ雪野さんが

暴力を振るっていない以上、謝る理由なんて無くなるよね」
 だから後は、雪野さん自身が同調を否定してくれるだけで、十分なのだけれど、
「……」
 二年の同調圧力も相当ひどいのだろう。それでも首を縦に振るまではいかない雪野さん。
「ちなみに学校側から雪野さんの処分の話。行った?」
 だったら全ての質問を二択にしてしまって、雪野さんに重ねて行くだけだ。
「……友達の話は、

退

と、担任から聞かされました」
「雪野さん躱そうとすんな。友達の話はもう聞き飽きたから、私の質問に答えろって。雪野さん

学校側から処分はあったの? 無かったの?」
 それにしてもと思う。何で何の関係も無い雪野さんに、ワザワザ友達の話をするのか。雪野さんの担任も大概原因なんじゃないのか。
 その担任の一つの行動が、噂を呼び同調の種になるんじゃないのか。どうしてその軽はずみな行動が問題になるって分からないのか。
「……私が約束をすっぽかしてしまった事で、そこまで雪野さんを追い込んで本当にごめんなさ――」
「――だから辞めて下さいって、何度も申し上げてるじゃないですか! 何の罪もない被害者側の岡本先輩に、これだけ謝らせてしまったらワタシ、後輩失格じゃないですか!」
 そんなのどこにも必要無いのに、後輩にまで資格が必要とか、本当に頭が固い人だなって思う。その頭の固さにはやり難い側面もあるけれど、その素直すぎる程のまっすぐさは好感を持っても良いと思うのだ。
「だったら連絡をすっぽかし、約束をすっぽかし、後輩である雪野さんに手を上げた私は先輩の資格なんて無いね」
 だったら嫌悪する理由はないのだから、とことんまで雪野さんと話をしてみても良いのかもしれない。
「どうしてそんな言い方をするんですか? 服装チェックも今回も、もう岡本先輩には謝ってもらったじゃないですか。それにワタシに手を上げたのも、空木先輩からも色々岡本先輩のお話をお伺いしましたけれど、一言集約するなら、ワタシ自身に伝えたい気持ちがあったからなんですよね。もちろん岡本先輩のご説明には納得してませんが、急にそこまで卑屈にならなくても、いつもの先輩らしく二枚舌を駆使して、堂々としてたら良いじゃないですか」
 優希君が言ったからって言うのはどうにも引っかかるし、私の彼女としての感情がまた粘度を増すけれど、優希君にはやっぱり雪野さんの気持ちが理解できているからなのか、どう伝えたのかも分からないけれど、ちゃんと頭の固い雪野さんに私の気持ちが届いていた事にびっくりする。
 その勢いで二枚舌も取り消して貰わないといけないけれど。
 ただその中でも私が欲しい言葉を雪野さんが零してくれた。
「じゃあ雪野さんも一回だけで良いから私に謝ってよ」
 頭の固い雪野さんが謝れば赦す。私はもう謝ったのだから卑屈になるなと言うのなら、普段の私らしく狡猾に搦め手を使ってやる。
「っ! その手には乗りません。さすが二枚舌を使う先輩なだけはあります」
 だけれどやっぱり統括会に参加するだけの、優希君が地頭を褒めるだけの事はある。私への印象を隠すことなく、失礼な文言と合わせて、私の意図を看破した気になっている雪野さん。でも残念。私の搦め手はそんなに温くない。私は余裕を崩すことなく、雨が降り続けるグラウンド横の屋根のある休憩場所で、雪野さんを見つめる。
「へぇ。じゃあ昨日一昨日の電話は何だったの? もう私には謝る気は無いって事? そりゃそうだよね。雪野さん自身が私や蒼ちゃんに何かした訳じゃないもんね。それだったらさっきから、先輩である『っ』私の質問をことごとく無視した『っっ』上で、躱そうとしたのも納得出来たよ」
 その上で、二年でどう言う話になろうが周りに誰一人赦してくれる人がいなくて、その孤独や寂しさに負けそうだというなら、朱先輩が私にそうしてくれたように、二年ともあの友達だとか抜かす男子とも何の関係も無い私が、雪野さんには何の非も無いと、何も悪くないし誰かに何かを誰かに言われる筋合いは無いと断定してやる。
「……」
 その雪野さんの瞼が、何かをこらえるかのように痙攣し始める。だからここぞとばかりに私は雪野さんに笑いかける。

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