幕間講義 5 ジョハリの窓 (中) ※未知の窓を除く

文字数 6,645文字

直実:さすが優珠ちゃんだな。分かり易く矢印にすると

   愛美ちゃん→彼氏さん 見られて恥ずかしい             秘密の窓
   彼氏さん→愛美ちゃん 見れて嬉しい                秘密の窓
   愛美ちゃん⇔彼氏さん 恥ずかしいから辞めて⇔愛美さんだから見たい 意思疎通
   つまり、お互いの秘密の窓の開示。この構図が成り立つんだ
中条:すごい! ものすごく分かり易い
実祝:さすが! あたしでもこれは一目瞭然
咲夜:あたしでも分かります
慶久:でもこれでお互い分かり合ってね?
優珠:今日の愛美先輩の弟さえてるじゃない。そうよ。これでお互いの秘密の窓が開いて
   お互いの共通の窓、ちゃんとした言葉で“開放の窓”が大きくなるのよ
直実:ちなみにさっきの会長のやり取りを矢印にすると

   会長→愛美ちゃん (辛抱強く話を聞く) 秘密の窓
   愛美ちゃん→会長 (優しい人だな)   無反応
   会長⇔愛美ちゃん (興味なし)     意思疎通ナシ

   ちなみにカッコ内は、愛美ちゃんが無反応だったから、会長が期待したであろう反応
   (愛美ちゃんの開示して欲しい秘密の窓)を予想しただけだから、これすらも必ずしも
   合ってる訳じゃない。
冬美:でも先ほど岡本さんは、会長をカッコ良いとか、尊敬とか仰ってたじゃない
   ですか
朱寿:でもそれはこの場で言っただけだし、当時会長さんの前でも思うだけで何も言って
   

んだから、誰にも何にも伝わってないんだよ。それもまた秘密の窓の
   “非開示”に相当するんだよ
中条:しっかり把握すると、クソ会長からしか矢印が出てなくて、愛先輩は完全に
   無視か無反応なんですね
倉本:(……さすがにこれ以上は辛い)
彩風:清くん……
愛美:だから何度も何度も言ったじゃない。私はにはもう優希君がいるんだから、他の男の人
   なんて関係ないって
優希:愛美さんっ!!
佳奈:お兄さん。岡本先輩が絡むとホンマに分かり易いですね
九重:ホントに二人は仲が良いのね
蒼依:そんなの当たり前。そもそも空木君が浮気しようものなら、愛ちゃんにも会わせない
   って言ってあるし、会長にも愛ちゃんが嫌がってる以上、認めないって言ってもあるの
実祝:蒼依の鉄壁
冬美:あの。もし岡本さんが浮気されたどうするんです?
咲夜:ひっ?!
蒼依:……雪野さん。あんまり変な事言うと怒るよ? 今の空ちゃんと矢山さんの説明を
   聞いて、愛ちゃんが浮気する要素がどこにあるの? 次変な事言ったら雪野さんは、
   あの会長の隣ね
佳奈:なんやもう岡本先輩の周りは盤石やね

直実:……それじゃ次に行くな。さっき愛美ちゃんに言ってもらった残りの二つ、頭の回転が
   速いとか、尊敬とかの感想も同じような心理現象だから割愛させてもらうな
優珠:……ここまでは、どちらかと言うと、この虫に対して印象は良いのよね
倉本:……っ!
中条:虫だけどな
冬美:中条さん違います。岡本先輩からの窓は一切開いてない。が正しい結論です
彩風:(……どうしてこれで清くんはアタシに振り向いてくれないの?!)

穂高:その後、中学期に入ってから、岡本さんの会長への印象と心象の両方で極端に落ちる
   のよね
倉本:……
実祝:違う。落ちたのは夏休み終盤の事件から
蒼依:後から聞いたけど、いくら何でも祝ちゃんにそれはないなって思ったよ
愛美:実際あの時から、会長に対する印象も変わったし
朱寿:そうなんだよ。実は応援コメントで読者様が書いてくれてたんだけど、つまり秘密の窓
   を開けるのが必ずしも解放の窓を大きくする、意志疎通に繋がるとは限らないんだよ
直実:厳密に言うと、その心象には盲目の窓が絡んで来るんだけど、今から説明するな
優珠:お願いします
中条:……盲目の窓――男の汚らわしい欲望ですね
実祝:確かに公園での会長は酷かった
蒼依:なのに愛ちゃんの自覚が薄いから、私が! 愛ちゃんの一番の親友としてしっかり目を
   光らせてるの
朱寿:?!?!

穂高:それじゃ岡本さん。中学期に入ってからの倉本君に対する印象を教えてもらっても
   良い?
愛美:……本当に思ったままを言っても良いんですか? 劇中では結構気を遣っているん
   ですけれど
蒼依:良いに決まってるよ。そもそも会長の言動を目にした人は、現状の愛ちゃんでは甘すぎ
   るって思ってる人が全員だよ?
実祝:んっ! 全くもってその通り
冬美:それに関しては、ワタシも擁護のしようがありません
咲夜:あたしも……正直辛いかな
愛美:ありがとう。それじゃ遠慮なく。
   とにかく酷い言葉ばっかりだし出来れば喋りたくはないかな? それに蒼ちゃんや友達
   にも酷い事言って、電話越しにも聞こえるくらいの大きな声での暴言自分は協力して
   もらってるのに、後輩の子にも酷い事ばっかり言って。私の理想とする男の人とは全く
   違うって分かったかな。だからいくら言い過ぎたって謝られたって、言われた方は残る
   し受け入れられないって言うのが、本音だよ
九重:ちょっと何が起こったのかって言うくらい、印象が違うんだけど
直実:でもこれで一番初めにそこの後輩が言ってた印象に近くなったと思うんだ
咲夜:確かに
佳奈:お兄さん。エライ嬉しそうですね
優希:駄目だと思うけど、どうしても倉本は一番警戒してただけにね
優珠:ふん! いくらハレンチ女でもこんな虫にまで気が行くわけないじゃない。こんな虫に
   まで目が行く女に、お兄ちゃんを預ける気はないわよ
中条:それでこそ愛先輩です。男は駄目だって言うのをしっかり理解して下さったんですね
彩風:もうここまで振り切ってる中条さんを見てると、悩んでるのがバカらしくなって来た
倉本:……
慶久:……何か分かんねえけど、ねーちゃんは周りを大事にしないと、相手にすらしねーから
   な。今回はご愁傷様とだけ言っとくぜ。それにねーちゃんよりもイイ女なんてそれこそ
   たくさんいるだろ。むしろねーちゃんのどこがそんなに良いのか、俺にはわかんねー  
朱寿:……慶久くん? 今の言葉全部きき

からね。愛さんに慶久くんの秘密を
   教えるんだよ
慶久:?! すみませんでした。 ねーちゃんは誰からも好かれるくらい良い女性なので、
   この競争率の中で今回は縁が無かったと思って諦めてくれ
咲夜:すごい変わり身の術
実祝:ん。まるで咲夜並み
蒼依:……慶久君。その秘密。蒼依にも教えてくれない? あんなお姉さんに振り回されるの
   嫌じゃない? 私から愛ちゃんに上手く言ってあげるよ?
朱寿:(ふふん! おいそれと言える秘密じゃないんだよ)
慶久:蒼依さんのお気持ちは大変嬉しいのですが、これは俺がお墓まで持っていきたい秘密
   なんです
愛美:ちょっと慶! アンタ一体何やらかしたのよ! お姉ちゃんも謝りに行ったげるから
   早く言いなって!
慶久:ちょっ?! ばっ! 何でねーちゃんがしゃしゃり出てくんだよ! そっちで講義の
   続きを聞いとけよ!
朱寿:……慶久君?
慶久:?!?! お姉ちゃんは、せっかく講義をして頂いてるので、そちらでお聞きになった
   らいかがでしょうか
実祝:……哀れ。愛美の弟
倉本:いっそこれはこれで……はっ!
中条:会長の真っ黒は今更なので何も言いませんが、最低ですね
彩風:清くん……

直実:それじゃ次の解説行くな。今回は秘密の窓に続き、実は盲目の窓が鍵になってるんだ。
   それじゃ一つ目のポイント。
朱寿:蒼依さんに酷い事ばっかり言った 友達にも酷い事言ってる 後輩にまで声を荒げた
   これで一つかな?
優珠:確かにそれで一括りで良いけど……これは羅列するだけで酷いわね。愛美先輩の周り
   全部じゃない。
愛美:そうだよ。だから正直苦手になったの。こんな人が私だけを都合よく大切にしてくれる
   なんて思えないし、笑顔が大好きなのに、友達の笑顔を消してしまうなんて酷いとしか
   言えないよ
中条:蒼先輩にまでって……クソ会長だったらお二人の身に起こった出来事も知ってるんじゃ
   ないんですか?
倉本:……それについても返す言葉もない……ただあの時は俺もカッとなってたんだ
冬美:カッとなって声を荒げる……話になりませんね
慶久:……

優珠:この三つの内容だけど、一つにまとめたのは、いずれも虫が愛美先輩に伝えたい気持ち
   がある時に、この言葉遣いが出たってゆう秘密の窓ね。それに細かく分類するとしたら
   誰であろうと周りはみんな同じ扱いをするってゆう事かしら
穂高:概ねそれで間違ってないわよ。今回も倉本君から岡本さんへの気持ちの伝達、気持ちの
   伝え方。この二つに於いて秘密の窓を開けた。これが秘密の窓になり得るのは、普段
   クラスで話す倉本君や、今まで岡本さんに接した態度とは一線を画してる。これが根拠よ
咲夜:でも普通女子に声を荒げたら逃げるとか、避けるとか思いませんか?
実祝:違う。会長はそんな事どうでも良い。ただ自分の気持ちを愛美に押し付けたかっただけ
   それは咲夜も分かってるはず
直実:惜しいけどそうじゃないんだ。これはもう、一番初めのポイントから噛み合ってない
   から、みんなが理解出来なくても仕方が無いけど――朱寿なら分かるよな?
朱寿:もちろんなんだよ。一番初めから愛さんはこの会長には一切の窓を開けてなかった。
   なのにそれに気づかず、自分の窓だけを開け続けた結果なんだよ
穂高:もう少しかみ砕いて言うと、好きな人だからこそ安心したいからこそ、地を出そうと
   するし、少しでも自分を分かってもらおうとする。そうすることによって好きな人、
   親しい人相手に安心感と肩ひじ張らない楽な自分を作ろうとしたのよ
優珠:でも愛美先輩が窓を開けてないのに、それってどうゆう状態な訳?
蒼依:……独りよがりなだけだよ。自分ばっかり愛ちゃんに何でもかんでも気持ちを押し
   付けて。愛ちゃんだって色んな怖い想いをして、気持ちの整理もしたいのにそれも
   考えてくれなくて
愛美:蒼ちゃん……
優希:でもその件に関しては、その分僕がしっかりと愛美さんの心を包むつもりだから
愛美:優希君っ!
直実:これが開放の窓の不一致だな。以前応援コメントで書いてもらった、解放の窓の拡大・
   秘密の開示が必ずしも親密さに繋がる訳じゃない理由の一つ。もう一つは窓の形の
   不一致と材質の違い。があるけど、今回は長くなりすぎるから除外するな。
冬美:つまり、岡本さんは会長を全く受け入れてないのに、会長が勝手にたくさんの窓を
   開けて、岡本さんの秘密の窓を叩き続けたって事でしょうか
穂高:それでも間違いじゃないけど、岡本さんに秘密の窓を開けてもらえなかったがために、
   岡本さんの大切な部分、好意と嫌悪の根拠が分からなくて、踏み荒らしたって言うのも
   大きな要因よね
彩風:そっか! 興味もないし好きでもないから敢えて何も言わなかった。
   でもそれに気づかなかった清くんは一人盛り上がって愛先輩に迫った。
   その結果愛先輩の大切なものが何か分からないまま踏み荒らしてしまった
佳奈:そう言えばウチもそう言う場面になった時、流されそうになったけどあれも男子側が
   勝手に場を盛り上げてたからやねんな
優珠:ちょっと佳奈?!
佳奈:心配せんでも、その男子が他の女子と付き合ってんのは知っとったさかい、もちろん
   お断りの一択やったけどな
中条:付き合ってる女がいるのに、更に告白……ふざけるにもほどがあるな
咲夜:でもカッコいい男子ってそんなにいないし、女子が集まるのもしょうがなくない?
九重:そうね。クラスの男子もほとんどが一部の女子に人気が集まってるし
穂高:ひょっとして男性経験の豊富な女子はもう経験してるかもだけど、男子の気持ちに
   置いてきぼりとか、男子から迫れてびっくりしたとかあるんじゃない? そう言うのも
   この窓の開示の大きさの不一致で説明出来る部分もあるのよ
男性:(……いかに女子の窓を開けさせるか……ではなくて、いかに開いてる窓の
   大きさ、数を把握するか……か)
実祝:また男子が何か考えてる
蒼依:愛ちゃんは私と祝ちゃんの間ね
朱寿:(……なんか納得いかないんだよ)

直実:それじゃ最後のポイント、これだけは盲目の窓なんだけど、多分気付いてないだろう
   から、俺が説明するな
優珠:お願いします
朱寿:(ナオくんはわたしの彼氏さんなのに)
直実:さっきも会長自身が“カッとなって”と言ってたけど、後から言い過ぎたって、謝ったん
   だよな?
愛美:あ! はい。その翌日にメッセージで入ってました。もちろんそんなので許せなかった
   ので、蒼ちゃんにも知らせずに返事もしないで放っておきましたけど
直実:その時のメッセージを再掲しても良いかな?
愛美:どうせ会長のですし良いですよ
直実:それじゃ失礼するな
倉本:……
――――――――――――(176話 Aパート 冒頭)―――――――――――
宛元:倉本君
題名:昨日の電話
本文:は忘れて欲しい。この週末は色んな出来事や話が多すぎて気が立ってて申し訳なかった
   ついでに岡本さんの友達にも謝っといて欲しい。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

中条:この誠意のないメッセージは何なんですか? 女をバカにしてるんですか?
実祝:これは酷い。蒼依に見せなかった愛美の判断は正しい
咲夜:愛美さんの友達をついで……これじゃ愛美さんがますます怒るだけだよ
蒼依:……どんどん会長と喋る理由が無くなるね
冬美:……コメントのしようがありません

直実:みんな色んな感想があると思うけど、ひとまずメッセージ内容については流してくれ
穂高:……そう言う事ね
彩風:え? これで何か分かるんですか?
朱寿:今から説明するんだよ。このメッセージ、先の会長の言葉を付け足して欲しいんだけど
   この文面と先の会長の言い訳からして、『“つい”カッとなって言葉にしてしまった』
   んだと思うんだよ。
中条:いやだから駄目なんですよね?
優珠:……ああ。そうゆう……つまり、これは虫自身も意図してゆった言葉ではない。つまり
   自分の無意識でゆった言葉ってゆいたいのね
朱寿:そうなんだ――
直実:――さすが優珠ちゃん! だからこそこれは意図した自分の行動でもないし、意図して
   ない分“思ってもいなかった”いわゆる売り言葉に買い言葉的なニアンスなんだ
朱寿:(し! 信じられないんだよ! どうしてこんな憎い人にナオくんの反応が良いん
   だよ!)
穂高:あと少しだけ噛み砕くわね。意図してない、思ってもない、自分の意識下でもなく、
   自分が意図して開けた窓じゃない
愛美:あ! これが相手から指摘されて初めて気づく“盲目の窓”ですか?
直実:そう言う事。本来盲目の窓は他人からの指摘なんだけど、自分で気付けてない窓を
   こういう形で開示するのも一つの盲目の窓なんだ
咲夜:えっと?
実祝:ワザとじゃないから、仕方がない……訳では無いとしか分からない
九重:(なに? 何なの? あの印象の悪いたった一つのメッセージで、なんでこんな難し
   そうな話になるの?)
慶久:……俺。喋るの怖くなりそう
冬美:……えっと。ワタシもイマイチ理解出来ないんですが、冒頭のカンニングをさせて頂く
   なら、前日会長から岡本さんへの暴言と、再掲して頂いたメッセージが、盲目の窓って
   仰るんですよね?
優希:……僕もこの辺りの知識はあんまり持ってないんだけど、雪野さんの認識、答えは
   合ってるよ
朱寿:ただそれだけだと、せっかくの講義を活かせないだろうから、もう少し説明するんだよ
穂高:そうね。じゃあもう一度今度はしっかり説明するわね。まず盲目の窓の定義だけど――
   他人は知っていて(他人には見えていて)、自分は気づいていない(見えていない)自分
   ――こういう事なの
直実:その上で、先の会長のやり取りをもう一度細かく刻んで行くな。その際これもあった
   方が良いと思うから175話のBパートから少しだけ時間差にて別ページで更新させて
   もらった。
    これはその当時の会長と愛美ちゃん、蒼さんとの電話のやり取り、全文だ。
―――――――――――幕間講義 5 後編・会話文全文へ――――――――――――
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