第187話 入り乱れる感情と恋情 Bパート

文字数 8,242文字

 会長の顔を少しでも見たくなかった私は、先に二人に入ってもらおうと一歩引いた瞬間、
「遅かったんだな雪野……と、また岡本さんに隠れて元サヤに浮気か?」
「……愛先輩がいないからって、副会長にまた手を出して冬ちゃん最低!」
 役員室内から、挨拶も無しに飛んで来る二人からの遠慮も思いやりもない言葉の刃。
 その言葉に
「――っ!」
 優希君とつないだ手を離そうとした冬美さんのふくろはぎを、優希君への想いはその程度だったのかと軽く蹴りつける。
「ちょっと岡本先輩さん。無茶言わないで下さ――」
「私に隠れてとか、私がいないから、何だって? 私もちゃんといるんだけれど。私がいたら何か問題でも――」
「――岡本さん待ってた! さっきはあの先生に邪魔されたけど、俺も岡本さんを心配してたんだ! なのにどうして電話に出てくれなかったり、教室にいてくれなかったんだ――おい空木! お前前回に続いて何の真似だ! お前は雪野と乳繰り合ってろよ」
 冬美さんが何か言っていたような気もするけれど、顔を見せただけであんまりにもあんまりな言葉を重ねる二人に、後ろから私が姿を見せると、私めがけて駆け寄ってくる会長。
 びっくりした私の身体が男の人の恐怖に後ずさりしかけたその瞬間、優希君がその間に割って入ってくれる。
「倉本こそ、雪野さんと乳繰り合うとか何言ってんだ? それに愛美さんもびっくりしてるから、僕の彼女にそれ以上迫るな。それに彩風さん。雪野さんはそんな子じゃないし、僕にもその気はない――」
「――副会長も何を言ってるんですか! 冬ちゃんとキスして胸触ってそんな子じゃ無いって、愛美先輩の気持ち――」
 既に目を腫らしてしまっている彩風さんが、その瞳に映る全てが敵だと言わんばかりにみんなに辛辣な言葉を並べ立てる。
 現時点で恋情一色になってしまっている二人。今日はもう話し合いにならないと早々に諦める代わりに、徹底して話し合って彩風さんには大雷を落とそうと決めてしまう。
「――彩風さん。二人のすぐ後ろを私は歩いていたんだけれど。それで私の気持ちって何なの? それから会長も『……』何で私たちが来る前から彩風さんの目が赤いのかちゃんと説明して下さい」
 優希君が間に入ってくれたから、私は一つ深呼吸をして気持ちを落ち着けてから自分の言いたかった事を口にして、一旦自分の席へと座る。

 結局私の一言に二人共が答えないまま、優希君と冬美さんも席について手を離す。
「愛先輩。その顔、冬ちゃんの……それに、清くんへの呼び方……」
 確かに私の顔を見ていなかったのは、私のすぐ横に座る彩風さんだけだけれど、当日、二日目くらいに比べたら雲泥の差のはずなのだ。
「岡本さん。改めて聞きたいんだが、どうして電話にもメッセージにも出ても返事もくれなかったんだ。あの友達への暴言と言うか、行き過ぎた言葉は謝っただろ」
 しかも私の顔と冬美さんをまだ結び付けたままにしている彩風さん。
 中条さんが言っても、統括会メンバーの誰もが言っても、自分が好きだって言う会長が言っても自分と同じ考え方の人間の言葉しか聞く耳を持たない彩風さん。私はそろそろ非情とも言える一言を胸に覚悟を決める準備を始める。
「おい倉本! 暴言ってまさか愛美さんや愛美さんの友達にまで吐いたのか?!」
「前に言ったけれど、私が会長を何て呼ぼうが彩風さんには関係ありませんよね。それに私の顔について冬美『?!』さんになんで文句を言うんですか?」
 一方、私の質問に答えてくれる気のない会長に優希君が応対をしてくれる。
 私たちの間に挟まれて、気持ちがしんどくなったのか、隣に座る優希君の方へ椅子を寄せる。
「何で関係ない空木が横から口を挟んで来るんだよ。俺は岡本さんに聞いてんだろ」
「またそうやって冬ちゃん冬ちゃん。しかも呼び方まで。ひょっとして副会長に手を出された時のあの泣き顔って嘘泣きだった――『あっ!』――っ!」
 私の質問に答えてくれない会長が勝手言う中、まさかの彩風さんの言葉。誰かが声を上げるのと同時に私の足が、彩風さんの座っている椅子の足を蹴りつけると、何故か冬美さんがびっくりして、
「……愛……先……輩?」
 彩風さんが放心する。
「私は何回も言った。冬美さんは悪くないって。それに私は優希君が“大好き”だって何回も言ったし、大きく取り乱してみんなに迷惑をかけた事もある。それを嘘だって? 何で決めつけんの?」
 だけれど、今日は大雷を落とすって決めているのだから、今日と言う今日は私に我慢する気はない。
「岡本さんの本気の気持ちの上であぐらをかいて、岡本さんが休んでる間、昼休みの度に雪野と乳繰り合ってたんだろうが! それならもういっそのこと、岡本さんを手放して雪野一本にしろよ! 俺だったら絶対浮気なんてしないし、誤解されるような行動もしない。それに雪野の気持ちも空木には届いて――」
「――会長。もう辞めましょう『な?! 何を言って――』――会長の岡本さん『っ!』へのその発言は、さすがにワタシでも許容できません」
「雪野! 早まるな! 考え直せ! まだ諦めなくても――」
「――それにワタシは本気で空木先輩をお慕いしています『冬ちゃんいい加減にしてっ! それ以上喋るならこの部屋から出て行ってっ!』――っ。
 だから誰かの力を借りるのではなく、ワタシ自身の力と想いで空木先輩に振り向いて欲しいんです。空木先輩と交際したいんです!『冬ちゃんっ!』――だから会長と協力関係にあった話も、何もかも岡本さんや空木先輩、それに中条さんには全て話しました」
 私たちが知らないと思っていたであろう二人の協力関係。彩風さんの途中度重なる罵声に怯むことなく、途切れることなく本音と自分の気持ちを言い切った冬美さん。
 当然彩風さんが何度か私に言おうとしていたのもこの話のはずで。だからこそなのか、冬美さんに対して視線だけで射殺せんとする程のキツイ視線を向け続ける。
 一方会長は今更になっても

協力関係を履行しようとして、それでも冬美さんからその関係を断ち切ろうと会長の制止にも止まる事なく最後まで口にした冬美さん。
 本当にこの頭の固いまっすぐで真面目な可愛い後輩はよく一人で頑張ったと思う。だからここから先は先輩であり、友達でもある私の領域だと私は自分で気合を入れるために、自分の頬を叩く。

「おい雪野! 何で今更言ってしまうんだ! 何のために俺たちは協力して来たんだ!!」
「今更何なの? こんなにもアタシ達を滅茶苦茶にして、愛先輩を泣かせて。挙げ句もう一回副会長に告白する? ふざけるのも大概にして! どこまでアタシ達を引っ掻き回せば済むの? もう出て行っ――っ!」
 私がそう決意した瞬間、二人共が冬美さんを責め始める。
「おい倉本! お前後輩の女子にここまで言わせて恥ずかしくないのか! しかも最後まで隠そうとして、格好悪いって思わないのか?」
「空木先輩……」
 私も、致命的な一言を口にした彩風さんに大概腹立ったけれど、優希君もまた珍しく本気で腹を立てている気がする。
「はぁ? おい空木! 毎日違う女連れて歩いてるからって何調子乗ってんだ? お前こそ毎回違う女を連れて歩いて恥ずかしくないのか? それとも何か? 俺は女にモテますアピールか? そんなんで岡本さんを幸せに出来んのか!」
 ただそれ以上に、会長の言葉が悪い。その上、私の彼氏をそこまで悪しざまに言われるのも、そのほとんどが私の友達や私からのお願いだけに気分が悪い。
「倉本。お前本当に周りが見えてないんだな。今、何をしないといけなくて僕が誰と行動してると思ってるんだ。それから倉本。自分で好きだって言う愛美さんの質問には答えないのか?」
 そこだけは彩風さんの気持ちを理解出来るけれど、理解出来るのはその一点だけだ。
 会長の事は同じ男同士、優希君にお任せしようとした矢先、
「おい空木! お前っ! この俺に喧嘩売ってんのか?! 喧嘩売ってんならまとめて買うから表出ろよ!」
「ちょっと会長! もう辞めて下さい! それにワタシの想い人に暴力も辞めて下さい!」
 どう考えても暴力沙汰に発展しそうな空気になった所を、冬美さんが慌てて止めるも、
「辞めろって、雪野が余計な事さえ言わなければこんな話にならなかったんだろ! 雪野こそこの責任どう取るつもりなんだ!」
「だから前から言ってたじゃないですか! ワタシを解任して下さいって! そしたら孤立するワタシは誰かに本当の話をする相手もいなかったんです!」
 そこに食って掛かる会長。本当にそこまでして隠して、女の子に言わせて何になると言うのか。取り繕うにしてもどうやって私に良い印象が与えられると思うのか。
「だからそれは出来ないって言っただろ! 仮にもトップに立つ人間が、下の者を信任してくれた人の気持ちを蔑ろに出来るわけないだろ」
「だったらワタシにどうしろって言うんですか!」
 一度は尊敬に値する言葉だと思って聞いていた、信任と言う形での全校生徒の得票であり、意志。その考え方をこの場面で聞いても何の感動も無ければ尊敬の念も抱けない。
「――だったら。空木に抱かれて既成事実を作――」
「――分かった倉本! 今回は徹底的に外で話し合うぞ! それから雪野さん。今の倉本の会話は一切気にしなくても良いから。その辺りは愛美さんがしっかりと話してくれるはずだから、僕の事と合わせて倉本の言葉になんて耳を傾けなくても良いから」
 しかも、ただ責任を押し付けるだけでなく、色々な経験を積んだ今の私なら、会長の言った言葉の意味くらいは分かる。
 女の子にとっては本当に傷つく言葉を平気で吐く会長。こんなの優希君に言われるまでもなく私が何とでもフォローするに決まっている。
「おい空木! 言うに事欠いて俺の言葉は無視しても良いって言ったのか?!」
「良いから外に出るぞ! 倉本っ!」
 しかもその場で優希君に掴みかかろうとする会長。そんな場面を見るだけでどうしても私の身体に力が入ってしまうのを感じ取ってくれたのか、有無を言わせず先に外に出て行く優希君。その優希君が冬美さんにまでしっかりと気遣ってくれると言うなら、
「優希君っ! しっかりね」
 優希君の彼女として激励するだけだ。
「ちょっと岡本さん! お二人がワタシを考えて動いてくれてるの分かりますが、いくらなんでも喧嘩、暴力は駄目ですって!」
 私に一声かけて二人を追いかけようと入口へ駆け寄る冬美さんに、
「冬美さん『……』冬美さんは、自分の好きな人を信じられないの? それとも好きな人が負けるのを想像しているの?」
 鋭く一声かける。
 男の人同士の争いに女の私たちが入って行ったって、どう転んでも太刀打ち出来ない以上、足手まといになるだけなんだから、ここは大人しく待っている方が良いに決まっている。
「想像とかじゃなくて暴力は駄目じゃないですか! 特に今この時期に暴力沙汰、怪我をしたら良くないのは岡本さんなら分かるんじゃないんですか?」
 それでも暴力を

した上で、役員室を出て行こうとする冬美さん。
 どうして当たり前に行動するこの姿勢を見て、冬美さんが私や蒼ちゃんに怪我させたって発想になるのか、とことんまで問い詰めてやる。
「最もらしく言っているけれど、結局は優希君が喧嘩しないって信じられないって事だね『っ』後で私から優希君に伝えておくからそれでも止めに行くって言うんならどうぞ。そんな相手に負ける訳無いんだから好きにして良いよ」
 だけれど、せっかく優希君が作ってくれた、私が大雷を落とすための状況。室内に女三人だけの空間。それこそ優希君の気遣いを無駄には出来ないからと、無理矢理にでも冬美さんの動きを止めさせてもらう。
「何なんですか?! どうしてワタシの行動の邪魔をするんです?」
 的確に優希君を出すからか、素直に……いや、悔しそうな表情をありありと浮かべて部屋から出るのを諦める冬美さん。
 その為に毎回アレコレ試していたんだから、今までの分も含めてしっかりと私の話を聞いてもらうんだから。

 ただこれで、ようやく女三人だけでじっくりと話が出来そうだ。
「冬ちゃん。さっきから言おうと思ってたんだけど、愛先輩に馴れ馴れしすぎるんじゃないの?」
 かと思ったら徹底して冬美さん狙いをする彩風さん。
「彩風さん。何でも良いから早く私の質問に答えて」
 だからその矢印を無視して私の方へと向ける。
「だっておかしいじゃないですか! どうして自分の彼氏に手を出した女の子と仲良く馴れ馴れしく名前で呼び合えるんですか?」
 なのにどうしても冬美さんを的にしないと気が済まない彩風さん。何が彩風さんをここまで頑なにさせたのは分からないけれど、以前とは全く違う空気を感じる。
「彩風さん。私の

に人聞きの悪い事言うの辞めてくれる? それに彩風さんにその件で電話した時にも説明したはずだけれど、私にも落ち度はあった。全てが優希君の責任でも無いって言ったはずだよね。私の話も全く聞く気は無くなったの?」
「結局そうやってみんなして冬ちゃんの味方して、挙句の果てに仲良さげに呼び合って赦すんですね。アタシと清くんの仲をボロボロに壊して、愛先輩と副会長の仲も散々引っ掻き回して、統括会でも一人自分勝手な事ばっかり言って行動して。おまけにクラスでも揉め事を起こしてたじゃない!」
 本当に、あの私を慕ってくれる可愛い後輩が言ってくれていた通り、全てを冬美さんの責任にしている。と言うか、これが彩風さんから見えている現実・映像なのかもしれない。この《視点の違い》そのものが、今の二人の言動なのかもしれない。
「……だったら敢えて岡本先輩の前で聞きますけど、霧ちゃんはワタシにどうして欲しいんですか?」
 そりゃ同じチームの中で、こんな事を言い続けられたら私だって自信は無くなるし、冬美さんのように頑なに逃げたくなってしまうのも理解出来てしまう。
「だったら自分から教頭先生に言ったんだから、今すぐ統括会を降りて」
「分かりました。岡本さん。これが今のワタシへの皆さんの気持ち、感想なんです。これだったらワタシが統括会を降りたって岡本さんも――っ?!」
 私が冬美さんを理解している間に、全く可愛くない後輩と私の友達である冬美さんが好き勝手に話を進めようとするから目の前にあった長机の脚を蹴って二人共の好き勝手な会話を止めさせてもらう。
「冬美さん。本当に何回同じ事言わせんの? 私と優希君、それに理沙さんも冬美さんは間違っていない、辞める必要も無いって言ってくれていたんじゃないの? なのに何が“これが皆さんの気持ち”なの? 後これだけ好き勝手言われて、決めつけられてしんどいのは分かるけれど逃げんなって言ったよね。会長ですらも辞めてそれで終わりじゃ無いって言ったよね。
 冬美さんは友達である私や好きな人である優希君の意見か、この私たちの話を全く聞かない、可愛くない後輩『~~っっ』のどっちの話を聞くの?」
 視線は真っ赤にした目に更に涙を浮かべながら、私に何と言って良いのか分からないキツイ視線を向けてくる彩風さんに置いたまま、言葉は冬美さんにかける。
 けれど中々口を開かない、冬美さんの返事が聞こえてこない役員室内。
「分かった。冬美さんがその程度の想いだって言うなら、私もライバルが減って安心出来るからこの後優希君に――」
「――岡本さんまでワタシの気持ちを決めないで下さい! ワタシは空木先輩の話を聞かないわけじゃありません。ただワタシの回りにも応援してくれる人がいるなら、ワタシが間違ってないって言ってくれる人がいるなら、誰に何を言われるとか聞くとかじゃなくて辞めたくないだけです。それにどうせ二枚舌の岡本さんの事ですから、また空木先輩を盾にして、ワタシに諦めろって言って来るんですよね」
 何が話を聞かない訳じゃ無い。なんだか。今自分の口から統括会を降りるって言ったばかりじゃないのか。
 私が言ったからその言葉の先と答えを変えただけって丸分かりだっての。ただ、恥も外聞もなくなるくらい優希君を想っているのだけは評価してあげる。ただそれとは別に、“おっ”とは思う。
 冬美さんのその言い方なら、冬美さんの中で私との信頼「関係」が出来始めているんじゃないのかって思えてしまうんだけれど。
 ただ後半部分はさっきの優希君の前での発言と共にいくらなんでも頂けない。私はライバルが減った安心感と喜びを優希君と共有したいだけなのに、それを盾に取るとか二枚舌とか。優珠希ちゃんもそうだけれどどうして私を素直に慕えないのか。
「そうだよ。冬美さんみたいに誰かさんとは違って、人のせいにせず黙々と一人で努力して、人間的にも女の子的にも魅力のある私よりもたとえ一つでも若い女子に諦めてもらえれば安心出来るに決まっているじゃない」
 だったら私だって聖人君子なんかじゃない。目の前にいる彩風さんには当て付けさせてもらって、冬美さんには私の“嫉妬”を受けてもらう事にする。
「魅力ある若い女子ってひょっとしてワタシの事仰ってます? 岡本さんが空木先輩の彼女なのに、それってどう考えても嫌味じゃないですか。そんな岡本さんの二枚舌には、この前みたいに暴れられても乗りませんか――」
「――冬ちゃん。何勘違いしてんの? 清くんと手を組んでみんなの仲を引き裂いて身体を使って人の男をモノにしようとして、皆から嫌われて『……っ……』そんなはしたない冬ちゃんが魅力あるとか、少しは自分の言動を顧みてから――っ!」
 私は確かに冬美さんを主語にした。その上で冬美さんは魅力ある女の子だって言い切った。
 それは以前より優希君が、頭の固さと押しの強さ以外の欠点を聞かない所からしても間違いないのだ。
「岡本さん! いくら腹立っても手を出したら駄目ですってば!」
 なのに自分の見たい部分だけを切り取って、あたかもそれが全てであるような言い方をする彩風さん。だったら足くらいは出ても仕方がないはずなのだ。
 しかもよりにもよって私の友達に向かって“身体を使って”と来た。もちろん戸塚事件を通してそう言う女子がいるのも理解しているし、それがその人のやり方だって言うなら私は、とやかく言わない。
「冬美さん。私、手は出していないよ。なのに何で私に注意するの?」
 だけれど冬美さんがコツコツ努力しているのは知っているし、理沙さんだってその話を聞いて理解も納得もしたはずなのだ。
 それに聞きようによっては、優希君の方こそ私以外の女の子の身体で篭絡されたと聞こえてもおかしくない。
「何を屁理屈言ってるんですか。そんな二枚舌なんて必要ないんです。相手に暴力を振るうのは駄目だって所に反応して下さいっ」
 でも実際の優希君は、妹さんも合わせてそう言う無節操なのは嫌だって。私以外の女の子にはその下心すらも無いんだって今朝も私の気持ちを置き去りにしてまで言ってくれている。
「これは暴力じゃなくてれっきとした話し合いだって」
 つまり、冬美さんだけじゃなくて私の彼氏である優希君まで悪く言っているんじゃないのか。この私の隣に座る全く可愛くない後輩は。
「……空木先輩は、この岡本さんの性格と言うか喧嘩っ早いのをご存じなんですか?」
「なんで……どうして……そんなに冬ちゃんが――っ」
 その一切の全てを見ようとも知ろうともしないで冬美さんが体を使って、優希君がそれに溺れた。と言うのは、あまりにも事実と違い過ぎて
「――彩風さん。

?」
 気付いた時には、今度は、彩風さんの頬を叩いた後だった。

――――――――――――――――――次回予告――――――――――――――――
         最悪な雰囲気の中で始まった今週の統括会
      男二人が出て行った後、女三人での雷を落とす主人公

      それでも中々分からない頭の固い後輩と思い込みの激しい後輩
           その中でも必死で説得を続ける主人公

                  第二陣
        本当のまさかの形で、ある提案をする主人公の彼氏
       それがまた主人公の大切にする人と同じような提案で……

     「じゃあ僕たちお互い同じ気持ちで同じ事をするって事だね」

              第188話 孤立と疎外感 6

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