第184話 男女の本能 Bパート

文字数 8,746文字

「それでさっきの話の続きなんだけど……」
 さっきの話の続きって……冬美さん、中条さん、彩風さんの話は今終わったばかりだと思うんだけれど……私の中で合点がいってなかったのを感じ取った優希君が、
「愛美さんのが見えてたり、見えそうだったら僕が隠したり直したり――」
「――ゆ・う・き・く・ん・? さっき恥ずかしいからそれは駄目だって言ったよ?」
 確かに先にしないといけない話は済ませたけれど、恥ずかしいから嫌だって言ったのに。どうして“そう言う事”に対して聞き分けがないのか。女にだって沽券って言うのはあるのに。
「でも他の男、特に倉本や島崎に愛美さんのを見られるなんて、僕的には絶対納得出来ない」
 優希君は不満そうに鼻息荒く言ってくれるけれど、私だって“隙”を見せるのは本意じゃないし、優希君にそう言う嫌な思いをして欲しくないから、恥を忍んで朱先輩に色々教えてもらっているのであって。
「優希君。私だって女の子で恥ずかしいんだからこの話はもうお終いで良い?」
 それをこの年になって、しかも彼氏に毎回指摘されるとか、一体どんな仕打ちなのか。そもそもよく考えなくても同性に教えてもらうとか、指摘してもらうとか色々おかしいんじゃないのか。
 あの時は私も気持ち的に滅入っていて、しかも優希君に少しでも嫌な思いをして欲しくないって思ってのお願いだったから、朱先輩も快く嬉しそうに引き受けてくれたんだろうと思うけれど、普通友達なんかに頼めるような話じゃない気がする。
「だったら愛美さんが早く見せない様に……いや。やっぱり見られるのは納得出来ない!」
 しかもさっきからこんなアホな話で何を真剣に考えているのか。いや、もちろん私だって“隙”を根絶するために絶賛工夫中だけれど、
「じゃあ学校の制服は仕方がないとして、それ以外はズボンにするから。それなら大丈夫なんだよね」
 朱先輩からの話でも、常識で考えてもやっぱりズボンの方が“隙”も“粗相”も少ない事には変わりないのだけれど、
「……」
 何か絶句するほどに放心している優希君。
 そう言えば優希君は、私のスカート姿を喜んでくれていたっけ。そして遠出のデートの時にはその下心を隠してまで私のスカート姿に期待してくれていて……そして私と制服デートがしたいと言ってくれて……何か嫌な予感がし始めて来たんだけれど。
「分かった。愛美さんには愛美さんらしくいて欲しいから、この件はもうこれで終わりにする」
 ……もう少しだけよく考えてみる。優希君は他の男の人に私の“隙”を見られるのは絶対嫌だって言ってくれている。そして“粗相”しそうなら優希君が隠したり直したりするって、一聞私を考えてくれているようにも聞こえるけれど、私がズボンだと放心するほどショックを受けた優希君。
 ……気が付いてしまえば、私の顔から火が出そうな程熱を持つ。
 それに普通に考えたら、自分では気が付かないからこその“隙”なんだから、優希君の前だけ“隙”や“粗相”がないなんて都合の良い事がある訳が無い。その証拠にメガネの前ですぐに私の“粗相”に気付いて、慣れた手つきで“粗相”を直してしまった優希君。
 特に最近はすごく嬉しい事に、二人でいる時間も増えて来ているから“粗相”している場面も多い気がする。
「……優希君。終わらせる前に二つだけ確認しても良い?」
 自分からこんな事聞くなんて馬鹿げているとしか思えないけれど、他の誰でもない優希君の下心だけはきっちりと把握しておかないと、どう考えても今後の事もあるに決まっている。
「何でも答えるけど、その気になってくれたって事?」
 なのにこっちの気も知らないで“こう言う事”だけは単純で分かり易くなる優希君。
「私がスカートじゃなかったら残念なの?」
 まずは軽め――
「もちろん! 前にも言ったけど愛美さんの私服でのスカート姿は誰にも見せたくないくらいには可愛いから」
 ――しかも得意気だし。
「でも、他の男の人に見られるのも嫌だし、私には私らしく伸び伸びと器の広い男の人だって思って欲しいし、見せたいんだよね?」
 まあ私的には窮屈さは全く感じてはいないんだけれど。
「……まあ確かにそうなんだけどさ」
 だけれど、自分が言ってしまった手前、否定も出来ずに両肩を落とす優希君。
「……つまり。私のスカート姿は見たいけれど、他の男の人にはスカート姿を見せたくないって事?」
「そう! そう言う事!」
 ワザと言いたい言葉を半分で区切って、優希君が求めているであろう答えを口にすると、ものすごい勢いで首を縦に振って来る。
 優希君の勢いある返事を確認してから、残りの半分
「――……スカートの中も含めて」
 優希君の男の人としての下心を一言付け足してやる。
「あ?! いや、僕だけが愛美さんのを見たいとか、そう言うんじゃなくてっ!」
 そして語るに落ちた優希君。本当にエッチなんだから。
「……つまり優希君は私に隠れて私の“隙”とか“粗相”を目にして楽しんでたんだ……ふぅん」
 だから私は半眼を向けて、優希君に自白を迫る。
「いや違う! それは言いがかりだって――」
 なのに往生際の悪い優希君。
「――見た事ない、見ていないって言うのに、どうやって私に“隙”が出来ている事を把握して、隠したり直したり出来るの? 見ないと、見えないと出来ない対処だよね?」
 だからこっちは全部お見通しだって教えておいてあげる。
「……」
 やっと言い訳は出来ないと観念してくれたのか、両手で顔を覆う優希君。
「……優希君のエッチ。今日から反省するまではスカートでのデートと口付けはナシね」
「え?! こっちは善意で言ってるのにそこまで怒らなくても」
 私の塩対応に再びへそを曲げる優希君。
「違うよ優希君。私は優希君の考えている事、想っている事を教えて欲しかったのに、ごまかしたり嘘つこうとしたからとっても寂しいだけだよ。今日のやり取りは、取り繕う事が大嫌いな優珠希ちゃんに報告かな。あーあ。言わなければ気付かなかったのに」
 ――決して見て楽しんだのを怒っているわけじゃなくてね。
 ただ優希君の“秘密の窓”を自分で開けて欲しかったなって。
「~~っ!」
 いつも通り二人だけの恋人同士の会話なんだから優珠希ちゃんに言う訳無いのに、中々学習しない優希君。言い換えれば二人の間では何でも話すほどの仲の良さな訳で。
「それじゃあ明日は大丈夫そうだけれど、明日はお互い頑張ろうね」
 優珠希ちゃんに少しだけ嫉妬の炎を燃やした私は、雨の中その炎を消すために、傘をささずに先に一人帰宅する。


 私が気分良く家に帰ったら、
「……その表情だと学校の方は問題無さそうね」
 お母さんが嬉しそうに出迎えてくれる。
「ねーちゃん殴った奴は大丈夫なのか?」
 珍しい事に慶も一緒に。
「暴力振るった人はみんな停学になったから、今の教室にはいないよ。程度の差は関係なくね」
 だから暴力は駄目だって、お母さんがいるから遠回しに伝える。
「……なら良いけど、なんかあったら俺にも言えよ」
 かと思ったら何を思ったのか、今まで一度も聞いた事が無いような鳥肌が立ちそうな気遣いを見せる慶。
「はいはい。着替えて来るからそこ退いて」
 だから、また何か下心を持っているのだろうと適当にあしらおうとそのまま自室に向かおうと――
「んだよ。おかんの前に俺に言ってくれれば、おかんがワザワザ帰って来なくて済むっつってんのに」
 ――慶のボヤキを耳にして、あしらって良かったと呆れながら自室へと戻る。

 その後、先に慶をお風呂に入れるって事で後で電話する事も考えて、その間に少しでもと思って机に向かう事にする。

宛元:会長
題名:明日の統括会
本文:噂で耳にしたけど昨日から岡本さんが登校してるって聞いた。だから今日の
   昼休みに会いに行ったけど、また空木とメシだったのか? とにかく明日の
   統括会は俺が岡本さんの教室まで迎えに行くから待ってて欲しい。

 その途中でとんでもないメッセージが届くけれど、この文面だと返信しないといけないんじゃないのか。返信しなかったら確実に教室で鉢合わせになるんじゃないのか。その直後に役員室で顔を合わせるんだから、逃げる訳にも居留守を使う訳にも行かない。
 とにかく少しでも先延ばしにして――あ。こんな事で電話しても良いのかなと思ったけれど、私の相談なら乗ってくれるって言ってもらっているし、昨日から降り続いた雨も今日までだって予報だから、久しぶりに土曜日の参加はしたい。
『朱先輩。今お時間良いですか?』
『もちろんなんだよ』
 いつも思うけれど、どうして朱先輩は1コールで電話を取ることが出来るのか。元々は朱先輩は電話が好きじゃなかったはずなのに。
『ありがとうございます。少し気が早いんですが、明後日の土曜日は両方とも参加させてもらおうかと思って、連絡させて頂きました』
『……愛さん。わたしに相談したい事があるなら遠慮しなくても良いんだよ』
 いや、何で全部バレているのか。やっぱり不思議で仕方がない。
『……あの。ですね。この前の続きなんですが、会長が彩風さんを好きじゃない、好きでもない女の子と一緒にいるのはしんどいって答えを出してしまったんです』
『前にも言ったけど、今までもちゃんと断って来たんだから、それは愛さんのせいでも何でもないんだよ。もしぽっと出の後輩が何か文句を言ってきたら、今までずぅっと愛さんのお話を聞いて来たわたしがちゃんと説明するんだよ』
 朱先輩が前にそう言ってくれたから、優希君と蒼ちゃんが私を守ってくれるから私は、私の思うまま行動出来ている。
 ただ今回は
『ありがとうございます。ただ困っているのは、会長の中で一つの答えが出てから毎日私に電話とメッセージが届くんです。そのメッセージにしても電話にしても蒼ちゃんから「っ」は出なくても良い、放っておいても良いって言ってくれたんですけれど、今さっきどうしても返事しないといけない内容のメッセージが届いたんですよ』
 そう言って会長には悪いけれど、メッセージの内容を朱先輩に伝えてしまう。
『……愛さんはしんどいかも知れないけど、一度会長さんからの告白を受けた上で。愛さんがしっかりお断りしないといけないんだよ』
 会長と二人きりなんて考えるだけでも生理的にしんどいし、前みたいに私の身体に対する感想なんて持たれるだけでも嫌だし……何より怖い。こんな気持ちなのに会長の告白を聞くとか考えたくもない。
『後輩の長年の想い人を私が断っても良いんですか? そうするくらいなら残り半年。何とか躱し続けた方が良くないですか?』
 言うは易く行うは難し。今の時点で困り切って朱先輩に相談までしているのに、この先半年間も躱し続けるなんてあまり現実的とは言えない事くらい自分でも分かる。
 ただいくら私は雷を落とすからと言っても、彩風さんが嫌いな訳でもどうなっても良いと思っているわけじゃない。
 たとえ想いが実らなかったとしても、初恋の人がフラれたり悪く言われるのも実際嫌がっていた彩風さん。その上、塩を塗るような行為を行うのはあまり気が進まない気持ちもある。
『違うんだよ愛さん。色んなタイプ、性格の人がいるから一概には言えないんだけど、男の人には女の人とは違って狩猟本能があるから、男の人は決めた女の子を捕まえるまで追いかけるものなんだよ。しかも愛さんみたいに逃げれば逃げる程、躱せば躱すほど追いかけたくなるし、本気になって捕まえたくなるものなんだよ』
 もちろん一歩間違えば人間社会だとストーカー扱いにもなったりするし、捕まえた後さらに別の女の子を追いかける男の子もいたりするんだけどね。と付け足す朱先輩。
 けれどこっちは困っているから、嫌だから波風立てない様に彩風さんの事も考えながら躱して逃げているのに、何が追いかけたくなる本気になる。なのか。だから怖いってどうして理解してくれないのか。
『逆に女の人には母性本能があるから、どうしてもそう言う男性に対して自分を守ろう、大切な人を守ろうと構えてしまうんだよ』
 え……それって母性本能って言うんだ。母性本能ってこう、赤ちゃんを可愛いと思うとか、あの拗ねた優希君を可愛く感じるとか。そう言うなんて言うか湧き上がる愛おしさみたいなのを母性本能って言うんじゃないのか。
『だけど、これも以前“脳とスイッチ”で話したけど、一回で良いからこっちから構えを解いて“あなたの事は好きではありません。私を諦めて他の人を当たって下さい”って、しっかりハッキリ断って会長自身のスイッチをこっちでしっかり切り替えて、狩猟本能に諦めてもらわないと駄目なんだよ。そしたら肉食動物と同じで、愛さんと言う獲物を諦めた会長さんが、別の獲物……この場合は女の子を探し始めるんだよ』
 ――たまにライオンさんなんかが数頭の馬さんに囲まれて翻弄されて、ライオンさんが諦める場面の人間版なんだよ。と補足説明を入れてくれる朱先輩。
 肉食とか獲物とか……びっくりするような単語が並んだけれど、言わんとしている事はちゃんと伝わる。
 それは以前朱先輩が言ってくれたどこかで聞いた事のあるセリフ。 ※105話
 あのやり取りをしないと納得しないって事なんだと理解する。
『その変わった先のターゲットが……ポッと出の後輩さんに行けば良いけど、寄って来る獲物、女の子に対しては特に何も思わない狩猟本能。ううん。今はそんな難しい話は良いから、愛さんが空木くんをドキドキハラハラだけじゃなくてたまには安心させてあげても良いっていうお話なんだよ』
 途中まで言って辞めてしまった朱先輩が、その先を変えてしまう。
『大嫌いな後輩を空木くんが断ってくれた時、愛さんはどんな気持ちになった?』
 そんなの嬉しかったし、安心も出来たし、カッコ良くてもっと好きになった――あ。
『例え的には反対だけど、そう言う“盲目の窓”もあるんだよ。と言うか母性本能で考えたらもう少し分かり易いと思うんだよ。だから愛さんは空木くんを第一に考えて行動したらそれだけで十分なんだよ』
 本当に朱先輩が私自身で考えつけるように、優しく丁寧に教えてくれる。
『だからそのメッセージにも一言。“お断り”だけ入れておけば良いんだよ。そして会長さんが近い内に愛さんに告白したいって言って来るから、空木くんとしっかりと話し合って会長さんの対処を決めてしまえば良いんだよ』
 しかもそっか。優希君に相談しても良いんだ。考えなくても分かる話だったのに。
『ありがとうございました。前もって優希君としっかり話し合ってどうするのかを決めておきます』
 朱先輩との電話相談で迷いのなくなった私は

宛先:会長
題名:自分で行く
本文:迎えは要らないから

 電話帳の登録を倉本君から会長に変えた上で、短くお断りの返信をしてお風呂へ入ろうと階下へ向かう。
「慶。仮に好きな女の子が出来ても、無理矢理迫るとか追いかけ回すとかしたら駄目だよ。どんどん嫌いになって行くだけだからね」
 リビングでのご飯中、さっきの朱先輩と話していた狩猟本能について慶に釘を刺しておく。
「な?! ねーちゃん。次はストーカーかよ!」
 私は女心を教えただけなのに、何故か慶が目を剥く。
「何アホな事言ってんの? アンタに早く彼女が出来るようにって助言してあげているんじゃない」
 まるで女心を分かっていない我が家の男二人。
 まあ、前科のあるお父さんにはお母さん以外の女心を教える訳にはいかないから、放っておくとして、慶には早く彼女でも作って落ち着いて欲しいのに。
「ねーちゃんみたいな暴力女の助言なんか当てになるかよ。そう言うのは蒼依さんに教えてもらうって決めてるんだよ」
 なのに勝手な事ばかり口にする慶。私にとって蒼ちゃんみたいな大切な親友を慶なんかにお願いするかっての。
「あっそう。じゃあもうお姉ちゃんはお手伝いもアドバイスもしないから」
「ふんっ。別にねーちゃんには頼んでねーっつうの」
 そしていつも通り、最後には売り言葉に買い言葉みたいな喧嘩になる。


 私が二階に上がった時案の定、

宛元:会長
題名:待ってて欲しい
本文:岡本さんに話したい事があるから、友達も空木も抜きにした二人だけの時間
   がどうしても欲しいんだ。

 会長からのメッセージと着信が届いていた。
『中条さん。今時間大丈夫?』
 だけれど、私は伝える事は伝えたし、この期に及んでまだ私と二人きりとか言うんだから、本当に返す言葉が無い。
『はい。大丈夫ですけど彩風の話ですか?』
 だから明日冬美さんが勇気を持って踏み出す一歩が相手に届くように、受け取る相手が色眼鏡なしでしっかり冬美さんを見てくれるように花道を作りたい。
『ううん。彩風さんの話は今日優希君から聞いたよ。その時に合わせて聞いたんだけれど、冬美さん「っ?!」の良い所、ちゃんと彩風さんと喧嘩してでも伝えてくれたんだってね。中条さん「……」ありがとう』
『あの。ちょっと待って下さい。その呼び方って雪野の事ですよね』
 これはみんなに説明する必要があるのかな。
『そうだよ。今日の昼休みに冬美さんから全部を聞いて、もうその全てにおいて冬美さんに何一つ瑕疵が無かったからいっそ友達になってもらおうと思って』
 本当は順番も理由も全く違うけれど、主題と本音を伝えるにはこれが一番だと判断する。
『友達って……あーしは? あーしだって愛先輩の気持ちを汲んでしっかり動いてますし、さっき愛先輩が褒めてくれたように、彩風と喧嘩してでもちゃんと伝えてますよ』
 だからこそ
『中条さん「……」は、私にとって、とっても可愛い後輩だよ』
 中条さんに対する印象は戻ったのだから。
『いやもちろんそれで嬉しいのは嬉しいんですけど……じゃあ雪野に関する話って事ですね』
 なのに明らかに不満声の中条さん。まあ、その理由くらいは分かるけれど。
 でも中条さん自身の不満を解消出来るかどうかは、明日、冬美さんの話を聞いてからの気持ち次第だ。
『そうだよ。明日、優希君と一緒に冬美さんの話を聞いて欲しいの。その上でどう思ったのか私にその時点での感想と言うか気持ちを聞かせて欲しいの』
 だから可能な限り事前に印象が入ってしまわない様に、本当に最小限だけの情報に留めて中条さんへ伝える。
『いや。雪野と副会長とあーしの三人でって、愛先輩は一緒じゃなくて良いんですか?』
『中条さん。冬美さんは「っっ」何も悪くないって言ったよ。中条さんは私の言葉を信じてくれないの? 聞いてくれないの?』
 だけれど違う所に気を取られすぎていて、私の意図に気付いて貰えなかったみたいだから、私にとって可愛い後輩が気付けるように分かり易く並べ立てて

さんを刺激する。
『分かりました。さすがに現状の愛先輩に不満と言いたい事はたくさんありますが、あーしが愛先輩を一番尊敬してるってちゃんと分かって貰いますから』
 今度は私の意図した言葉に、色々な感情を零してくれる理沙さん。だからこの後輩は手がかかるけど可愛いのだ。
『それであーしは、明日の昼休みどうしたら良いんですか?』
『冬美さんのクラスへ行って、冬美さんと二人で優希君を待って、後は三人で話し合って冬美さんの話を聞いてもらえたら良いよ。分かっているとは思うけれど、その間だけは冬美さんと喧嘩したら駄目、論外だからね』
 まあ、今の可愛い後輩。理沙さんならその心配はないと思うけれど。
『分かりました。つまり明日の昼休みは、副会長と雪野達で昼して、その時に聞いた雪野からの話の感想を、愛先輩に伝えれば良いんですね』
 完璧だ。
『ちなみにあーしも実際一度止めたんですが、二人の関係が駄目になった彩風はどうするんですか?』
『彩風さんには、明日の統括会で大雷を落とすつもりだよ。だけれど、この話は彩風さん本人には伝えないでね』
 場合によっては明日、私は非情な判断を下すかもしれない。と覚悟しながら理沙さんには伝える。
『彩風に雷って……形や相手がどうあれ、失恋したばっかりなんですから、手加減はもちろんの事愛先輩が怒ったら本当に怖いので程々にして下さいよ』
 まあ、みんなからそう言われるけれど、
『中条さんには話したけれど、私たちの助言を文句、泣き言一つ言わずに黙々と実践していた冬美さんは本当に立派だからね。その他の話は優希君には伝えてあるから、聞いてくれても良いよ』
 私の友達が言われ無き中傷を受けているのを黙っている程、薄情でもお人好でもない。
『分かりました。とにかく明日は雪野の話を聞いてから改めて連絡します』
『うん。よろしくね』
 私が自分の気持ちを整理したところで、理沙さんとの通話を終える。
 そして、

宛先:優希君
題名:エッチな優希君へ
本文:明日の昼休み、中条さんも待っているから、冬美さんの教室へ向かって
   欲しいな。後は任せるから三人で話を聞いてね

 優希君へメッセージだけを送っていよいよ冬美さんに電話だ。

―――――――――――――――――次回予告――――――――――――――――
             後輩のために用意する花道
         それを知らないいつも通り頭の固い後輩

            そして定例の親友への電話連絡

              昨日の今日だと言うのに
    そして予想通り、少ないヒントで応えに辿りついていた優珠希ちゃん
      それはやっぱり2人ともが主人公を気に入っているからで

           その中で驚きの決定が下されていた……

     「ちなみに、それは学校側の判断ですか? それとも――」

           次回 第185話 統括会・会長の意地
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