011 行動原理はキュン‐キャハ‐ハピハピ
文字数 2,358文字
「……ねぇねぇ紡ぅ、やっぱりクラス委員には紡がなってよ~。繰、深緋が暴走しまくった責任だけとらされるのなんてイヤなんだけどぉ」
「オィオィ繰、暴走ではなく邁進なの、アタシの驀地 をナメてもらっては困るぞ。そのあとにはただ所所で余煙が聳 く廃滅が広がるのみ、そんな凄まじき責任を、このチョビにとりきれるものかぁ」
「繰だってとりきれないし、とる気からしてないわよぉっ」
「まぁいいじゃん。サロン・ド・メあとのガッコ行事なんて、三年生は一、二年のお膳立てにただノッかるだけなんだからさ。繰が普段どおりノ~テンキにクラス委員をやってても何の問題も起こりゃしない、深緋の尻拭いくらい余裕だって」
「えぇ~! 紡までが、繰に責任を押しつけるために祭り上げる気だったのねっ? もう絶対ヤダ、クラス委員なんてぇ」
「深緋が原因に限らず、あのクラスで何かマズいことが起こっても、どうにかセンセ連中を収めきれるのは繰しかいないってことじゃん。何のための善くも悪くもポップな優等生キャラだよ? この三年目で利用しない手はないし、サロン・ド・メは、トリア・ファータの名を地元からPRできる一大イヴェントなんだからさ」
「そうなの。邁進して激怒られたって、どうせアタシにはプ~ですらないし。紡はこれ以上グッと縮んで、手乗り紡になったら、愉しいけどヤバいでしょ」
「手乗りだぁ? そこまで言うか、このチョッキリゾウムシめが」
「あれ~? 声はすれども姿が見えずぅ、ホンにチョビってプ~同然っ」
「いい加減にしとけよ深緋ぃ……」
深緋は、あからさまに尖り顔の紡から繰へと向きなおる――。
「よくよく考えてみるがいい。アタシが謝るのと繰が謝るの、どっちが余計にムカついて、どっちが許してもらえるかわからないわけ? 適材適所、ザ・ライト・ガール・イン・ザ・ライト・プレイスって言うのは、心身ともに軽いパーが脚光を浴びるって意味じゃないの」
「フン~だっ。その顔で
「でもさ繰、確かに深緋じゃ、責任をとるどころか底なしのズブズブに泥沼化させちゃうだけなのが、考えてみるまでもなく明歴歴なんだからさ」
「ル~ゥ……」
「これにてクラス委員の件は落着なの。もう、繰は二度とゴネ出すことのないようにっ」
「……けどでもぉ、繰への協力は絶対なんだからね~っ」
繰のラスト‐ギャスプなどまるで足掻きにならず、深緋はチョッキリと祈り終えてしまう。
「それで紡? そのサロン・ド・メ恒例のクラス対抗コスプレ合戦だけど、繰とこのアタシに今朝の登校途中まで黙ってたからには、既に具体案を幾つかディテールまで練りあげているんだろうな?」
「あぁ、まぁね」
「さぁさぁ、この合間に勿体つけずに見せてもらおうじゃないか」
「わかってるって。クラスの連中を畳み込むための下準備はしてあるさ、とにかくサクサク教室へ戻ろうぜ。一、二年のセンセや教頭の目に留まったら、まんまとぬけ出せた旨味がなくなるじゃん」歩度も上げて、紡は二人を促した。
その紡に、繰の手をとり引っ張りながら並み寄る深緋は、話の方の先を促す。
「ディテールはデザイン画を見てからとして、紡が考えた中でイチオシは何なの?」
「そうだねぇ、やっぱフレイじゃん北欧神話の。あれなら優勝争いできること請け合うよ」
「フレイィ? フレイねぇ……」
「各クラスの担任は、必ずコスらせないとダメなんだし。ウチの担任なら、大角稔 だなんて五穀豊穣を祈念された名前だからさ、最悪一人でメインを張らせれば逆に楽でいいし」
「意味不明なの。北欧神話で男の神のコスプレならシグルズでしょ断然。あとはオーディンかトールか、ロキはイメージ湧かないし……」
「担任の苗字って、
「……重要なの? そんなつながり」
「勿論そんなことは二の次で、フレイはスキーズブラウニルっていう、ポケットに仕舞える大きな船をもっててさ。それをコンテストの場で再現して見せたらどうよ?」
深緋よりも、先にイメージを膨らませ終えた繰が問い返す。
「その、フレイって神様にコスられた担任が、審査員たちの目の前で大きな船をポケットに仕舞い込んで見せるってこと? そんなことできちゃったら優勝しちゃう~」
「その逆だって。ポケットから出して見せた方がインパクト強いじゃん」
「いいのそれっ、その船はアタシに任せろ。繰は材料の調達を急げ、現時点で一番強い超極薄な生地とそれを縫うのに最適な糸を入手なの。予算オーヴァーしそうな場合はただちにアタシへ報告せよ、カカに祈って、完全犯罪で盗み出せるようにしてもらうっ」
「そんなダメなことしなくても楽勝~、むしろ材料は紡のパパが働いてる会社でそろいそう」
「オォ~、そうなのっ? そう言うこと、パーはいつもパーっと繰 り合わせてくれちゃうから好きぃ」
「だから問題は~、つくってポケットサイズに折り畳んだ船を一気に広げる方法だわぁ。幾つかは思い浮かぶけど、どれが一番巧くいくかは実験してみないとね~」
「そうなんだよね。インパクトは弱まるけどワタシも最初はシグルズでいこうとは思ったよ。中世ドイツの英雄叙事詩でも描かれるジークフリートのことだと言えば、みんなが知ってるだろうし、引き立て役の翼龍をリアルに巨大につくってさ。でも低空に安定して浮べ留める方法的には一緒だから、飛び出す船の方がいいじゃん?」
「実験もアタシがやるっ。ガッコでなんかしてたら、絶対にバレちゃってインパクトなんか消え去るの。船だけは、当日も本番まで、クラスの連中にも内緒の極秘あつかいにしなくちゃダメダメッ」
鼻息も荒くして、深緋が一波乱を予見させる我執 立てに出た──。
「オィオィ繰、暴走ではなく邁進なの、アタシの
「繰だってとりきれないし、とる気からしてないわよぉっ」
「まぁいいじゃん。サロン・ド・メあとのガッコ行事なんて、三年生は一、二年のお膳立てにただノッかるだけなんだからさ。繰が普段どおりノ~テンキにクラス委員をやってても何の問題も起こりゃしない、深緋の尻拭いくらい余裕だって」
「えぇ~! 紡までが、繰に責任を押しつけるために祭り上げる気だったのねっ? もう絶対ヤダ、クラス委員なんてぇ」
「深緋が原因に限らず、あのクラスで何かマズいことが起こっても、どうにかセンセ連中を収めきれるのは繰しかいないってことじゃん。何のための善くも悪くもポップな優等生キャラだよ? この三年目で利用しない手はないし、サロン・ド・メは、トリア・ファータの名を地元からPRできる一大イヴェントなんだからさ」
「そうなの。邁進して激怒られたって、どうせアタシにはプ~ですらないし。紡はこれ以上グッと縮んで、手乗り紡になったら、愉しいけどヤバいでしょ」
「手乗りだぁ? そこまで言うか、このチョッキリゾウムシめが」
「あれ~? 声はすれども姿が見えずぅ、ホンにチョビってプ~同然っ」
「いい加減にしとけよ深緋ぃ……」
深緋は、あからさまに尖り顔の紡から繰へと向きなおる――。
「よくよく考えてみるがいい。アタシが謝るのと繰が謝るの、どっちが余計にムカついて、どっちが許してもらえるかわからないわけ? 適材適所、ザ・ライト・ガール・イン・ザ・ライト・プレイスって言うのは、心身ともに軽いパーが脚光を浴びるって意味じゃないの」
「フン~だっ。その顔で
L
とR
の発音がヘタッピすぎぃ」「でもさ繰、確かに深緋じゃ、責任をとるどころか底なしのズブズブに泥沼化させちゃうだけなのが、考えてみるまでもなく明歴歴なんだからさ」
「ル~ゥ……」
「これにてクラス委員の件は落着なの。もう、繰は二度とゴネ出すことのないようにっ」
「……けどでもぉ、繰への協力は絶対なんだからね~っ」
繰のラスト‐ギャスプなどまるで足掻きにならず、深緋はチョッキリと祈り終えてしまう。
「それで紡? そのサロン・ド・メ恒例のクラス対抗コスプレ合戦だけど、繰とこのアタシに今朝の登校途中まで黙ってたからには、既に具体案を幾つかディテールまで練りあげているんだろうな?」
「あぁ、まぁね」
「さぁさぁ、この合間に勿体つけずに見せてもらおうじゃないか」
「わかってるって。クラスの連中を畳み込むための下準備はしてあるさ、とにかくサクサク教室へ戻ろうぜ。一、二年のセンセや教頭の目に留まったら、まんまとぬけ出せた旨味がなくなるじゃん」歩度も上げて、紡は二人を促した。
その紡に、繰の手をとり引っ張りながら並み寄る深緋は、話の方の先を促す。
「ディテールはデザイン画を見てからとして、紡が考えた中でイチオシは何なの?」
「そうだねぇ、やっぱフレイじゃん北欧神話の。あれなら優勝争いできること請け合うよ」
「フレイィ? フレイねぇ……」
「各クラスの担任は、必ずコスらせないとダメなんだし。ウチの担任なら、
「意味不明なの。北欧神話で男の神のコスプレならシグルズでしょ断然。あとはオーディンかトールか、ロキはイメージ湧かないし……」
「担任の苗字って、
おおすみ
じゃなくだいかく
やたいかく
と読めば、牛飼座にあるアルクトゥルスを意味するんだよ。農耕を司る星でしょ、フレイも豊穣の神つながり」「……重要なの? そんなつながり」
「勿論そんなことは二の次で、フレイはスキーズブラウニルっていう、ポケットに仕舞える大きな船をもっててさ。それをコンテストの場で再現して見せたらどうよ?」
深緋よりも、先にイメージを膨らませ終えた繰が問い返す。
「その、フレイって神様にコスられた担任が、審査員たちの目の前で大きな船をポケットに仕舞い込んで見せるってこと? そんなことできちゃったら優勝しちゃう~」
「その逆だって。ポケットから出して見せた方がインパクト強いじゃん」
「いいのそれっ、その船はアタシに任せろ。繰は材料の調達を急げ、現時点で一番強い超極薄な生地とそれを縫うのに最適な糸を入手なの。予算オーヴァーしそうな場合はただちにアタシへ報告せよ、カカに祈って、完全犯罪で盗み出せるようにしてもらうっ」
「そんなダメなことしなくても楽勝~、むしろ材料は紡のパパが働いてる会社でそろいそう」
「オォ~、そうなのっ? そう言うこと、パーはいつもパーっと
「だから問題は~、つくってポケットサイズに折り畳んだ船を一気に広げる方法だわぁ。幾つかは思い浮かぶけど、どれが一番巧くいくかは実験してみないとね~」
「そうなんだよね。インパクトは弱まるけどワタシも最初はシグルズでいこうとは思ったよ。中世ドイツの英雄叙事詩でも描かれるジークフリートのことだと言えば、みんなが知ってるだろうし、引き立て役の翼龍をリアルに巨大につくってさ。でも低空に安定して浮べ留める方法的には一緒だから、飛び出す船の方がいいじゃん?」
「実験もアタシがやるっ。ガッコでなんかしてたら、絶対にバレちゃってインパクトなんか消え去るの。船だけは、当日も本番まで、クラスの連中にも内緒の極秘あつかいにしなくちゃダメダメッ」
鼻息も荒くして、深緋が一波乱を予見させる