第二話 「最強の凱旋」03

文字数 1,291文字

 事務所に戻るとアルバーが一人で書類を書いていた。
 彼は商家の出身で戦闘種として戦うが経理、総務的な仕事もこなす。
 どちらにも才能と実力を発揮し、シュンにとっては頼もしい片腕だった。
 長めのブロンドと青い目で物腰も柔らかく、出自(しゅつじ)を納得させる。
2017/12/01 12:35
「ああ」
2017/12/01 12:36
 他の隊員は仕事に行っているので事務所の中は静かだった。
2017/12/01 12:37
「ギルドに行きますか?」
2017/12/01 12:37
「そうだな……」
2017/12/01 12:37
 大方の予想ではシュンのトップ、最強の称号は確実とされているが、正式にはギルドで正規の手続が必要だった。
 ギルドとは戦闘種たちの元締めのような組織だ。
 ランキングを管理しベヒモス討伐の賞金を出し、クエストと呼ばれる金になる企画を提供する。
 また、戦闘種やチームへのスポンサーを申し出た企業たちの窓口にもなっていた。
2017/12/01 12:38
「アルバー、付き合ってくれ」
2017/12/01 12:38
「はいっ!」
2017/12/01 12:39
 アルバーは正式なトップ認定を待ちかねている、といった感じだった。
 
 
 ギルドの事務所は北門の広場に面している大きな建物だ。
 昨日はシュンの雄姿を一目見ようと群衆でごったがえしていたが、今の広場は人もまばらだった。
 二人で中に入ると、まだ戦闘種たちがクエストに出ている時間の為、閑散としているホールが小さくざわついた。
 シュンはお馴染みの女性職員がいるカウンターに座る。
2017/12/01 12:39
「おめでとう、シュン」
2017/12/01 12:39
「いや、まだ分からないよ」
2017/12/01 12:40
「大丈夫よ」
2017/12/01 12:40
 そう言ってミレリラは微笑む。
 シュンが初めてこの街に来た時に対応してくれた受付嬢だ。当時は彼女もまた新人だった。
 スキルを感知する装置、通称、魔導石板が出されシュンは手を乗せる。
 【鑑定】のスキルを持つミレリアがその上に手を添えた。
2017/12/01 12:44
「うん、スケラーノの力はやっぱり凄いわね。予想通りよ……」
2017/12/01 12:44
 暫くの間、ミレリアはシュンのスキルに集中する。
2017/12/01 12:44
「スケラーノのスキルは何だったのかしら?」
2017/12/01 12:44
「分からないな……」
2017/12/01 12:45
「そう、私にも分からないわ。調べてみる?」
2017/12/01 12:45
「いや、戦いながら自分で探ってみるよ」
2017/12/01 12:46
「分かったわ」
2017/12/01 12:46
 ギルドへの依頼は金が掛かるし、今までも手に入れたスキルは自分でモノにしてきた。
 取り敢えずは自分で探ってみようと、シュンは考えていた。
2017/12/01 12:46
「待っててね」
2017/12/01 12:47
 ミレリアが奥の部屋に向かう。
 石板をギルドの魔導師が探り、倒したスケラーノの力を導き出す。
 そして、スケラーノの賞金額、新たに得たレアクリスタルの力を計り、合算されるポイントが計算される。
 
 数人の職員が脚立を立て、壁に掛かっているランキングボードが直された。
 予想通りシュンはランキングトップに躍り出た。
 それはここの登録から最強までの北城塞グロッセナの最短記録でもあった。
 ギルド内には自然と拍手が沸き起こった。
2017/12/01 12:47
「なんだかんだ言っても悪い気分じゃないな」
2017/12/01 12:47
「もちろんです。我々チームのメンバーにとっても名誉な事ですよ」
2017/12/01 12:48
 シュンはランキングよりベヒモスを狩り、賞金を得てレアクリスタルを手に入れ、強くなる事が優先だと常々言っている。
 
 実際ランキングに拘り、功を焦り怪我をしたり敗北したりする戦闘種も大勢いた。
2017/12/01 12:48



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戦闘種の最強称号 ~魑魅と魍魎を狩る者たち~

2017/12/01 12:50
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登場人物紹介

シュン/主人公の若者。チーム・ランツィアのリーダー。北城塞グロッセナでランキングトップ、最強の称号を手に入れた。

マヤ/シュンの恋人。同じ孤児院で幼い頃からシュンと共に過ごしていた。

アルバー/ランツィアのサブリーダー。商家の出で戦うが経理、総務的な仕事もこなす。

ブレイソン/ランツィアのサブリーダー。天才肌、軍人の家系に反発して家を出た。スキルと強さを求めている。

レイキュア/チーム・スカーレッドの隊長。女ばかりのチームを率いる女傑。シュンが街に来た頃からの知り合い。

カノーア/スカーレッドの副隊長。雷撃の才能がある。涙もろい。

ジェンヌ/チーム・バウザーナでリーダー格の将軍を自称。父親は大企業の経営者。最強称号への執念を見せる。シュンをライバル視しているが……。

リスティ/子供ばかりの四人でチームを作っている。

セバスティ/チーム・エスプロジオーネの頭(ヘッド)。

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