第八話 「火炎のベヒモス」04

文字数 1,587文字

 シュンは残敵を掃討し、傷ついた戦闘種たちの元に戻った。
 剣を杖代わりに立つカノーアの元にアルバーが駆け寄り、その体を支えている。
2017/12/04 15:53
「二人ともよくやってくれたな」
2017/12/04 15:53
「シュン、よく来てくれました」
2017/12/04 15:53
「ああ、ギルドが連絡をくれた」
2017/12/04 15:53
「そうでしたか……」
2017/12/04 15:53
 下を向いているカノーアが何事かを呟いている。
2017/12/04 15:54
「何? あれ……、何……」
2017/12/04 15:55
「どうしたの?」
2017/12/04 15:55
 アルバーが話しかけると、カノーアが顔を上げて言う。
2017/12/04 15:55
「凄い……、凄いです。あんなふうに戦えるなんてっ!」
2017/12/04 15:57
「まっ、まあなあ……」
2017/12/04 15:57
「本当に凄いです……、あれが最強……」
2017/12/04 15:57
 カノーアはそう言ってまたガックリと項垂れた。
 立っている力も失われつつあるようだ。
 気力、体力、スキルも全てを使い果たした時に起こる現象で、スケラーノと戦った後のシュンと同じ状態だった。
2017/12/04 15:57
「運ぼうか」
2017/12/04 15:58
「はい」
2017/12/04 15:58
 二人でカノーアの肩を担いで荷馬車まで運ぶと、レイキュアが駆け寄って来た。
2017/12/04 15:58
「大丈夫?」
2017/12/04 15:58
「ああ、限界まで力を使い果たした。飯を食って一晩寝れば回復するよ」
2017/12/04 15:59
「そう……」
2017/12/04 15:59

 レイキュアは安堵の表情を浮かべる。
 動ける者で倒れている戦闘種たちを救出する。

 幸いにして死者も重傷者もいなかった。
 ベヒモスが倒れた戦闘種には目もくれず、撤退する戦闘種たちを追ったのが幸いした。
 一対一なら絶命するまで攻撃されていたはずだ。
 【回復】のスキルを施し全員を荷馬車に乗せる。

2017/12/04 15:59
「シュン!」
2017/12/04 16:00
 振り向くとリスティとジェリルがいた。
2017/12/04 16:00
「二人とも無事でよかった。怪我はないか」
2017/12/04 16:00
「はいっ! 凄い戦いでした」
2017/12/04 16:01
「僕たちも二人でバジリクスを倒しましたよ」
2017/12/04 16:01
「いえ、逃げられないと思って戦ったんです」
2017/12/04 16:02
 ジェリルの言葉に、いざとなったら逃げろと言われていたので、リスティは言い訳した。
2017/12/04 16:04
「そんな状況なら仕方ないよ、そうか二人でバジリクスを倒したのか。凄いな」
2017/12/04 16:04
 シュンは二人の肩を叩いた。
2017/12/04 16:04
「いえ、シュンは凄いです……」
2017/12/04 16:05
 リスティの言葉にシュンは返す。
2017/12/04 16:05
「俺も昔はお前たちと同じだった。五年もすれば二人にもできるようになるよ」
2017/12/04 16:06
「「はいっ!」」
2017/12/04 16:06

 二人は顔を上気させて元気よく返事をした。


 フルコンテナのスキルを解放したシュンの戦いぶりは、ほどなくしてグロッセナ中に広まった。
 そしてシュンは再び個人ランキングトップに返り咲く。


 後日、いつものバーのカウンターにシュンとレイキュアがいた。
 
 予想通り昨日がデス・キャニオン進行クエストの最終日となった。

2017/12/04 16:06
「カノーアったらまだ言ってるわ。あなたの戦いのこと……」
2017/12/04 16:07
「そうか」
2017/12/04 16:08
「デス・ベイスンでの戦いって、お互に力を使い果たした、最後の決着の場面でしょ」
2017/12/04 16:09
「そうだな」
2017/12/04 16:14
「あれが上位ランカーの戦いだって皆、誤解しちゃうのよね」
2017/12/04 16:15
「うん」
2017/12/04 16:15
「ウチの隊員も本物の戦いを見て皆ショックを受けてたわ、もちろん良い意味でね」
2017/12/04 16:15
「そうか」
2017/12/04 16:16
「何よ~、その気のない返事は?」
2017/12/04 16:16
「いや、ギルドとディボガルドに上手く使われて終わったクエストだったよ」
2017/12/04 16:16
 結局、ディボガルドの討伐ポイント申請はゼロだった。
 彼らはカーバンクルの持っている【火炎】のレアクリスタルだけに集中していたのだ。
 だからこそシュンのトップへの返り咲きがあった。
2017/12/04 16:17
「も~~、斜めに見ないで素直に喜びなさいよ~~」
2017/12/04 16:17
「まあなあ……、たまたま三体まとめて倒しただけさ」
2017/12/04 16:19

 初めての最強を運やツキだと疑って様子を見ていたスポンサーたちが、これは本物だと二度目の最強を見て申し込んできていると、ジュリーザが興奮気味に言っていた。

 シュンにとってはスケラーノ討伐こそが実力であり、デス・キャニオンでの討伐は偶然だったので、なんとも釈然としない展開だった。

2017/12/04 16:19
「最強なんだからシャンとして、胸を張ってね。ランツィアのメンバーとスカーレッドの隊員も皆、見ているわ」
2017/12/04 16:20
「そうだな」
2017/12/04 16:21
「も~~、ビジネスもしっかりやってね」
2017/12/04 16:21
 棚から牡丹餅のような返り咲きを、シュンは素直に喜べないでいた。
2017/12/04 16:22
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登場人物紹介

シュン/主人公の若者。チーム・ランツィアのリーダー。北城塞グロッセナでランキングトップ、最強の称号を手に入れた。

マヤ/シュンの恋人。同じ孤児院で幼い頃からシュンと共に過ごしていた。

アルバー/ランツィアのサブリーダー。商家の出で戦うが経理、総務的な仕事もこなす。

ブレイソン/ランツィアのサブリーダー。天才肌、軍人の家系に反発して家を出た。スキルと強さを求めている。

レイキュア/チーム・スカーレッドの隊長。女ばかりのチームを率いる女傑。シュンが街に来た頃からの知り合い。

カノーア/スカーレッドの副隊長。雷撃の才能がある。涙もろい。

ジェンヌ/チーム・バウザーナでリーダー格の将軍を自称。父親は大企業の経営者。最強称号への執念を見せる。シュンをライバル視しているが……。

リスティ/子供ばかりの四人でチームを作っている。

セバスティ/チーム・エスプロジオーネの頭(ヘッド)。

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