第五話 「ベヒモス狩り」02

文字数 1,793文字

 森の間道から荒野に出ると、馬に乗ったアルバーが走って来るのが見えた。

2017/12/03 11:36
「何かあったのか?」
2017/12/03 11:36
「シュン! チーム・ディボガルドがデス・ベイスンで戦っています」
2017/12/03 11:46
「誰だ?」
2017/12/03 11:46
「分かりません、行きましょう!」
2017/12/03 11:47
「おうっ!」
2017/12/03 11:47
 馬を走らせてデス・ベイスンに着くと、ランツィアのメンバーや他のチームの戦闘種たちも大勢が集まり観戦していた。
2017/12/03 11:47
「あれか……」
2017/12/03 11:47
 デス・ベイスンでは二本の剣を使う戦闘種が大型のベヒモスと戦っている。
2017/12/03 11:48
「あの男は確か……、誰だったっけ?」
2017/12/03 11:48
「名前はリチェンバー、ランクは二位です」
2017/12/03 11:49
 アルバーが解説してくれる。
 シュンは他のチームやランカーについてはけっこう無頓着だ。
 
 相手は人型の狼、ワーウルフと蛇の化身リリスの混合種(キマイラ)で体長は四、五メートルほどある。上の中クラスだった。
 
 リチェンバーは空中を機動しながら、両手に持つ二本の剣でベヒモスと戦っている。
 【飛行】と【切断】のスキルを効果的に使用していた。
 狼の爪や蛇の尾の攻撃を、まるでコマのように体を回転させて切り刻む。
2017/12/03 11:49
「すげえ……」
2017/12/03 11:50
 ブレイソンが感嘆の声を上げた、確かに凄い戦いぶりだ。
 体内のコンテナも大きいのだろう。シュンも感心した。
 リチェンバーは見事にベヒモスを倒した。
 ギャラリーの中には戦闘種たちに守られている企業の人間らしき姿が何人か見える。
 たぶん、チーム・ディボガルドのスポンサーなのだろう。
2017/12/03 11:51
「ディボガルドはここ数日、あいつ(ベヒモス)を追い回していましたよ」
2017/12/03 11:51
「シュン! 俺たちもやりましょう」
2017/12/03 11:52
 アルバーとブレイソンは興奮して口々に言う。
 同じ戦闘種として、この戦いぶりを見せつけられて、落ち着けというのが無理な相談だった。
2017/12/03 11:53
「いいんだよ、二人共」
2017/12/03 11:53
 おそらく、これでシュンはトップから陥落する。
2017/12/03 11:56
「アルバー、おまえのランクは今いくつだ?」
2017/12/03 11:56
「二十前後です……」
2017/12/03 11:57
「ブレイソンは?」
2017/12/03 11:58
「十台後半です」
2017/12/03 11:58
「そうか、俺はお前たちを踏み台にしてまでトップにしがみ付くつもりはないぞ」
2017/12/03 11:59
 シュンは自分のランキング争いに執着するつもりはなかった。
 チームの底上げが大事だ。
 今のランツィアはシュンのワンマンチームと言えなくもない。
2017/12/03 11:59
「スケラーノの時は手を出すな、なんて言っちまったが、おまえらも自分のランクを上げる事に集中しろ」
2017/12/03 11:59
 アルバーとブレイソンは複雑な表情をする。
 もちろん個人のランクは上げたいが、リーダーのトップは自分たちの名誉でもあるのだ。
2017/12/03 12:01
「一度最強の称号を手に入れただけでも凄いんだからな。まあ、そのうち取り戻してやるさ……」
2017/12/03 12:01
 シュンはもう一度デス・ベイスンを見て目を細めた。
2017/12/03 12:02
「よう、シュン。やっぱり三日天下だったな」
2017/12/03 12:02
「ジェンヌか……」
2017/12/03 12:03
 声を掛けられ振り向くと、いつものように副官の二人を従えたジェンヌが立っていた。
2017/12/03 12:03
「相変わらずチーム・ディボガルドはすげえわな」
2017/12/03 12:04
「ああ、俺たちとは格が違うよ」
2017/12/03 12:04
「デスキ・キャニオンの話、どうすんだ?」
2017/12/03 12:05
 ジェンヌは両手をポケットに突っ込んだままぞんざいに言う。
2017/12/03 12:05
「何の事だ?」
2017/12/03 12:06
 シュンは知らないふりをした。
2017/12/03 12:06
「とぼけんなよ。ガスケスがあちこちで触れ回っているぜ」
2017/12/03 12:06
「なんだ、筒抜けなのか……」
2017/12/03 12:07
「ディボガルドが全力で行くらしいな」
2017/12/03 12:09
「そうなのか?」
2017/12/03 12:09
「俺たちはオマケみたいなもんだ。気に入らねえがチーム・バウザーナも行くぜ」
2017/12/03 12:10
「ウチは考え中だよ」
2017/12/03 12:10
「ふん、逃げんなよ」
2017/12/03 12:10
 ジェンヌは挑発するようにシュンたちを一瞥してから背中を向けた。
2017/12/03 12:11
「シュン……」
2017/12/03 12:11
 ブレイソンはまだ何か言いたげだ。
2017/12/03 12:11
「他所(よそ)は他所(よそ)、ウチはウチだ。マイペースで行くからな。メンバーたちにも徹底させろ」
2017/12/03 12:11
 ギルドに寄ってから事務所に戻り今日の稼ぎを計算し、シュンはこれからの提案をした。
2017/12/03 12:12
「アルバーとブレイソンで話して組割の計画を立ててくれ。魔境の浅い場所に俺抜きで行けるようなだ」
2017/12/03 12:12
「いいんですか?」
2017/12/03 12:12
「ああ、皆の力も上がっているようだ。但し、くどいが無理は厳禁だぞ」
2017/12/03 12:13
「助かります。口には出さないですが、もう少し強い敵と戦いたいって不満に思っているメンバーもいるみたいで……」
2017/12/03 12:13
 アルバーは戦い以外でも若いメンバーの相談役になったりしていた。
 自然と彼らの不満などを感じるのだろう。
2017/12/03 12:13
「その代表がブレイソンだろ?」
2017/12/03 12:14
 シュンは冗談めかして言う。
2017/12/03 12:14
「いっ、いえ……」
2017/12/03 12:14
「冗談だよ」
2017/12/03 12:15
 ブレイソンが、バツが悪そうな顔をしたのでシュンは笑顔でとりなした。
2017/12/03 12:15
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登場人物紹介

シュン/主人公の若者。チーム・ランツィアのリーダー。北城塞グロッセナでランキングトップ、最強の称号を手に入れた。

マヤ/シュンの恋人。同じ孤児院で幼い頃からシュンと共に過ごしていた。

アルバー/ランツィアのサブリーダー。商家の出で戦うが経理、総務的な仕事もこなす。

ブレイソン/ランツィアのサブリーダー。天才肌、軍人の家系に反発して家を出た。スキルと強さを求めている。

レイキュア/チーム・スカーレッドの隊長。女ばかりのチームを率いる女傑。シュンが街に来た頃からの知り合い。

カノーア/スカーレッドの副隊長。雷撃の才能がある。涙もろい。

ジェンヌ/チーム・バウザーナでリーダー格の将軍を自称。父親は大企業の経営者。最強称号への執念を見せる。シュンをライバル視しているが……。

リスティ/子供ばかりの四人でチームを作っている。

セバスティ/チーム・エスプロジオーネの頭(ヘッド)。

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