第九話 「城塞都市サンドリオ」03

文字数 1,211文字

 朝、シュンはスカーレッドの事務所を訪ねて、レイキュアと合流する。
 南門から二人で馬車に乗り中央都市サンドリオへと向かった。
 レイキュアは大人しい落ち着いた服装で、シュンもいつもの戦闘種の服を脱いで普段着だ。
 
 サンドリオは東西南北のギルドを統括する本部と、大口スポンサーになっている企業の事務所、戦いを観覧する企業の人間が宿泊するホテル、食事をするレストラン、そこで働く人々が暮らす場所だ。
 他には回収されたベヒモスの素材を扱う商人、研究者など。街の防衛を担う駐屯軍の兵なども暮らしている。
 この地下には、細いパイプラインで運ばれる燃料で稼働する発電所があり、各城塞に最小の電力を供給している。
 並ぶ建物はグロッセナと同じ三階建てまでの高さで、街を囲う城壁より低い。
 空を飛ぶベヒモス、ジズの攻撃を警戒してだが、実際にはそんな事はないし、ジズは目撃自体がまれだ。
 
 二人で中央通りを歩きながら、両脇に並ぶ店先などを眺めた。
 ある店のショーウィンドーにあの女神レイキュアの絵が飾ってあった。
 横にはチーム・スカーレッドの衣装に更に装飾を施したような上下とマントがディスプレイされている。
2017/12/05 08:37
「なんだ、こりゃ?」
2017/12/05 08:38
「見ての通り、私をイメージしたブランドよ」
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 レイキュアは若干自慢げに言うが、これが商品として成立しているとは考えにくい。
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「こんな服、売れるのかあ?」

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「まさか、ディスプレイ用よ。でも、お土産用に買っていく企業も時々いるんですって」
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「土産ねえ……」
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 いったい誰が着るのかとシュンは考えてしまう。仮装パーティーでもあるのだろうか?
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「入りましょうか」

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 シュンは場違いと思いつつもレイキュアの後に続く。中は意外に普通で男物の服も並んでいた。
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「ねえねえ、これ見て!」
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「何だよ……、! これって、ウチの名前か?」
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「当り前じゃない!」
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 それは胸にランツィアのロゴが入った革製の上着だった。
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「初めて見たよ……」
2017/12/05 08:49

 レイキュアは一通り店内を見て、顔馴染みなのか店員と談笑している。


 店を出て二人は洒落たレストランに入り昼食をとった。

2017/12/05 08:50
「本当はこんなお店もやりたいのだけれどね」
2017/12/05 08:50
「グロッセナじゃあ客が来ないだろう」
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 この店は内装からして大衆的ではなく、戦闘種の街にはそぐわないセンスの良さだ。
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「そうねえ、やっぱり場所に合った商売が一番よね」
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 素晴らしいコース料理を二人で平らげ、お茶のお替わりが運ばれた。
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「そっちのビジネス計画はどうなってるの?」
2017/12/05 08:52
「アルバーに任せているよ。あいつは専門だし、張り切っていた」
2017/12/05 08:52
「案によるけどウチにも一枚かませてくれない?」
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 レイキュアは身を乗り出す。チーム・スカーレッドの資金は豊富なようだ。
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「勿論いいよ、アルバーから相談はないの?」
2017/12/05 08:54
「ええ、カノーアが話ぐらいは聞いてるかもね。彼女にもアルバーを手伝わせるわ」
2017/12/05 08:55
「分かった」
2017/12/05 08:55
 カノーアの方がアルバーよりこの街での暮らしは長かった。良い相談相手になってくれるだろう。
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登場人物紹介

シュン/主人公の若者。チーム・ランツィアのリーダー。北城塞グロッセナでランキングトップ、最強の称号を手に入れた。

マヤ/シュンの恋人。同じ孤児院で幼い頃からシュンと共に過ごしていた。

アルバー/ランツィアのサブリーダー。商家の出で戦うが経理、総務的な仕事もこなす。

ブレイソン/ランツィアのサブリーダー。天才肌、軍人の家系に反発して家を出た。スキルと強さを求めている。

レイキュア/チーム・スカーレッドの隊長。女ばかりのチームを率いる女傑。シュンが街に来た頃からの知り合い。

カノーア/スカーレッドの副隊長。雷撃の才能がある。涙もろい。

ジェンヌ/チーム・バウザーナでリーダー格の将軍を自称。父親は大企業の経営者。最強称号への執念を見せる。シュンをライバル視しているが……。

リスティ/子供ばかりの四人でチームを作っている。

セバスティ/チーム・エスプロジオーネの頭(ヘッド)。

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