第九話 「城塞都市サンドリオ」02

文字数 1,441文字

 フィオーレの扉を開けると、なんとレイキュアがホール仕事をしている。
 店は混雑していた。
2017/12/04 17:12
「あら、お二人そろって。いらっしゃい」
2017/12/04 17:12
「へえ……、店に出るなんて最近じゃあ珍しな?」
2017/12/04 17:12
「ええ、何人か寝込んじゃっててね。怪我人もいるし人手不足なの。ウチはあんな乱戦の経験なかったから。さあ、座って。ビールでいい?」
2017/12/04 17:13
「ああ」
2017/12/04 17:13
 シュンたちはカウンターに近い小さなテーブル座る。
2017/12/04 17:13
「人手が足りないとはいえ、隊長が酒場を手伝ったりするんですね」
2017/12/04 17:13
 アルバーが感心しているような表情で言う。
2017/12/04 17:14
「スカーレッドはあくまで兼業戦闘種なんだ。これも大切な仕事だな」
2017/12/04 17:14
 彼女たちはそうやって戦闘種と店の手伝い、事務などを兼業しながら将来の道を模索するのだ。
 
 赤いエプロンを付けたレイキュアがビールジョッキを二つ運んで来た。
 ついでに料理も何品か注文する。
2017/12/04 17:15
「お待たせ、シュンも今度、手伝ってよ」
2017/12/04 17:15
「今の俺がホールに出たら客が逃げるだろ」
2017/12/04 17:15
「そんな事ないわよ」
2017/12/04 17:15
 そう言うレイキュアはカウンターに出された料理や飲み物を客のテーブルに運び、一言二言、客と談笑を交わしている。
2017/12/04 17:16
「まあ、レイキュアが店にいれば客は喜ぶな。俺も昔、何度かここを手伝った事があるよ」
2017/12/04 17:16
「え~っ、シュンがですか?」
2017/12/04 17:16
「ああ、お前と会う一年ぐらい前の話さ」
2017/12/04 17:16
 レイキュアに飯を食わせてもらい、スカーレッドの事務所に転がり込んでいた頃、一宿一飯の恩義とばかりに、シュンは時々この店を手伝っていたのだ。
2017/12/04 17:17
「だから新しいビジネスでこんな店をやるのなら、俺も手伝えるよ」
2017/12/04 17:17
「そうですねえ……、男ばかりのランツィアで、こんなお店を繁盛させるのは難しいですかねえ……」
2017/12/04 17:17
 アルバーは難しい顔で言うが、確かにその通りだった。
2017/12/04 17:18
「そりゃ、そうだ。スカーレッドには花があるって、エージェントのジュリーザ言ってたよ。つまりウチには花がないって訳だ」
2017/12/04 17:18
「そのビジネスの話ですが、ジュリーザに相談しても構いませんか?」
2017/12/04 17:18
「勿論さ、ウチのエージェントなんだしな」
2017/12/04 17:18
 料理を一通り平らげて、ビールを何杯かお替りする。
 
 客が引け始め手すきになったレイキュアが、カウンターの椅子を動かし、ビールグラスを持って隣に座った。
2017/12/04 17:19
「聞いたわ、アルバー。カノーアのお見舞いに来てくれたんだって? 悪いわね」
2017/12/04 17:19
「いえ……」
2017/12/04 17:19
「事務所に下りる事もできたんだけどね。大事をとって寝かせておいたみたい。カノーア、綺麗な花束を貰って感激していたって」
2017/12/04 17:20
「なんだ、花なんて持ってったのか?」
2017/12/04 17:20
 アルバーはシュンと違って気遣いのできる男だった。
2017/12/04 17:20
「ええまあ、見舞いですし……」
2017/12/04 17:20
「具合はどうなんだ?」
2017/12/04 17:21
 シュンはレイキュアの方に向き直る。
2017/12/04 17:21
「明日には大丈夫よ。だけど外の仕事は念の為、お休みね。他の倒れた隊員とここを手伝ってもらうわ」
2017/12/04 17:22
「アルバー、明日もここに顔を出せよ」
2017/12/04 17:22
「そうですね」
2017/12/04 17:22
 アルバーは小さく頷く。今後の事など、二人で話し合ってくれればシュンとしても助かるのだ。
2017/12/04 17:22
「ねえ、シュン。明日の予定は?」
2017/12/04 17:23
「普通に花のないベヒモス狩りだよ」
2017/12/04 17:23
「よかったらサンドリオに一緒に行かない?」
2017/12/04 17:23
「なんか用事でもあるの?」
2017/12/04 17:23
「買い物よ、それとこの前のビジネスの話。色々見て回りましょうよ」
2017/12/04 17:23
「そうだなあ……」
2017/12/04 17:24
 サンドリオに行くのは久しぶりだった。
 一度この街でどんな商売ができるかとの視点で、あの街を見てみるのも良いかもしれないし、仕事がらみで断る理由もない。
2017/12/04 17:24
「分かった」
2017/12/04 17:24
「シュン、明日は僕が若いメンバーの面倒を見ますよ。サンドリオでビジネス用の見学をしてきて下さい」
2017/12/04 17:25
「頼む」
2017/12/04 17:25
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登場人物紹介

シュン/主人公の若者。チーム・ランツィアのリーダー。北城塞グロッセナでランキングトップ、最強の称号を手に入れた。

マヤ/シュンの恋人。同じ孤児院で幼い頃からシュンと共に過ごしていた。

アルバー/ランツィアのサブリーダー。商家の出で戦うが経理、総務的な仕事もこなす。

ブレイソン/ランツィアのサブリーダー。天才肌、軍人の家系に反発して家を出た。スキルと強さを求めている。

レイキュア/チーム・スカーレッドの隊長。女ばかりのチームを率いる女傑。シュンが街に来た頃からの知り合い。

カノーア/スカーレッドの副隊長。雷撃の才能がある。涙もろい。

ジェンヌ/チーム・バウザーナでリーダー格の将軍を自称。父親は大企業の経営者。最強称号への執念を見せる。シュンをライバル視しているが……。

リスティ/子供ばかりの四人でチームを作っている。

セバスティ/チーム・エスプロジオーネの頭(ヘッド)。

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