第十一話 「西への大進行」04

文字数 1,620文字

 キャンプではギルドのサービス部隊と護衛の戦闘種たちが、食事や資材などを荷馬車から降ろし、ランツィアとスカーレッドの待機していた人員が作業を手伝っている。

2017/12/05 15:52
「アルバー、こっちの様子はどうだった?」
2017/12/05 15:52
「特になしです。静かなものでした」
2017/12/05 15:53
「そうか」
2017/12/05 15:53
 それからギルドが提供する昼飯が配られた。
 皆がサンドイッチをパクつき、それをぬるいお茶で喉に流し込む。
2017/12/05 15:59
「アルバー、午後はお前もこっちに加わってくれ」
2017/12/05 15:59
「分かりました」
2017/12/05 15:59
「ブレイソン、体力とスキルを消耗したメンバーを下がらせろ。待機部隊の指揮ができるヤツも一人抜け」
2017/12/05 16:00
「はっ」
2017/12/05 16:00
 シュンは食べて飲みながら指示を飛ばす。
 食事が終わり短い休憩の間、皆が腰を下ろす。
 レイキュアがシュンの隣に座った。
2017/12/05 16:00
「ウチは二人休ませるわ。増員はできない。これが限界よ」
2017/12/05 16:01
「あの戦いじゃあしょうがないよ。アルバーが加われば戦力は上がる」
2017/12/05 16:01
「ごめんね」
2017/12/05 16:01
「気にするな」
2017/12/05 16:02
「助かったぜ、シュン」
2017/12/05 16:02
 チーム・エスプロジオーネの頭(ヘッド)、セバスティが傍らに来て礼を言う。
2017/12/05 16:02
「余計なお世話だったかな?」
2017/12/05 16:02
「いや、突撃陣形で後方突破もできたがな。初日から危険は犯したくないよ」
2017/12/05 16:03
 この男も慎重で仲間想いの戦闘種だった。
2017/12/05 16:09
「こんな大群とやるのは初めての経験だ。注意しなきゃあな……」
2017/12/05 16:10
「ああ、同感だ」
2017/12/05 16:10
 午後にはもう一度、同じような攻撃を繰り返す。
 全員で広がり群からはぐれてこちらに向かうベヒモスを狩りながら進む。
 群が近くなり戦闘種たちは中心に集まり塊となってベヒモスの軍勢と激突した。
 今回の攻撃はギルドからの指示もあり控えめだ。
 そして再び撤退を告げるコルノの甲高い音が響いた。
2017/12/05 16:10
「他の戦闘種たちを助けながら撤退しろ!」
2017/12/05 16:11
 シュンは近くにいるアルバー向かって叫んだ。
2017/12/05 16:11
「はいっ!」
2017/12/05 16:11
「俺はちょっと遊んでくる」
2017/12/05 16:11
 シュンは飛行して西城塞に向かう。
 眼下の群れに攻撃を放ちつつ大物のベヒモスを探すが目に付くのは中から下ばかりだ。
 西城塞ラヌゼルダは門を固く閉ざして、城壁上から弓矢の攻撃を散発的に続けていた。
 もう矢も消耗しきっているのだろう。
 
 シュンは北に引き返しつつ落伍者を探したが撤退は上手くいっていた。
 行きがけならぬ、帰りがけの駄賃とばかりに、シュンは低空に下りて何体かのベヒモスを討ち、安全を確認して徒歩に切り替えた。
 
 拠点には天幕が張られて文字通りのキャンプが設営されいた。
 夜営用の松明の準備もされている。
 
 すでに日は傾いていた。
 サービス部隊が荷馬車に篝火(かがりび)を焚く台を乗せて前線に移動を始める。
 彼らは夜通し火を焚いてベヒモスを警戒するのだ。
 
 サービス部隊は引退した年配の元戦闘種などで構成されていて、地味だが心強い縁の下の力持ちだった。
 
 まだ初日だが負傷者が出なかったのは何よりだ。
2017/12/05 16:12
「シュン、明日は待機部隊から何名か攻撃に加えてはどうでしょうか?」
2017/12/05 16:12
 アルバーが差し出したサンドイッチを受け取って、シュンは少し考えた。
2017/12/05 16:12
「そうだな……、いいだろう。ここまで危険が及ぶようなら、飛べるヤツが駆けつければいいしな」
2017/12/05 16:13
「はい」
2017/12/05 16:13

 シュンは敷物の上に座り込み、サンドイッチを食べお茶を飲んだ。
 皆、疲れ切っていて口数は少なく、黙々と食事を腹に詰め込む。
 
 夜は天幕の下で毛布に包(くる)まり泥のように眠った。


 翌日も同様の攻撃が繰り返される。ただし状況は少し変わっていた。

2017/12/05 16:13
「敵の数が少ないな……」
2017/12/05 16:13
「はい、今日は南側からの攻撃が牽制なっているようです」
2017/12/05 16:13
 シュンはアルバーと共に剣を振るいながら周囲を見回す。
 一日遅れで南を経由した東城塞の部隊が攻撃を仕掛けると、ギルドの担当官が言っていた、
 西の先に砂塵が見える。他の軍団も激しい戦いを繰り広げているようだ。
 
 
 二日に渡った激戦が終わり、第一波のシュンたちは街に引き上げた。
 ここまで消耗しては、また寝込むヤツらも出そうだった。
 明日は他の戦闘種たちの部隊が、同じように攻撃を加える予定だった。
2017/12/05 16:14
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登場人物紹介

シュン/主人公の若者。チーム・ランツィアのリーダー。北城塞グロッセナでランキングトップ、最強の称号を手に入れた。

マヤ/シュンの恋人。同じ孤児院で幼い頃からシュンと共に過ごしていた。

アルバー/ランツィアのサブリーダー。商家の出で戦うが経理、総務的な仕事もこなす。

ブレイソン/ランツィアのサブリーダー。天才肌、軍人の家系に反発して家を出た。スキルと強さを求めている。

レイキュア/チーム・スカーレッドの隊長。女ばかりのチームを率いる女傑。シュンが街に来た頃からの知り合い。

カノーア/スカーレッドの副隊長。雷撃の才能がある。涙もろい。

ジェンヌ/チーム・バウザーナでリーダー格の将軍を自称。父親は大企業の経営者。最強称号への執念を見せる。シュンをライバル視しているが……。

リスティ/子供ばかりの四人でチームを作っている。

セバスティ/チーム・エスプロジオーネの頭(ヘッド)。

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