第十話 「日々の仕事」02

文字数 2,044文字

 翌日、荒野の先で森が目隠しにならない、空が見渡せるの程度の手前、岩が点在する場所にシュンたち九名は陣取った。
 アルバーとグンソンが交代で【探査】を使い、ペリュトンの出現に備える。
 シュン以下の三名が岩にもたれ掛かってロングボウの射手となり、他の者は敵が低空に下りて来た場合、剣を抜き接近戦に備える構えだ。
 
 可笑しな事をやっていると思ったのか、森へ向かうスカーレッドの隊列から馬に乗ったレイキュアとカノーアが離れてこちらにやって来た。シュンは二人に状況を説明する。
2017/12/05 13:48

「なんでまた、こんなクエストなんて受けたの?」

2017/12/05 13:48
 レイキュアは呆れたように言う。
2017/12/05 13:48
「いや、まあ、思いつきと言うか、サンドリオに行った時、公園で久しぶりに空を見上げたような気がしてね」
2017/12/05 13:49
「そんな理由? シュンはロマンチストねえ。現実主義者になって稼がなきゃ」
2017/12/05 13:49
「分かった、分かった。それに少しだけどポイントも付くよ」
2017/12/05 13:49
「そう、それじゃあ、頑張ってね」
2017/12/05 13:50
「おう、見事ペリュトンを仕留めるぜ!」
2017/12/05 13:50
 カノーアが微笑み軽く手を上げて合図すると、アルバーも同じようにして答えている。
 二人は言葉を発しないで挨拶を交わしている。
2017/12/05 13:50
「来ましたね、とりあえず一羽です」
2017/12/05 13:50
 暫く待つとアルバーが客の来訪を告げ、空に飛行物体の点が見えた。
 シュンら三人の射手は矢の回収と、最短の飛距離を考えて垂直に近い射角で構える。
2017/12/05 13:52
「第一波、撃てっ!」
2017/12/05 13:52
 アルバーの指示で一の矢が放たれ、垂直に近く上昇して行く。【飛行】のスキルで速度が上がり微妙に方向が誘導されたが矢は外れた。
2017/12/05 13:53
「次、二波を撃てっ!」
2017/12/05 13:53
 次の矢も外れてシュンは最後の矢を放つが、それもまた外れた。
2017/12/05 13:53
「ちっ、ダメか……」
2017/12/05 13:53
 あらかじめ決められている若いメンバーが矢を回収に走る。手順は既にアルバーと打合せ済だった。
2017/12/05 13:54
「なかなか上手くいかんもんだな……」
2017/12/05 13:54
「これだれの長距離で、しかも上空に向けて矢を放つのは初めての経験ですからね」
2017/12/05 13:54
 地上の獲物に向けて矢を放つのはせいぜい五十メートルまでの距離だった。
2017/12/05 13:55
「次は獲物の手前で矢が最速になるようにアシストしましょう。今のはあまり上手くは行きませんでした。シュンは飛行と誘導のどちらかに集中してもらえますか?」
2017/12/05 13:55
「ああ、俺は誘導に集中しよう。当たらなければ意味はないからな」
2017/12/05 13:56
「はい」
2017/12/05 13:56
 アルバーは他のメンバーたちに指示を出す。
 
 
 少し待つと新たなペリュトンが姿を現す。
 次の攻撃は一の矢と、シュンの放った三の矢が見事に命中する。
 矢が刺さったままペリュトンは落下し、メンバーが矢とレアクリスタルの回収に向かった。
2017/12/05 13:56
「コツが掴めたよ。これならいけそうだ」
2017/12/05 13:57
「コツが掴めたよ。これならいけそうだ」
2017/12/05 13:57
 回収されたレアクリスタルをアルバーが【鑑定】のスキルで読む。
2017/12/05 13:57
「やはり【飛翔】はありませんね。【移動】と【拘束】、【衝撃】です」
2017/12/05 13:58
「まあ、噂の話だしな……」
2017/12/05 13:58
 北からジズは現れず、次は先に逃がしたペリュトンが南からこちらに戻って来た。
 シュンたちは岩の反対に回り攻撃に備える。
 
 次に放れた三連射は全矢が見事に命中する。
 このペリュトンにも【飛翔】のスキルはなかった。
2017/12/05 13:58
「まあ、こんなもんか……、初日で二羽も仕留めたのはツイてたな。アルバー、どう思う?」
2017/12/05 13:59
「はい、残りは二羽ですが、もう会敵するのは難しいかもしれませんしね」
2017/12/05 13:59
「そうだなあ……」
2017/12/05 14:00
 北門に戻ると、ちょうどチーム・スカーレッドも帰って来ていた。
 ファンと言うか、ギャラリーのような人垣に囲まれている。
 露出度の多い衣装を眺める助平な野郎もいるが、意外にも少女の数が多いのだ。
 隊員たちをお姉さまなどと呼びつつ、小振りな花束やプレゼントなどを渡し、隊員たちは気軽にサインに応じている。
2017/12/05 14:00
「シュン」
2017/12/05 14:01
 レイキュアが人垣をかき分けてこちらに走って来た。
2017/12/05 14:01
「どうだった?」
2017/12/05 14:01
「ペリュトンを二羽やったよ。【飛翔】のレアクリスタルは持っていなかった。普通だったな」
2017/12/05 14:01
「そう、やっぱり噂なんて当てにならないわねえ」
2017/12/05 14:01
「まあな、そっちは相変わらず凄い人気じゃないの?」
2017/12/05 14:02
「まあね、ランツィアだって人気チームよ」
2017/12/05 14:02
 シュンやランツィアにもファンは多いのだが、このように帰り待ちの人垣はできない。
 ウチには玄人のファンが多いのだと、シュンたちは自分を慰めるのだ。
 シュンとアルバーはペリュトンのレアクリスタルを持ってギルドに入り、ミレリアのいる窓口へ行き状況を説明する。
2017/12/05 14:03
「ジズの素材は滅多に手に入らないので貴重なのよ。すぐに回収の手配をするわ」
2017/12/05 14:03
 確かにあの緑の羽根は装飾品として需要がありそうだった。
2017/12/05 14:03
「仕留めたのは二羽ね。どうする? 続ける?」
2017/12/05 14:03
 四羽目撃されているので後二羽が残っている。
2017/12/05 14:04
「いや、初日に上手く行ったけど、次は分からない。割に合わないかなあ……、もしまだ、やって来るならクエストを受けるけど」
2017/12/05 14:04
「そう、悪いわね。暫くは様子見ね」
2017/12/05 14:06
「ああ」
2017/12/05 14:06
 ベヒモス、この場合はジズだが彼らにも意思がある。
 仲間が殺(や)られれば危険地帯だと判断して、もう城塞には近づかないかもしれなかった。
2017/12/05 14:06
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登場人物紹介

シュン/主人公の若者。チーム・ランツィアのリーダー。北城塞グロッセナでランキングトップ、最強の称号を手に入れた。

マヤ/シュンの恋人。同じ孤児院で幼い頃からシュンと共に過ごしていた。

アルバー/ランツィアのサブリーダー。商家の出で戦うが経理、総務的な仕事もこなす。

ブレイソン/ランツィアのサブリーダー。天才肌、軍人の家系に反発して家を出た。スキルと強さを求めている。

レイキュア/チーム・スカーレッドの隊長。女ばかりのチームを率いる女傑。シュンが街に来た頃からの知り合い。

カノーア/スカーレッドの副隊長。雷撃の才能がある。涙もろい。

ジェンヌ/チーム・バウザーナでリーダー格の将軍を自称。父親は大企業の経営者。最強称号への執念を見せる。シュンをライバル視しているが……。

リスティ/子供ばかりの四人でチームを作っている。

セバスティ/チーム・エスプロジオーネの頭(ヘッド)。

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