第十話 「日々の仕事」04

文字数 1,532文字

 突然、川の中心部の水面が泡立つ。
2017/12/05 14:22
「全員川から離れろ! 何か出るぞ!」
2017/12/05 14:22
 シュンの叫びに全員が川から距離をとって身構える。
 姿を現したのはナーガだった。
 大蛇の頭部に人間の顔が貼り付き、小さな人と同じ鱗に覆われた腕が生えている。
 成長すると人間の姿に近く変化すると言われていたが、シュンはまだ見た事はなかった。
 ナーガは戦闘種の集団を一瞥してから、興味がなさそうに水の中に戻り上流へと泳いで行った。
2017/12/05 14:22
「そろそろ帰るか……、雨も止みそうだしな」
2017/12/05 14:23
「ええ、全員、引き上げの配置に着け。帰るぞ!」
2017/12/05 14:25

 アルバーがメンバーたちに叫び、帰途の隊列を組む。

 先頭はシュン、後方にブレイソン。アルバーとカノーアが川への側面に並びリヴァイアサンを警戒する。
 川から離れ荒野を歩くと雨は完全にあがった。
 シュンは晴れ間が見え初めた空を見上げる。
 結局あの日以来、ジズは姿を見せなくなっていた。


 シュンはギルドへの手続きをアルバーたちに任せ、一人でスカーレッドの事務所に向かう。
 カノーアの言った通り、レイキュアは机に座り書類と格闘していた。

2017/12/05 14:25
「今日は助かったわ」
2017/12/05 14:25
「いや、こちらこそだ。報酬は頭割りでそっちにも渡すから」
2017/12/05 14:25
「なんだか悪いわね」
2017/12/05 14:31
 シュンはソファーに座る。
2017/12/05 14:32
「いや、今日来た連中は積極的に戦いたいのかな?」
2017/12/05 14:32
「積極的って訳じゃないけれど、雨の日にも出たいって思っていた隊員も多かったのよ。ただ……」
2017/12/05 14:32
 レイキュアは書類を机に置いて話を続けた。
2017/12/05 14:33
「スポンサーが色々言っているって前に話したじゃない?」
2017/12/05 14:33
「ああ」
2017/12/05 14:34
「カノーアは自分が個人ランクを上げれば、もっと積極的に戦えなんて、もう言われなくなると考えているみたいね」
2017/12/05 14:34
「そうか、それでか……」
2017/12/05 14:34
 アルバー、ブレイソン共にランクは十五位前後まで上がっている。
 カノーアも二十位以内に入って来ていた。
2017/12/05 14:35
「スカーレッドの戦い方だと、なかなかポイントが付きのベヒモスには会えないしね」
2017/12/05 14:35
「レイキュアも、もっと戦えば?」
2017/12/05 14:36
 彼女は、今は十台後半に順位が落ちてきていた。
2017/12/05 14:36
「うん、ポイント狙いで森の奥に入って、やってはいるんだけどね。こっちの仕事も多いしね」
2017/12/05 14:37
 そう言って書類の束を掲げて見せる。そんな事を話しているとカノーアたちが帰って来た。
2017/12/05 14:37
「じゃあ、俺はこれで……」
2017/12/05 14:37
 シュンはソファーから腰を浮かせる。
2017/12/05 14:38
「シュン、後で飲みましょう。いつもの店で待ってて」
2017/12/05 14:38
「仕事はいいのか?」
2017/12/05 14:38
「ええ、明日もやるし大丈夫」
2017/12/05 14:38
「それじゃあ後で」
2017/12/05 14:38
「うん」
2017/12/05 14:39
 シュンはランツィアの事務所に戻ってアルバーからの報告を受けた。
2017/12/05 14:39
「【飛翔】のスキルが少しありましたよ」
2017/12/05 14:39
 水棲のリヴァイアサンが【飛翔】を持っているなど、皮肉以外の何物でもないが、事実なのだから仕方がない。
2017/12/05 14:39
「コンテナ持ちになるメンバーもそのうち現れるかもしれないので、持って帰りました」
2017/12/05 14:40
「ああ、それでいい」
2017/12/05 14:40
 事前にアルバーとはそのように打ち合わせていた。
 今、ランツィアでの【飛翔】持ちは、シュン、アルバー、ブレイソンが実際に飛行できるレベルだ。他はまだコンテナが小さく短時間空中に浮きあがる程度であった。
 
 解散しシュンは濡れた服と靴を替え、いつものバーに向かった。
 一人で飲んでいると少ししてからレイキュアが現れる。
2017/12/05 14:40
「お待たせ」
2017/12/05 14:41
「いや、カノーアたち、何か言ってた?」
2017/12/05 14:41
「また是非やりたいって迫られたわ」
2017/12/05 14:42
「そうか、うちは構わないよ」
2017/12/05 14:45
「雨の日にあの娘(こ)たちだけで出すのは心配だけど、ランツィアが預かってくれるなら安心ね」
2017/12/05 14:45
「レイキュアは来ないのかい?」
2017/12/05 14:46
「雨の日は事務仕事と決めているの。そんな時しかできないしね」
2017/12/05 14:46
「それはそうだな」
2017/12/05 14:46
 二人は今後の事について話し合う。
 カノーアの気持ちは尊重して、強いベヒモスとの戦いをランツィアも支援する事にした。
2017/12/05 14:46
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登場人物紹介

シュン/主人公の若者。チーム・ランツィアのリーダー。北城塞グロッセナでランキングトップ、最強の称号を手に入れた。

マヤ/シュンの恋人。同じ孤児院で幼い頃からシュンと共に過ごしていた。

アルバー/ランツィアのサブリーダー。商家の出で戦うが経理、総務的な仕事もこなす。

ブレイソン/ランツィアのサブリーダー。天才肌、軍人の家系に反発して家を出た。スキルと強さを求めている。

レイキュア/チーム・スカーレッドの隊長。女ばかりのチームを率いる女傑。シュンが街に来た頃からの知り合い。

カノーア/スカーレッドの副隊長。雷撃の才能がある。涙もろい。

ジェンヌ/チーム・バウザーナでリーダー格の将軍を自称。父親は大企業の経営者。最強称号への執念を見せる。シュンをライバル視しているが……。

リスティ/子供ばかりの四人でチームを作っている。

セバスティ/チーム・エスプロジオーネの頭(ヘッド)。

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