夜歩く悪魔(3)

文字数 1,401文字

 下丸子隊員が外泊した翌日、純一少年の処に2人の訪問者が訪れている。

「純一君、その節以来ですねぇ……」
 そう純一少年に声を掛けたのは、2人の訪問者のうちの若い方、小山刑事……。彼は要曜子ちゃん誘拐事件で、彼の取り調べを行った警視庁の刑事だ。
 勿論、若いと言っても、小山刑事はもう定年にカウントダウンが始まっている年齢に見える。しかし、もう一人に至っては、既に現役を引退しているとしか思えない、ゴマ塩頭に角刈りの男……。こちらは、純一少年の知らない顔だった。

「今日は何の疑いですか?」
「何の疑いですか……とは、君には(やま)しいことでもあるのですか?」
「無いこともないですけどね……」
「相変わらずですねぇ、君は……。ま、君は何を言っても怒ることが無さそうなので、僕も直接本題に入らせて貰いますよ……」
 小山刑事は、口元に笑みを浮かべ、彼の言う本題へと入って行った。

「昨日の晩、本厚木で殺人がありましてね、その場にいたのが、君だと云う通報を受けたんですよ。そして、君らしき人物は、直ぐ現場から逃げ去ったと云うんです……。で、犯人は君ですか?」
「小山刑事も相変わらずですね……。
 僕は人殺しなんかしていませんよ。
 それに、僕は昨日、基地に夜遅くまでいました。目撃者だっていると思います。今朝も基地にいました。その間は電車なんか動いていません。タクシーでも何でも調べてください。僕は何も乗っていませんから……」
 純一少年は、現場で自分を名指し出来る目撃者は下丸子隊員しかいないと思いながら、小山刑事の話の続きに耳を傾けた。

「では、その目撃された少年は、君では無いと云うのですか?」
「あ、それは、一応ノーコメントです」
「成程……。あ、紹介が遅れましたね。こっちは僕の大先輩で、鈴木刑事と云います」
 鈴木刑事と紹介されたゴマ塩頭の老人は、席を立ち、テーブルをまわって純一少年の前までやって来る。
 純一少年も立ち上がり、鈴木刑事の差し出した右手を掴み握手を返した。

「鈴木傳次郎です。(みな)は鈴傳と呼んでます。宜しく……」
 鈴傳刑事は、純一少年の右手を掴んだまま左手に銃を構え、彼の腹部に銃口を向けている。恐らく事前にポケットに銃を忍ばせて、左手に持っていたのだろう。
 それに対し、純一少年は驚くでもなく、そのまま彼の様子を確かめていた。

 それを見て、鈴傳刑事は銃を収め、笑いながら握手を(おこな)った。
「いや失礼しました。自分で言うのも何ですがね、これでも私は、相手を宇宙人かどうか見破る達人と言われてるんですよ……。まあこれは、言わば反則技なんですけどね。
 宇宙人じゃない場合は、大抵吃驚するか怒って、逃げる様に体を引きます。
 宇宙人でもそうする奴はいるんですがね。
 宇宙人に特有の動きは、バレたと思って攻撃的になる。あるいは、自分はそんなものでは倒せないと平然と逃げない……。
 あなたは後者の方ですな、典型的な……」

 何か言いたそうな純一少年であったが、その前に小山刑事が口を挟んだ。

「だとすると、仮に君が犯罪を犯しても、通常の捜査では立件できないでしょうし、君を捕まえることからして、(そもそも)、不可能なんでしょうねぇ……。
 となると、もうこれは警察の管轄でなく、AIDSの管轄となりますねぇ……」
「小山、俺もそう思うぜ」
 鈴傳刑事はそう言うと、席に平然と戻って、元の場所へと座る。純一少年も苦笑いの様な笑みを浮かべ、自分の席に着いた。
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登場人物紹介

新田純一(要鉄男)


時空を放浪している大悪魔。偶然、訪れたこの時空で、対侵略的異星人防衛システムの一員として、異星人や襲来してくる大悪魔から仲間を護り続けていく。

新田美菜(多摩川美菜)


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属するエリート女性隊員。養父である新田武蔵作戦参謀の命に依り、新田純一の監視役兼生け贄として、彼と生活を共にする。

蒲田禄郎


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊隊長。本人は優柔不断な性格で隊長失格と思っているが、その実、部下からの信頼は意外と厚い。

沼部大吾


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する古参隊員。原当麻支部屈指の腕力の持主。

鵜の木和志


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する隊員。非常識な言動で周りを驚かせることもあるが、銃の腕と熱い心には皆も一目置いている。

下丸子健二


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する隊員。原当麻基地でも屈指の理論派。

矢口ナナ


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する入隊一年目の若手女性隊員。明るく誰とでも仲良くなれる性格。

新田武蔵


対侵略的異星人防衛システム作戦参謀、新田美菜の義父であり、要鉄男を息子の純一と偽って、原当麻基地航空迎撃部隊に配属させる。

小山刑事、鈴木傳吉(鈴傳)刑事


刑事さんたち。小山刑事は警視庁捜査一課の刑事さん。鈴傳刑事は神奈川県警に所属している。

パク郎


下丸子隊員の知り合いの飼い犬。嗅覚は優れているが、誰にでも懐く、番犬としては役に立たない犬。

新田有希


新田純一と美菜の娘。

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