11節
文字数 1,627文字
ただ、いきなり現れた見知らぬ魔女達が危ない奴だということだけは、なんとなく理解した。
「皆さん!
よく分かんないですが、取り敢えず私(とビエラ様)の後ろに退がって!
できるだけ遠くに逃げて下さい!」
「おお!スピカ司祭が護ってくれるぞ!」
「スピカ司祭がいれば怖いものなしだ!!」
(何なの、この女……?
まさかコイツが、あの……!?)
半年前のアークを殺す計画をぶち壊しにした女。話に聞いていただけでどんな女か知らなかったが、この女がそうだとしたら……
花圃のターゲットはアークや農夫達から、スピカへと変わる。
「アンタ達、あの女から始末しなさい!」
取り巻き達が一斉にスピカに向かって攻撃態勢に入る。
それに対してスピカは手を前に突き出し、声を大にして忠告する。
「待ちなさいッ!
あなた達、さっき何が起きたか見てなかった訳じゃないでしょ?」
「……!?」
「私(というかビエラ様)に攻撃すれば、さっきの化け物と同じ目に遭うってことよ。
この世から跡形も無く消える覚悟ができたんなら……かかって来なさいッ!!」
スピカお得意のブラフ!!
実際は”ビエラへの攻撃は全て消し飛ぶ”というものなので、直接殴って来ない限りダメージなど与えられない。
ましてやスピカへ向かって攻撃されようものなら普通にやられる。
だがそんな実情を一切悟らせない堂々たる振る舞い。これには相手も思わずたじろぐ。
「は、早く誰か攻撃しなさいよ!」
「そう言うアンタからやりなさいって!」
「じゃあ”せーの”で、みんな一緒にやりましょ!」
「それ絶対みんなやらないヤツじゃない!!」
魔女と言えど、所詮は金魚のフン。
底の知れない相手を前に怖くて手が出せず、見苦しい押し付け合いを始める。
その隙にスピカはアークにコンタクトを送る。
(飛んでると厄介ね。
アイツら地面に降りて来るようにするから、すかさず押さえて!)
(分かった!任せてくれ!)
手早く意思を交わした後、スピカはアミュレットを手に取り魔女達がいる上空へと投げた。
敵も何か投げ付けられた事に気付き身構える。
「アーク伏せてッ!!
爆発するわッ!!」
スピカの警告をキッカケにアミュレットは光を放ち始める。光量はどんどん増し、今にも暴発しそうだ!
スピカが耳を塞いで地面に伏せる。アークも真似をして身を低くする。
これはマジだ!?
魔女達は大慌てでアミュレットから離れ、地面にうつ伏せになる。
その直後……
[ドォォーーーンッッ!!]
凄まじい轟音が大気を揺らす。
その音量は爆竹や鉄砲の比じゃない。ダイナマイト2、3個分ぐらいか。
魔女達は音に驚き悲鳴を上げて縮こまる。
……だが何か変だ。音は凄いが爆風が伝わって来ない。
恐る恐る目を開けて周囲を確認すると……
「何も起きて……ない?」
「な、何よ!やっぱりこけおどしじゃない!」
安心して起き上がろうとした直前、背中に何かが乗っかかった。
それは後ろから髪を鷲掴むと、力任せに頭を地面に押し付ける。
「痛ッ!!
だ、誰よ!?」
「コイツ……!?
アークの人形!?」
正体に気付いた魔女達だが時既に遅し。もう勝負は付いていた。
押さえ付けられたまま人形達の口から噴出された睡眠ガスを嗅がされ、取り巻き5人はアッサリと昏倒した。
「やるじゃないか、スピカ!
光量も音量も、どっちも少し前よりずっと強力だ!
一瞬ホントに爆発したかと思ったぞ!」
「でしょ?
私も最近特訓頑張ってるからね!」
ハイタッチを交わすアークとスピカ。
その2人を憎らしげに睨むのは、さっきの手に唯一騙されなかった花圃だ。
「信じらんないバカさだわ……!
役立たずのブタ共が……!!」
「コイツらはお前のご機嫌を取る方法ばかり学んで、その他がまるで成長してない。
実力よりも自分に忠実な奴ばかり選んで来たツケだな。」
「私に……!
説教してんじゃねぇよ……ッ!!」