10節
文字数 2,239文字
宇宙に到達し、そして生きて帰還する事です!」
無人機を宇宙まで飛ばす試みが初成功したのがほんの2年前の出来事だったはず。
これもアルタイル教授が総指揮をとっていた訳だが、次はもう有人宇宙飛行にチャレンジしようとしている。天才の向上心の高さには驚かされる。
しかしスピカにお願いしたい事とは何だろう?
そんな高度な試みに力を貸せる事なんて無いと思うが……
「この計画を成功させるにはどうしても必要不可欠な人物がいます。
その人物に計画に参加してもらえるよう、一緒にお願いして欲しいのです。」
「その人物って?」
「”機工技師デネブ”と”医師ベガ”です!」
アルタイルが子供の頃、同じ先生の元で共に学び共に宇宙に夢を馳せた学友。
この2人の協力無くして計画の成功はあり得ない!アルタイルは力強くそう断言する。
確かにコスモスが世界に誇る三賢人が力を合わせれば、どんな不可能も可能にできてしまいそうだ。
それも子供時代を共に過ごした仲であれば、お互いの事をよく理解しあっているはず。チームワークもきっと文句無しだろう。
しかし何故自分1人でお願いしないのだろうか?
「以前もお話しましたが2人とはもう30年近く合っていません。
だから……その……
恥ずかしいんです。改めて会ってお願いするのが……」
「はぁ……?
だとしても、私じゃなくても。」
「僕が言うのも何ですが、どちらも性格に難がありまして……
みんな怖がってお願いするどころか会う事すら拒むのです。
スピカ司祭ならどんな相手でも物怖じしませんよね?」
「私を事何だと思ってます?
猛獣使いじゃないんですよ。ねぇ?」
周りの者に話を振る。
が、猛獣よりもっと危険な奴しかいない事に気付き同意を求める事を止めた。
「お願いします!!
僕がそうだったようにスピカ司祭には不思議と人を惹きつける魅力があります。
あなたの話なら2人も耳を傾けてくれる気がするのです。」
そう言ってくれるのは嬉しいが今はビエラの特訓が最優先だ。
早く巨人をコントロールできるようにならなれば、いつ鉄巨人が再臨するか……
「あッ!そうだ!!」
何かを思い付いたスピカはある条件を呑んでくれたら協力すると申し出た。
その条件とは……
「私とビエラ様をその宇宙船に乗せて下さい。」
「「「「えぇッ!?」」」」
「(ʘдʘ) !!」
「それともうひとつ。
目指す場所は宇宙にいる巨人の元にして下さい!」
なんとスピカは直接巨人の元に行って、力を貸してくれるようにお願いしようと考えたのだ。
意思疎通が図れれば鉄巨人と戦ってもらう事ができるし、ビエラが泣いても無闇に攻撃してこないようにもできる。
全部の問題が一気に解決する!
「初めての有人宇宙船ですよ!?
相当危険を伴いますが……」
「危険?
三賢人が力を合わせたら絶対に成功するんですよね?」
「もちろんです!文字通り大船に乗るつもりで安心して下さい!
ですが……」
成功させる自信はあるものの、初の有人宇宙飛行に女性と子供を起用することに難色を示すアルタイル。いつもの様に顎をさすりながら考え込む。
暫しの熟考の後、顔を上げ意を決して口を開く。
「スピカ司祭とビエラ君が乗るのなら万に一つも失敗できないという、いい意味でのプレッシャーになりそうですね。」
「じゃあ!?」
「僕が貴女を、宇宙に踏み入れる最初の人間にしてみせます!」
アルタイルは契約成立の証にスピカと握手を交わした後、早速計画チームに今の話を伝えて来ると言って意気揚々と去って行った。
アルタイルの姿が見えなくなった後、真っ先に声を荒げたのはアークだった。
「お前バカじゃないのか!?
ちゃんと巨人のところまで行ける保証も無いし、行けたとしても巨人が話の通じる相手かもわからないんだぞ!」
「特訓方法も分からないまま人形とにらめっこを続けるよりは、ずっと進展が見込める可能性が高いでしょ。」
「死ぬ確率はそれ以上に高いだろッ!!
無謀なのもいい加減にしろッ!!」
アークがここまで感情的を剥き出しにするのは初めてだった。そんな彼女を見てスピカは笑みを溢した。
「ありがとね、反対してくれて。
でも、もう約束したから!」
またこの顔だ。自分には神と戦う義務があると言ったカノーと同じ顔。
説得なんて出来そうにない。悔しさを滲ませるアークを慰める様にアルクが割り込む。
「ならせめて、協力できる事が有れば遠慮無く頼って下さい。
見ているだけより幾分心配が和らぎます。」
「言われなくてもガンガン頼りますよ!
2人とも覚悟しててよ!!」
「私も協力します!」
「アスピちゃんもありがとう!
じゃあカノーさんが一人で抜け駆けしない様に見張っといて。
戦う時は『一緒に』だからね。」
「ハイッ!」
最後にスピカはビエラと向かい合う。
「ビエラ様、いつも巻き込んですみません……
でも、ビエラ様が今この世界に来てくれた事はきっと偶然じゃないと思うんです。
力を貸して貰えますか?」
「( ・`ω・´)b」
ビエラにも迷いはなかった。
カノーの前でガンバルという表情を見せたのだから、一緒に戦うという約束は自分の約束でもある。そう表情で語っている。
「よ〜しッ!こんだけメンツが揃えば楽勝でしょ!!
みんなで世界救うわよッ!!」
「٩(。•̀ω•́。)و オオー!!」
「ったく……、この2人には敵わん……」
「同感だ。」
「フフッ、私も。」
ーーーー 第6章『約束』 完 ーーーー