一節 社会 三

文字数 7,667文字

–––––––––ちょうど初めの事件から一ヶ月が経過してしまいました。外国人居住区で起きたこれらの事件に関連性が多くありますが果たしてそれが同一人物なのかは未だ定かではないです。ザッ–––––––ザッ–––––––––––––––さんはどう思いますか。
–––––––––この事件の特徴は死体の状況が大変無惨でありながらも通り魔的殺人を思わせるところにあります。格被害者に繋がりはなく共通の知人もいません。

 今宵は雨が降っている。それも豪雨だ。陽が沈んだ後に分厚い黒雲が空を隠したちどころに雨が降ってきた。ラジオの音が雨音に埋もれる診察室内はいつもより湿気に満たされ黒カビたちが大いに喜び鼻ざわりが埃に似たかび臭い胞子を出している。ガムテープで補強された窓からは水が漏れ出ている。道路の脇の排水溝は水を詰まらせタバコやビニールゴミなどを吐き出している。路地裏にいた人々も商売にならないとふんでか薬で分別がつかなくなった者たち以外はいなくなっている。
「異常をきたしていた霊力の回路はもう完治した。原因はやはり使えない状況下で無理矢理使った一時的な副作用だろう」机に向かい男はカルテを書いている。「にしても、神の穢れを抑制する勾玉なんてすごいものを持っている。おかげでお前さんに触れられるなんておかしな気分になる」
「礼を言う。達者でな」
顔うつ伏せ瞼を閉じてドアの付近で背もたれていた白輝が壁から離れる。
「待て待て」男は片手を出し白輝を静止させようとする。だが、彼女はドアを開け片足を明かりがついてない暗い廊下にもう出している。「お前さんが貸し切っている四階にはステーラが泊まる予定だ。ステーラに会いたくなくてここに来たんだろ。それにこの雨の中で帰るのは知り合いとして抵抗感がある」白輝が振り返ると金髪が頭部からしなやかに動き毛先まで伝わる。「上には子供がいるから私の自室の横にある病床で寝るといい」
「––––––––––」
「後でコーヒーを持って行こう。それともブラックティーがいいか」
「必要ない」
男がドアに顔を向けると白輝はいなくなりちょうど錆びたドアが閉まろうとしていた。金切るような鉄の甲高い音を不意に聞いてしまい男の頬から一つ粒の冷や汗が落ちる。その汗は窓辺から床に落ちる雨粒と同じように床におちて粉々に砕け散った。果てのない罪が収縮する男の瞳の神経に深く根ざしている。たった一人の少女に気まぐれで関わってしまった。それを後悔と名付けることはできない。だが、その出会いを肯定的に捉えることも到底できない。




 「調子はどうだ白輝。飯と約束のコーヒーだ」
明かりがついてない真っ暗な部屋で白輝はベッドに膝を立てて座り壁に持たれている。片手に紙コップに入った二つのコーヒーとラップに包まれた簡素なサンドウィッチをのせてあるトレイを持っている男はドアをそっと閉める。そしてドアの付近にあるスイッチを押し照明をつける。埃が被った蛍光灯のガラス管を通る光はどことなく影がある。
「––––––––––––––」
男はベッドの近くにある二つの椅子のうち一つにトレイを置いてその上にコーヒーを一つ置いた。そしてもう一つの椅子をドアがある面の壁際まで移動させ座った。壁にもたれ「あぁー」と心労思わせる息を吐き出す。医者としての彼の一日は長い。貧民外の人間が受診できる病院は男の知る限りここしかない。なので、当然訪れる人数はかなりのものだ。治療するにしても薬が足らないことや患者たちの金銭が足らないことなんて多々ある。やった分だけの見返りが望めなければ患者が完治する確率も本来の近代医療処方と照らし合わせるとかなり低い。正直、やりがいなんかより疲れの方が目立つ。人の死にも慣れていくし自分がやる意味がどこまであるか皆目見当がつかないのがかなり辛い。だから、彼は一時期の間、機械的に全てをこなしていた。患者が完治する一切の期待を捨て治る見込みがなければ診察はしなかった。
「小戸海と離れたと思えば次は神同士つるんでいるなんてな。どういう経緯で彼らと行動しているんだ」
「–––––––––––」
男はコーヒーを飲む。そして汚い蛍光灯を見上げ息を吐いた。全身の力を抜き明日に力を蓄えたいがどうしても瞳が閉じられない。疲労した彼の眼球の白目はアザのような汚れが目立っている。
「まぁ、人のことを言えた義理ではないな」
「–––––––––––」白輝は瞳だけ動かし砂が詰まったかのように重く動く彼の瞳を見る。「いつまでいるつもりだ」
「……………そうだな」
横降りの鋭角な雨が降り続けている。外は暗すぎて曇天かどうか確認ができない。今宵は何も見えてないがこの街に住む者なら雨が過ぎた後に残るものを知っている。だから、男はこのまま雨が降り続け夜が永劫に続けばいいと思う。
「–––––––。ラジオを持って来い」
「…………………………今の時間はニュースしかないぞ」
男はコーヒーを飲む。そして白輝に顔を向ける。
「それでいい」
「気になることでもあるのか」
「––––––––––––後でお前に訊きたいことがある」
「わかった。少し待っていてくれ」
男は両手を膝につけ腹部に力を入れ脹脛に力を入れる。そうして疲労した体に鞭を打ち立ち上がる。


 ––––––––死体の状態は欠損箇所が多くまた獣が食べた後のような歯形があったんですよね。それってその犯人………と言えばいいのかな。それが食べたことになるんですよね。
 ––––––––いやぁ、それはどうでしょうね。その理屈が通るなら人を食べるほどの大型の肉食動物の情報が出回るはずです。考えれる一つの可能性としては人が被害者を襲い、証拠隠滅のために犬などの身近な肉食動物か雑食動物に食べさせた可能性はありますね。
 ––––––––ですが、噂では死体に付着していた唾液は人に近いDNAがあったそうじゃないですか。
 ––––––––はっはっ。まるで都市伝説のようですね–––––––––––––
「運よく特集が組まれていて良かったな。と言っても最近はこればかりだからな」
サンドウィッチを食べ終えた白輝はコーヒー片手に足先に置かれたラジオを見ている。男は二杯目のコーヒー飲んでいる。
「どういうことだ」
「ニュースの情報をワイドショー風にしているがこれを放送している局は官営のものだ。今の日本の現状は民衆にとっては酷なことが多い。軍事特需がなくなり雇用が激減、返すあてのない借金苦、資本主義経済が生んだ貧富の格差はさらに肥大化した。不平等な社会に暴力で是正を試みる者や雇用がなくなったことにより犯罪をしなくては社会を生きられなくなった者。そしてそういった社会のはみ出しものや不安定な世情に確約された救いを求め始める人間たちを受け入れる数々の新興宗教。とまぁ、上げればキリがない。必然的に怒りの矛先となるのは政府になるがその潮流をそのまま受け入れることはしない。その一環として最近の報道のほとんどはこの目覚ましい怪奇事件だけになっている。彼らにとって外区や外区にいる人間は同情の対象にならなければ情報で知っているだけで現実的な空間ではない。そして、同様に社会不安の元になる悪としても位置付けられている。面白がられていい事件ではないが彼ら彼女らには関係ないだろう。何せ、自分が世界で一番不幸だからな」
男は鼻で笑い唇を横に伸ばす。しかし男の紙コップはもう使えそうにない。瞳は割れたメガネにうつる汚れた蛍光灯に隠れている。
「–––––––––––ダイライの封印を解く際にワクイが利用した物の怪がいる。その物の怪がいた所在はこの貧民外区だったらしい」彼女の脳裏にあの人型の物の怪が浮かぶ。男は思考しながらラジオをただ瞳に写す。「私は奴がそんなものを利用しているとは知らず戦い殺した」白輝は殺す直前に見た穢れた二つの魂の核を鮮明に思い出す。それらにはヒビが全体にはしっており腐った肉がそれらを繋ぎ止めていた。「このラジオの情報は本当か。お前なら被害にあったご遺体をたくさん見てきただろう」
ラジオから笑い声が聞こえる。事実の列挙が終わり彼らの妄想がもう始まっている。
「本当だ。付け加えるなら犬歯などの前歯は確かに肉食獣に近い鋭さがあった。しかし、犬歯以外の歯に言えることだが肉食獣ほど歯が細長くない。さながら進化の過程にいるような何にも振り切れてない歯形だ」
ラジオの声が騒音に思えた白輝は手先から電流を流しラジオを止めた。
「残穢は」
「わからんな。元々、俺がそんなに鋭敏ではないこともあるが人が死に過ぎるこの街ではそういったのが多すぎる。ご遺体につくそれが襲われたせいなのかこの土地で死んでいったものたちの怨念なのか判別ができない」
手にある鼻の下にあるコーヒーの匂いがまるで全身を包んでいるかのように絶えず匂う。喉や舌にこびりつく苦味と渋みと独特な油味があるコーヒーの粒子が肌にこびりつく。そのせいで喉は乾いてないが体がまるで渇いたかのようにコーヒーを欲している。
「物の怪が誰の目にもうつる条件を満たすのはなんだと思う」
白輝が言った。男は立ち上がり隅にあるゴミ箱に潰れた紙コップを捨てる。
「地域性か桁外れの霊力を持っているかだな。もしくは肉体を持っているか」
「––––––やはりそうなるか」
男が体を伸ばすと睡気を誘うあくびが出てきた。視線をコーヒーに下げ熟慮する白輝の横顔を見る。次に蛍光灯に照らされた水滴しか認識できない真っ暗な窓を見る。黒い窓には白衣をきた男の充血した瞳とコーヒーに口をつけた白輝が映っている。コンクリートに猛打する豪雨が石を削る滝の音のように聞こえる。
「にしても意外だな。お前さんがそうも厄介ごとを気にかけるなんて」
「これはそんな程度の話では––––––––––––」自分の口から出た言葉を耳にして白輝の口が止まる。彼女は紙コップを椅子の上にあるトレイに戻し立てた膝に触れるまで深く顔をおとす。「そうだな。私によってどうせこの世界は壊される」
「––––––––––––」
白輝は自身を語る言葉を持たない。だから、彼女を見る多くのものは彼女の姿体や振る舞いで彼女を知ろうとする。そんな個人の主観に委ねられた見方しか存在しないのに他人が彼女に対する印象に大きな違いはない。なぜなら、彼女を見るものは大概にして自身の罪を彷彿してしまうから。男は雷神たちや白輝を見ていると自分も力があればこの世界をきっと壊そうとしていただろうと思ってしまう。そう、きっと思っていた。思ってしまっていた。だから彼は自分が弱者であって良かったと思う。
「………明日の朝にまた飯を持ってくる」
「–––––––––––––––––」
雨が降りそそぐ。ゴミ山には虫が湧き出て腐乱臭が彼らのハリボテの住居を覆う。力のない少年たちの住居は積み上がったゴミの上にトタン板を被せただけの場所だ。全ての雨に当たることはないが濡れた地面に接する足や臀部から次第に体温が奪われていく。飢えや寒さが身体的に彼らを追いこみさらには誰も近くにいない孤独があかりのない絶対的な闇の中にいる彼らの心を疲弊させる。空腹を紛らわすためにビニールを噛むものや爪を齧るものがいる。雨は降って流れてやがて空に向かい消えていくが雨が降った後に増える地上のあるものは長い間残り続ける。闇はいつか消え雨は全てを流さない。地上にあるものはあるのだから留まり続けるしかない。誰もが無関心なのだからそれはずっと野晒しになる。
 廊下から靴が慌ただしく廊下を蹴る音が聞こえる。乱れた息が聞こえた途端にドアが開く。白輝はすぐに顔をあげ部屋を開けたものを見る。
「急患だ。手当を頼む」
「どれ見せて–––––––」
「そいつに触れるな」
鼓膜を刺す白輝の声に男の足が止まった。腕から血を出している男を背負っている男は足を止めた医者に必死に言葉を吐く。
「何してる!早く見てくれ!」
金糸を宵の瞳に宿らせた白輝が背広を着た二人の男を見ている。背負っている方には問題がない。あるのは腕から手先に血が垂れ流れている五十代くらいの男だ。その男からはずっと頬から汗がおちている。二人とも全身が雨に濡れているためどのくらいの発汗量かは定かではないが室内の湿度が高くなり生臭い汗の臭いでもう満たされている。男の腕から黒色を帯びた粗雑な紫色から広がり周囲には偽紫線が断続して浮き上がっている。
「その触穢はどこからもらった」
「何訳わらんねぇこと言ってんだ。早く治療をしてくれ」気を吐く彼と白輝の瞳が合う。今ままで見てきたどの輝きにも類せない黄金に彼は恐慄する。昏くも壮麗にも輝く瞳はあまりにも神聖でありながら死を感じさせる絶対的な闇がある。太陽の輝きが瞳を焦がしたかのように彼の瞳や顔は本能的に顔を下げる。しかし背中で弱々しくなっていく心音を肌身で感じる彼はそれでも口を閉ざさない。「お願いだ。ここの付近には病院がない。今すぐ治療しないと–––––」
「ここで触れるのがダメなだけだ。地下の部屋まで運んでくれ」
彼は息を呑み顔を上げ涙ぐんだ瞳で医者を見る。
「ありがとうございます」
考える間もなく心から出た謝辞の言葉だった。
「完治してから感謝してくれ。地下に治療室がある。早急に行こう」
医者は重い瞼を何度も上下に動かしながらいつもより足を意識して動かし彼らの横を過ぎ廊下を歩く。眠ることを期待していた体を意識的に覚醒させていく。振り向き彼らがついてきているのを確認したら男の容態からわかる情報を頭の中で反復させ今できる最善の治療を模索していく。医者が顔を前に向ける。途端に切り裂く風が顔を過ぎ目を閉じさせる。医者の足が無意識のうちに止まった。
「ここの壁を壊すがいいか」
「はぁ?何を言っ………………」
瞳を開いた先には自身の首を掴む一歩手前で止まった手があった。廊下の明かりはない。先程の部屋から漏れ出る光のみが曇天に閉ざされた深い闇を辛うじてぼかしている。瞳が闇に塗り潰される状況下でもその手の爪は獣のように冴えた鋭い光を医者の喉元で反射させている。医者はその奥にある油のような質感がある生々しい赤い瞳を前に息を吸うことを忘れた。しかしそれは恐怖からではない。全容は闇の中に紛れ掴めない。しかし、男は一瞬にして––––––。
「そんなはず」
逃げ惑うかのような掠れた声だった。
「–––––––––––––」襲撃者の手首を掴み攻撃を抑えていた白輝が動く。「できれば生きて捉える。無理なら死んだ後に解剖してもらう」
若い男が銃をすぐに構える。瞳孔が収縮し息が乱れている。
「二人とも下がってください」
白輝の足元に電流がはしり青い閃光がはしる。瞬間に壁が壊れる音が響く。電流の光に視界を奪われていた二人はどしゃぶりの雨が入り込む瓦礫だらけの廊下を朧気な視界で見ている。医者は視界が明瞭になるとすぐに壊れた壁から外の様子を見る。しかし光子が無さ過ぎる今宵では時折刃物が光を反射させるような鋭い光の線しか見えない。必死に瞳を見開こうとも道路に溜まった水の水面が激しく揺れる音しかわからない。
「治療をお願いします」
横を振り向く。銃を持つ彼の手元や足が震えている。だが彼は決して背負った男を落とさないように懸命に立っている。泣き出しそうな瞳を瞼で抑え一糸の希望をどうにか捨てずにいる。男は外にいる二人に顔を向けるがすぐに彼らに振り向く。
「彼女に任せば大丈夫だ。急ぐぞ」
彼は強く頷き固唾を飲んだ。
 排水溝の容量を遥かに超えた雨水が道の一帯を覆っている。足元はぬかるみにとらわれるようかのように重くそして臭い。浮き出た生ゴミやビニールゴミなどが流れている。白輝の瞳には襲撃者の穢れが映っている。通常の視界では今宵の帷に隠され姿の一切が見えない。なので普通は互いに姿が見えないはずである。心部を射抜く正確な突きを白輝は手の甲で相手の拳の内側に重ね外に弾く。白輝の足が一歩踏み出した途端に相手は後退し距離をとる。
 一体どうなっている。どうして私の挙動に敏感に気づく。それに–––––。
金糸が放射線状に広がる瞳は体にとり憑いている穢れを映す。姿態はだらりとし戦う気力を感じさせていないが明確な殺意がある。狂気的な赤い瞳には生気のある艶のある光沢がある。
「どうして邪魔をするの。あなたも酷いことをされたでしょ」
その言葉は幽鬼的な温度のない息と共に出された。だが声色は鈴虫のように雅なものに思える。水面が雨に激しく揺らされているというのに不気味にも美しい声は耳元で囁かれているように聞こえた。
「お前はなんだ」
「ねぇ、あいつらに脅されてるんでしょ。私が解放してあげるわ。だから邪魔しないで……ね」
宥めように言った。
「答えろ」
女の細い笑い声が聞こえた。白輝が見えるのはあくまで穢れのみだ。相手の表情の機微はしれない。劇のような気取った笑いが曇天から落ちる雨音に紛れ物悲しく響いている。
「なんだ。あなたもそうなのね。殺して欲しいんだ。そうよね。そうなってしまったらその体から解放するしかないわ」女が水に埋もれた足を動かし少しずつ近づいてくる。「痛いのは一瞬だけだから心配することはないわ」
体を身構えることなく唐突に早く動き出した女は瞬間で自身の間合いに白輝を入れる。女の過ぎた後の水面はいまだに飛沫を上げている。白輝の喉元に差し掛かる鋭い爪を上体を後退させ辛うじて避ける。体勢が崩れた白輝は足をわざと大きく動かし水を蹴り上げバク宙する。眼下から水を大量に浴びる女の視覚は完全に水に埋め尽くされ聴覚は水面を打つ飛沫に遮られる。白輝が電流を纏う手で心部に触れようとしたと同時に女は飛び上がり近くにある建物の屋上に着地した。白輝は女の穢れを追い建物の屋上に行ったことを確認できたが闇が深すぎて足場となっている建物がどこにあるのかわからない。
 この暗闇でも見えているのか。
「また機会があったら会いましょうね。同類さん」
曇天から女の声が聞こえると白輝は電流を消した。水面を弾く雨音が活発に伸縮する自身の心音を薄れさせる。全身を伝う雨水が戦いで熱がこもった体を冷ましていく。唐突に起きた出来事に傾注していた頭が冷静になっていく。縛られていない濡れた髪は底が見えない暗闇の水たまりに垂直に下がっている。
「–––––––––」
縛るものはない。依頼でもなく監視役の人間もいない。白輝は病院とは名ばかりの三階建てのアパートを見る。雨粒が瞳を何度もなぞり全ての物体が歪んでいる。どのみち彼らは死ぬかもしれない。それを知りながらも目の前では死んでほしくない。身勝手な感情に侮蔑を覚えながらもその行動を牽制する自我はない。
「………………まさしく神の振る舞いだな」
世界と一人を天秤にかける時点で自身が憎んだ世界のあり方を肯定している。小戸海と関わってしまった旅路からそれに気づいてしまった。
 闇夜の道をただひとり歩いていく。その道が行く道がどこになるか知るはずもなく。
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