第16話 部活勧誘週間2
文字数 2,114文字
明夏の案内で真雪もいっしょに移動する。校内をぐるっと回り込み、着いた場所は人が誰もいない裏門の前だった。
「明夏ちゃん。こっちの門は閉まってるから誰も来ないはずだよ?」
「そうでもないんだな。ほら、見てよ」
しばらく待っていると、一年生数人のグループがこそこそと隠れながら、こちらの門にやってきた。
「よしっ。やっぱりこっちは安全みたいだぞ」
「ありがとう、助かったわ。正門はなんだか人が多くて、まともに入れなかったのよね」
一年生が裏門の前まできた。辺りに誰もいないことを確認してから、柵を乗り越えて中に入ってきた。
「明夏ちゃん。これって、どういうことなの?」
「正門は戦場だからね。賢い生徒は、こうやって誰もいない裏門から入ろうとするってわけよ」
「すごい……。それにしても明夏ちゃん、よくこんな場所を発見したよね」
「ま、私も遅刻した時によくお世話になってるからね。こっちは門番の先生もいないし、こそっと中に入るには絶好の場所だってこと」
「知らなかった。今度遅刻したときに使ってみよう」
真雪はいいことを一つ知った。本当はいけないことだが……。
「真雪、さっそくあの一年生たちにチラシを配るわよ。早くしないと校舎のほうにいっちゃう!」
「うん」
真雪たちは一年生に近づいた。一年生は真雪たちの姿を見つけると、おびえるように後ずさりした。
「ひっ、こっちにもいるっ!」
「あの……オンエア部です。よろしく」
「はい、どうも……うひゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
チラシを受け取った一年生たちは、逃げるように校舎の方に走っていった。
「なんか思ってたのと違う。チラシ配りって、もっとフレンドリーな光景を想像してたのに」
真雪が少し涙目になって言った。
「校門前であれだけの戦場を見せられてたからね。もう部活同士の戦いに一年生が巻き込まれてる感じになってるかも」
「一年生たち、お願いだからいやがらないで~」
その後も、少しではあるが登校してきた生徒たちがこちらの門から入ってきていた。真雪と明夏は、数少ない生徒たちに相手に少しずつ地道に配ることにした。
いっぽう正門前では、オンエア部の日菜と樹々が二人でチラシを配っていた。
「先輩、厳しいにょす。ここからだと、一年生はもう両手いっぱいにどこかの部のチラシを持っているにゃりん」
「やることが後手後手にまわってるわね。なぜか真雪さんもいなくなってしまったし。日菜さん、ここは二人で強行突破よ! 校門前で待ち伏せをして、まだチラシをもらってない一年生を狙うわ!」
「ラジャー。日菜は装備も万全だわん!」
シャキーン!
謎の効果音とともに、日菜はまたもやダンボール装備を固めた。
「さっきよりも頑丈になった、ダンボールMk-Ⅱで行くぴよ!」
「日菜さん、突撃よ!」
「うなぁぁあぁぁぁぁ!」
日菜と樹々は校門前の人混みに突入していった。
だが他の部の人たちにじゃまされて、なかなか前に進めない。
「どいてほしいにゃす~。ちょっと開けてくださいっす~」
「おおっと、そうはいかねえ。俺たちだって新入部員に入って欲しいんだ。抜け駆けはだめだぜ?」
「あなたたちも、さっきからじゃまなのよ。そこは私たちが朝早くから場所取りしてたのよ!」
「なに言ってやがる。そんなこと守ってたら、一年生にチラシを渡せないじゃねーか!」
「なにをー!」
「ふにゅぅぅぅ。進めない~」
校門前はますます混乱してきた。
と、そこへ、
「ちょっとあなたたち、なにをやっているの!」
校舎の中から、やたらと目立つ二人の生徒が現れた。
二ヶ月ほど前に誕生した新生徒会役員。真雪と同じクラスになった生徒会長の壱与と、名前が三国志の武将っぽいとうわさの風紀委員長、黄祖公(きそく)だった。
「部活の勧誘者は各部一名だけ。列に並んで一人ずつにチラシを渡すなり、話しかけるなりしてください!」
「規則を破った部は、しばらく活動停止になるので注意しろ! 風紀委員長の名にかけて、違反生徒は必ず処分する!」
生徒会長たちの言葉で、校門前の騒ぎが止まった。
しばらくざわついていたが、結局、部の代表の人以外は惜しみながらも校舎に戻っていった。
校門前の人はずいぶんと少なくなり、一年生は安心して門をくぐり抜けられるようになった。
この生徒会長の行動に、樹々は一人で感動していた。
「今年の生徒会長はすごいわ。人を従える統率力が半端じゃない。去年の生徒会長とは大違いだわ」
「先輩、どうするっすか? チラシ配りは一人しかだめだとかなんとかパラダイス」
「そうね。ここは私がやっておくわ。日菜さんは自分の教室に行ってていいわよ」
「残念だけど了解っす! それでは樹々隊長、面白いご武運を!」
日菜は敬礼をして、さっそうと校舎に戻っていった。
「さて、さっそく一年生がやって来たわね。少しでも多くいチラシを配らないと。
樹々はチラシ配りの列に並んで、チラシを配り始めた。
いっぽう裏門のほうにいた真雪と明夏は、
「あれ? さっきから誰も来なくなったね。なにかあったのかな?」
「いや、まだ来るかもしれないよ。明夏ちゃん、もう少しねばってみよう」
もう誰も来ないであろう裏門の前で、誰かがやってくるのを待ち続けていた。
「明夏ちゃん。こっちの門は閉まってるから誰も来ないはずだよ?」
「そうでもないんだな。ほら、見てよ」
しばらく待っていると、一年生数人のグループがこそこそと隠れながら、こちらの門にやってきた。
「よしっ。やっぱりこっちは安全みたいだぞ」
「ありがとう、助かったわ。正門はなんだか人が多くて、まともに入れなかったのよね」
一年生が裏門の前まできた。辺りに誰もいないことを確認してから、柵を乗り越えて中に入ってきた。
「明夏ちゃん。これって、どういうことなの?」
「正門は戦場だからね。賢い生徒は、こうやって誰もいない裏門から入ろうとするってわけよ」
「すごい……。それにしても明夏ちゃん、よくこんな場所を発見したよね」
「ま、私も遅刻した時によくお世話になってるからね。こっちは門番の先生もいないし、こそっと中に入るには絶好の場所だってこと」
「知らなかった。今度遅刻したときに使ってみよう」
真雪はいいことを一つ知った。本当はいけないことだが……。
「真雪、さっそくあの一年生たちにチラシを配るわよ。早くしないと校舎のほうにいっちゃう!」
「うん」
真雪たちは一年生に近づいた。一年生は真雪たちの姿を見つけると、おびえるように後ずさりした。
「ひっ、こっちにもいるっ!」
「あの……オンエア部です。よろしく」
「はい、どうも……うひゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
チラシを受け取った一年生たちは、逃げるように校舎の方に走っていった。
「なんか思ってたのと違う。チラシ配りって、もっとフレンドリーな光景を想像してたのに」
真雪が少し涙目になって言った。
「校門前であれだけの戦場を見せられてたからね。もう部活同士の戦いに一年生が巻き込まれてる感じになってるかも」
「一年生たち、お願いだからいやがらないで~」
その後も、少しではあるが登校してきた生徒たちがこちらの門から入ってきていた。真雪と明夏は、数少ない生徒たちに相手に少しずつ地道に配ることにした。
いっぽう正門前では、オンエア部の日菜と樹々が二人でチラシを配っていた。
「先輩、厳しいにょす。ここからだと、一年生はもう両手いっぱいにどこかの部のチラシを持っているにゃりん」
「やることが後手後手にまわってるわね。なぜか真雪さんもいなくなってしまったし。日菜さん、ここは二人で強行突破よ! 校門前で待ち伏せをして、まだチラシをもらってない一年生を狙うわ!」
「ラジャー。日菜は装備も万全だわん!」
シャキーン!
謎の効果音とともに、日菜はまたもやダンボール装備を固めた。
「さっきよりも頑丈になった、ダンボールMk-Ⅱで行くぴよ!」
「日菜さん、突撃よ!」
「うなぁぁあぁぁぁぁ!」
日菜と樹々は校門前の人混みに突入していった。
だが他の部の人たちにじゃまされて、なかなか前に進めない。
「どいてほしいにゃす~。ちょっと開けてくださいっす~」
「おおっと、そうはいかねえ。俺たちだって新入部員に入って欲しいんだ。抜け駆けはだめだぜ?」
「あなたたちも、さっきからじゃまなのよ。そこは私たちが朝早くから場所取りしてたのよ!」
「なに言ってやがる。そんなこと守ってたら、一年生にチラシを渡せないじゃねーか!」
「なにをー!」
「ふにゅぅぅぅ。進めない~」
校門前はますます混乱してきた。
と、そこへ、
「ちょっとあなたたち、なにをやっているの!」
校舎の中から、やたらと目立つ二人の生徒が現れた。
二ヶ月ほど前に誕生した新生徒会役員。真雪と同じクラスになった生徒会長の壱与と、名前が三国志の武将っぽいとうわさの風紀委員長、黄祖公(きそく)だった。
「部活の勧誘者は各部一名だけ。列に並んで一人ずつにチラシを渡すなり、話しかけるなりしてください!」
「規則を破った部は、しばらく活動停止になるので注意しろ! 風紀委員長の名にかけて、違反生徒は必ず処分する!」
生徒会長たちの言葉で、校門前の騒ぎが止まった。
しばらくざわついていたが、結局、部の代表の人以外は惜しみながらも校舎に戻っていった。
校門前の人はずいぶんと少なくなり、一年生は安心して門をくぐり抜けられるようになった。
この生徒会長の行動に、樹々は一人で感動していた。
「今年の生徒会長はすごいわ。人を従える統率力が半端じゃない。去年の生徒会長とは大違いだわ」
「先輩、どうするっすか? チラシ配りは一人しかだめだとかなんとかパラダイス」
「そうね。ここは私がやっておくわ。日菜さんは自分の教室に行ってていいわよ」
「残念だけど了解っす! それでは樹々隊長、面白いご武運を!」
日菜は敬礼をして、さっそうと校舎に戻っていった。
「さて、さっそく一年生がやって来たわね。少しでも多くいチラシを配らないと。
樹々はチラシ配りの列に並んで、チラシを配り始めた。
いっぽう裏門のほうにいた真雪と明夏は、
「あれ? さっきから誰も来なくなったね。なにかあったのかな?」
「いや、まだ来るかもしれないよ。明夏ちゃん、もう少しねばってみよう」
もう誰も来ないであろう裏門の前で、誰かがやってくるのを待ち続けていた。