第40話 生徒会長と部活動
文字数 1,612文字
ここは生徒会室。
生徒会長の壱与率いる豪華生徒会のメンバーたちが、試験前最後の仕事をしている。
壱与は難しい表情をしながら書類を見ていた。
「……ちょっとなにこれ。ぜんぜん予算が足りないわ」
壱与が見ているのは各部活動から提出された部費の希望額と、その用途の内訳が書かれた書類。100を超える部活から届いているので、書類は山積みになっている。
「カイくん。ちょっといい?」
会計のカイが壱与に呼ばれた。カイはしぶしぶ立ち上がると、壱与のとなりまでやってきた。
「各部に分配する予算と比べてみたけど、これじゃあぜんぜん足りそうにないわ。あなたのほうで予算内にとどまるよう調整してちょうだい」
「あの、もう試験前で生徒は早く帰って勉強するように言われてるので、これは試験が終わってからでも」
壱与はぎろりとカイをにらむ。
「試験が終わったらすぐに部長会があって、そのときに予算を発表しないといけないのよ。試験後まで待ってて間に合うと思う?」
「いや、それは」
「今すぐにやってちょうだい。私が出した予算と釣り合いがとれるようにね」
カイはしぶしぶと書類を受け取る。
「あの会長」
「まだなにか?」
「なるべく部の希望通りに分けてくれと顧問の先生方からも話が。実際、去年はそういう流れで部費を決めて」
「あーもう。そんなことしてるから去年は他のことにお金を回せなくなったんじゃない。部の希望通りに部費を配ったせいで、他の行事のときはろくにお金が使えずに、地味なイベントばっかりだった。今年は見た者すべてが魅了されるように、文化祭も体育祭も豪華なものにしたいのよ」
「は、はあ」
「だから予算内にまとまるようにしてちょうだい。これでも最初の予定よりもずいぶんと予算を使ってるんだから」
会計のカイは自分の席に戻っていった。
「はあ、本当に頭が痛いわ。うちの学校、部活の数が多すぎるのよ」
壱与は部活動リストを見た。150を超える部の名前。そのほとんどが、活動内容がよくわからない部ばかりである。
「そうねぇ。このあたりの部なんか、いらないんじゃないかしら。部員も少ないみたいだし、何をやってるのかよくわからないわ」
いくつかの部の名前に、赤いペンでチェックをつける。
これから廃部勧告をしていく部活を決めているのだが、たくさんチェックをつけてもまだまだ部の数が多すぎる。
そんな中、壱与の目にオンエア部の文字が入ってきた。
「オンエア部。部員数5名。昼休みの学食で、エンタメ度の高いラジオオンエアをしている。今年の新入部員はゼロ」
ふと、同じクラスの真雪や明夏の顔が浮かんだ。
「……ま、いちおう学校の役に立ってるみたいだし、これはいいか」
壱与はオンエア部をチェックせずにスルーした。
すべてのチェックが終わると、壱与は休む間もなく席を立ち上がった。
「会長、どちらへ?」
「よくわからない部活を調べてくるわ。活動内容が認められないときは、廃部勧告をしてきます」
壱与は生徒会室を出て行った。
以前、学校の個性としてずっと増え続けてきた部活動数。新しい個性として最新の学食棟が完成した今、これらはもう用済みとなっていた。
今はとにかく、いらない部活の数を減らしたかった。
廊下に出たところで、ある人物と出会った。
そこにいたのは、妹の佐与。二人は姉妹の関係だった。
今日は用事があるからと言って、壱与が佐与を呼び出していた。
出会ってすぐに壱与は一枚の紙を差し出す。
「お姉、今日もやるつもりなの?」
「当たり前よ。私たちはそのためにこの学校に来てるんだから。今日はこれ、お願いね。私はその他の部に行ってみるわ」
「……」
佐与は黙って受け取った。
紙には部の名前と、活動場所が書かれていた。
「……また行くのか」
高校に入学してから壱与に言われてやっていること。
これが原因で、生徒たちからかなり疎まれている。
これから自分がすることを考えると、佐与は気が重くなってきた。
生徒会長の壱与率いる豪華生徒会のメンバーたちが、試験前最後の仕事をしている。
壱与は難しい表情をしながら書類を見ていた。
「……ちょっとなにこれ。ぜんぜん予算が足りないわ」
壱与が見ているのは各部活動から提出された部費の希望額と、その用途の内訳が書かれた書類。100を超える部活から届いているので、書類は山積みになっている。
「カイくん。ちょっといい?」
会計のカイが壱与に呼ばれた。カイはしぶしぶ立ち上がると、壱与のとなりまでやってきた。
「各部に分配する予算と比べてみたけど、これじゃあぜんぜん足りそうにないわ。あなたのほうで予算内にとどまるよう調整してちょうだい」
「あの、もう試験前で生徒は早く帰って勉強するように言われてるので、これは試験が終わってからでも」
壱与はぎろりとカイをにらむ。
「試験が終わったらすぐに部長会があって、そのときに予算を発表しないといけないのよ。試験後まで待ってて間に合うと思う?」
「いや、それは」
「今すぐにやってちょうだい。私が出した予算と釣り合いがとれるようにね」
カイはしぶしぶと書類を受け取る。
「あの会長」
「まだなにか?」
「なるべく部の希望通りに分けてくれと顧問の先生方からも話が。実際、去年はそういう流れで部費を決めて」
「あーもう。そんなことしてるから去年は他のことにお金を回せなくなったんじゃない。部の希望通りに部費を配ったせいで、他の行事のときはろくにお金が使えずに、地味なイベントばっかりだった。今年は見た者すべてが魅了されるように、文化祭も体育祭も豪華なものにしたいのよ」
「は、はあ」
「だから予算内にまとまるようにしてちょうだい。これでも最初の予定よりもずいぶんと予算を使ってるんだから」
会計のカイは自分の席に戻っていった。
「はあ、本当に頭が痛いわ。うちの学校、部活の数が多すぎるのよ」
壱与は部活動リストを見た。150を超える部の名前。そのほとんどが、活動内容がよくわからない部ばかりである。
「そうねぇ。このあたりの部なんか、いらないんじゃないかしら。部員も少ないみたいだし、何をやってるのかよくわからないわ」
いくつかの部の名前に、赤いペンでチェックをつける。
これから廃部勧告をしていく部活を決めているのだが、たくさんチェックをつけてもまだまだ部の数が多すぎる。
そんな中、壱与の目にオンエア部の文字が入ってきた。
「オンエア部。部員数5名。昼休みの学食で、エンタメ度の高いラジオオンエアをしている。今年の新入部員はゼロ」
ふと、同じクラスの真雪や明夏の顔が浮かんだ。
「……ま、いちおう学校の役に立ってるみたいだし、これはいいか」
壱与はオンエア部をチェックせずにスルーした。
すべてのチェックが終わると、壱与は休む間もなく席を立ち上がった。
「会長、どちらへ?」
「よくわからない部活を調べてくるわ。活動内容が認められないときは、廃部勧告をしてきます」
壱与は生徒会室を出て行った。
以前、学校の個性としてずっと増え続けてきた部活動数。新しい個性として最新の学食棟が完成した今、これらはもう用済みとなっていた。
今はとにかく、いらない部活の数を減らしたかった。
廊下に出たところで、ある人物と出会った。
そこにいたのは、妹の佐与。二人は姉妹の関係だった。
今日は用事があるからと言って、壱与が佐与を呼び出していた。
出会ってすぐに壱与は一枚の紙を差し出す。
「お姉、今日もやるつもりなの?」
「当たり前よ。私たちはそのためにこの学校に来てるんだから。今日はこれ、お願いね。私はその他の部に行ってみるわ」
「……」
佐与は黙って受け取った。
紙には部の名前と、活動場所が書かれていた。
「……また行くのか」
高校に入学してから壱与に言われてやっていること。
これが原因で、生徒たちからかなり疎まれている。
これから自分がすることを考えると、佐与は気が重くなってきた。