第47話 佐与の決意
文字数 1,647文字
ここは町外れ。
見渡す限り家の敷地が広がっていて、その中に大きくそびえる古い屋敷。
そこへ、佐与が一人でやってきた。
佐与が門の前に立つと、自動で大きな門が開いていく。佐与は何のためらいもなく、そのまま敷地の中に入っていった。
門から屋敷までは距離があり、季節の花などがきれいに植えられた庭を通っていく。歩くこと数分。ようやく到着した屋敷の前には、じいやと呼ばれる年をとった執事が佐与を出迎えるために待っていた。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「ただいま。お姉は? 家の中にいる?」
「はい。自分のお部屋でおくつろぎになっておられます」
「わかった。ありがとう」
佐与はそれ以上何も言わずに、屋敷の中に入っていった。執事は家に入っていく佐与に向かって、その場で一礼する。
佐与が中に入ると大きな広間があった。二階に行く大きな階段のほか、別の部屋へとつながる大きなドアがたくさん見える。
佐与は迷うことなく二階に上がり、しばらく歩いた先にある自分の部屋に入った。
佐与の部屋は、学校の教室以上の広さがある。
机の横にある荷物置きにカバンなどを置いて、かけてあった服を取り制服から私服へと着替えた。
着替え終わると、今度は隣の部屋のドアの前まで歩いていく。
このドアの先には壱与の部屋があり、いったん通路に出なくても直接佐与の部屋から行けるようになっている。
佐与はいったん深呼吸をして、気持ちを整えてからドアをノックをした。
「お姉、いる?」
「佐与なの? 入っていいわよ」
佐与は壱与の部屋に入る。壱与の部屋も佐与の部屋と同じくらい大きな部屋だった。
佐与が部屋を見回すと、壱与は大きなお姫様ベッドの縁に腰をかけていた。
お風呂に入った後だろうか。少し濡れた髪をくしで丁寧に梳かしている。
「お姉、話があるんだけどいいかな」
「あなたから私に話があるなんてめずらしいわね。いったいなんの話かしら」
「うん。あの……」
いったん言葉が途切れる。
何を言われるのかわからないので怖かったが、意を決して佐与は続けて話すことにした。
「……生徒会の仕事を辞めたいんだ。ボクはもう、普通の学校生活をしたい」
「ふ~ん、そう」
佐与はすごく反対されると思っていたが、壱与は意外と冷静だった。
「佐与。あなた、学校の理事長であるおじいさまの手助けがしたいと言って今の学校に入学したんじゃなかったのかしら?」
「最初はそうだった。でも、いくらおじいさまの頼みといっても、部活を強制的につぶしていく行為はもうやりたくないんだ」
「部活の数を減らすのは、おじいさまの願いでもある。あなたは学校をよりよくするという条件で、学校の成績だって優遇してもらえるし、大学だって有名大学に推薦してもらえるのよ。なにが不満なのかしら」
「他の人はみんな自分の力で努力してる。ボクだけそんな優遇されても、ぜんぜん嬉しくないよ」
「ま、好きにすればいいわ。部活を減らすもっと効率のいい方法を考えたから、以前みたいな真似はもうやらなくても大丈夫よ」
「……どっちにしろ、ボクはもう協力しないからね」
佐与は自分の部屋に戻った。
いままで言いたくても言えなかったことを全部言えた。心にあったもやもやが消え、縛りから解放されたようなすがすがしい気分になった。
特別扱いなんてもういらない。
これでボクも、みんなと同じような学校生活が送れるようになるはずだ。
いっぽう壱与は、佐与の変わりように少し感心していた。
「あの子、あんなこと自分から言うような子じゃなかったのに。オンエア部と付き合いだしてから、ちょっと変わってきた気がするわ」
壱与はいつも持ち歩いている部活リストの書かれたノートを取り出した。
オンエア部のところに三角マークがつけられていたが、それを消して丸に書き直す。
「ま、オンエア部をつぶしたら佐与に恨まれそうだし。佐与にとっても、汚れた生徒会と関わるよりも、オンエア部に行ったほうがいいのかもしれない」
佐与の成長を見て、壱与は少し嬉しそうな顔をしていた。
見渡す限り家の敷地が広がっていて、その中に大きくそびえる古い屋敷。
そこへ、佐与が一人でやってきた。
佐与が門の前に立つと、自動で大きな門が開いていく。佐与は何のためらいもなく、そのまま敷地の中に入っていった。
門から屋敷までは距離があり、季節の花などがきれいに植えられた庭を通っていく。歩くこと数分。ようやく到着した屋敷の前には、じいやと呼ばれる年をとった執事が佐与を出迎えるために待っていた。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「ただいま。お姉は? 家の中にいる?」
「はい。自分のお部屋でおくつろぎになっておられます」
「わかった。ありがとう」
佐与はそれ以上何も言わずに、屋敷の中に入っていった。執事は家に入っていく佐与に向かって、その場で一礼する。
佐与が中に入ると大きな広間があった。二階に行く大きな階段のほか、別の部屋へとつながる大きなドアがたくさん見える。
佐与は迷うことなく二階に上がり、しばらく歩いた先にある自分の部屋に入った。
佐与の部屋は、学校の教室以上の広さがある。
机の横にある荷物置きにカバンなどを置いて、かけてあった服を取り制服から私服へと着替えた。
着替え終わると、今度は隣の部屋のドアの前まで歩いていく。
このドアの先には壱与の部屋があり、いったん通路に出なくても直接佐与の部屋から行けるようになっている。
佐与はいったん深呼吸をして、気持ちを整えてからドアをノックをした。
「お姉、いる?」
「佐与なの? 入っていいわよ」
佐与は壱与の部屋に入る。壱与の部屋も佐与の部屋と同じくらい大きな部屋だった。
佐与が部屋を見回すと、壱与は大きなお姫様ベッドの縁に腰をかけていた。
お風呂に入った後だろうか。少し濡れた髪をくしで丁寧に梳かしている。
「お姉、話があるんだけどいいかな」
「あなたから私に話があるなんてめずらしいわね。いったいなんの話かしら」
「うん。あの……」
いったん言葉が途切れる。
何を言われるのかわからないので怖かったが、意を決して佐与は続けて話すことにした。
「……生徒会の仕事を辞めたいんだ。ボクはもう、普通の学校生活をしたい」
「ふ~ん、そう」
佐与はすごく反対されると思っていたが、壱与は意外と冷静だった。
「佐与。あなた、学校の理事長であるおじいさまの手助けがしたいと言って今の学校に入学したんじゃなかったのかしら?」
「最初はそうだった。でも、いくらおじいさまの頼みといっても、部活を強制的につぶしていく行為はもうやりたくないんだ」
「部活の数を減らすのは、おじいさまの願いでもある。あなたは学校をよりよくするという条件で、学校の成績だって優遇してもらえるし、大学だって有名大学に推薦してもらえるのよ。なにが不満なのかしら」
「他の人はみんな自分の力で努力してる。ボクだけそんな優遇されても、ぜんぜん嬉しくないよ」
「ま、好きにすればいいわ。部活を減らすもっと効率のいい方法を考えたから、以前みたいな真似はもうやらなくても大丈夫よ」
「……どっちにしろ、ボクはもう協力しないからね」
佐与は自分の部屋に戻った。
いままで言いたくても言えなかったことを全部言えた。心にあったもやもやが消え、縛りから解放されたようなすがすがしい気分になった。
特別扱いなんてもういらない。
これでボクも、みんなと同じような学校生活が送れるようになるはずだ。
いっぽう壱与は、佐与の変わりように少し感心していた。
「あの子、あんなこと自分から言うような子じゃなかったのに。オンエア部と付き合いだしてから、ちょっと変わってきた気がするわ」
壱与はいつも持ち歩いている部活リストの書かれたノートを取り出した。
オンエア部のところに三角マークがつけられていたが、それを消して丸に書き直す。
「ま、オンエア部をつぶしたら佐与に恨まれそうだし。佐与にとっても、汚れた生徒会と関わるよりも、オンエア部に行ったほうがいいのかもしれない」
佐与の成長を見て、壱与は少し嬉しそうな顔をしていた。