第82話 佐与の説得
文字数 1,008文字
部活をやらなくなった真雪は、暇な時間を持て余していた。
下校時間になると、部活をしていない子たちから遊びの誘いを受けた。
「真雪。今日の帰り、どこか寄って行かない?」
「ごめん。今はそんな気分じゃないんだ」
「そっか。残念だけどしょうがない。また今度遊ぼうね」
真雪に手を振って、クラスの子は数人で一緒に教室から出て行く。
特に断る理由はなかったが、真雪は遊ぶ気になれなかった。
「やっぱり私、まだ部活動に未練があるのかなぁ……」
放課後に部活をしている人たちを見ると、すごくうらやましく思えてしまう。
中学生の頃、よく感じていた気持ちだった。
「なにか新しい部活、やってみようかな」
思わず口に出てしまったが、その考えを打ち消すように、真雪はぶんぶんと首を振った。
「はぁ」
真雪はため息をついてから教室を出た。
廊下に出るとすぐに、佐与が立ってこちらを向いているのが見えた。それはまるで、真雪が出てくるのを待っていたかのようだった。
「佐与ちゃん……いったいどうしたの?」
「先輩、部活を始めましょう。最近の先輩、なんだか見ていられません」
佐与は真雪に詰め寄ってから言った。
だが、真雪は佐与から目をそらして、力なく言う。
「やりたいけど無理だよ……また私のせいで部活が廃部になっちゃったらいやだもん」
「先輩……」
「私はみんなの居場所を守れなかった。みんなも今は部活をやってない。だから、私だけ新しく部活を始めるわけにはいかないよ」
真雪はそれだけ言うと、佐与の横を通り過ぎた。
「そんなことないです!」
佐与が大声で言った。真雪は足を止める。
「先輩が新しい部活を始めても、誰も文句は言わないと思います! それどころか、喜んでくれるんじゃないでしょうか!」
「佐与ちゃん……」
真雪はこんなに積極的になっている佐与を初めて見た。
「みんな待っているんです! 先輩が元気を取り戻して、またいきいきと部活をやっている姿を! ボクだって……ボクだって待ってるんです!」
「……ごめん、佐与ちゃん。まだ私には無理みたい」
真雪は小さな声で言って、そのまま廊下を進んでいった。佐与は一歩も動けずに、去って行く真雪の後ろ姿を見ていた。
真雪はオンエア部の廃部が全部自分のせいだと思ってしまっている。
部活対抗戦でのオンエアが最後までうまくできなかったために、オンエア部は廃部になってしまった。
その思いが、今の真雪を行動できないようにさせていた。
下校時間になると、部活をしていない子たちから遊びの誘いを受けた。
「真雪。今日の帰り、どこか寄って行かない?」
「ごめん。今はそんな気分じゃないんだ」
「そっか。残念だけどしょうがない。また今度遊ぼうね」
真雪に手を振って、クラスの子は数人で一緒に教室から出て行く。
特に断る理由はなかったが、真雪は遊ぶ気になれなかった。
「やっぱり私、まだ部活動に未練があるのかなぁ……」
放課後に部活をしている人たちを見ると、すごくうらやましく思えてしまう。
中学生の頃、よく感じていた気持ちだった。
「なにか新しい部活、やってみようかな」
思わず口に出てしまったが、その考えを打ち消すように、真雪はぶんぶんと首を振った。
「はぁ」
真雪はため息をついてから教室を出た。
廊下に出るとすぐに、佐与が立ってこちらを向いているのが見えた。それはまるで、真雪が出てくるのを待っていたかのようだった。
「佐与ちゃん……いったいどうしたの?」
「先輩、部活を始めましょう。最近の先輩、なんだか見ていられません」
佐与は真雪に詰め寄ってから言った。
だが、真雪は佐与から目をそらして、力なく言う。
「やりたいけど無理だよ……また私のせいで部活が廃部になっちゃったらいやだもん」
「先輩……」
「私はみんなの居場所を守れなかった。みんなも今は部活をやってない。だから、私だけ新しく部活を始めるわけにはいかないよ」
真雪はそれだけ言うと、佐与の横を通り過ぎた。
「そんなことないです!」
佐与が大声で言った。真雪は足を止める。
「先輩が新しい部活を始めても、誰も文句は言わないと思います! それどころか、喜んでくれるんじゃないでしょうか!」
「佐与ちゃん……」
真雪はこんなに積極的になっている佐与を初めて見た。
「みんな待っているんです! 先輩が元気を取り戻して、またいきいきと部活をやっている姿を! ボクだって……ボクだって待ってるんです!」
「……ごめん、佐与ちゃん。まだ私には無理みたい」
真雪は小さな声で言って、そのまま廊下を進んでいった。佐与は一歩も動けずに、去って行く真雪の後ろ姿を見ていた。
真雪はオンエア部の廃部が全部自分のせいだと思ってしまっている。
部活対抗戦でのオンエアが最後までうまくできなかったために、オンエア部は廃部になってしまった。
その思いが、今の真雪を行動できないようにさせていた。