第39話 図書室の守護者
文字数 1,651文字
真雪と明夏の二人は、図書室の前までやってきた。
中に入る前から、図書室独特の静かなオーラが廊下までただよってきている。
「どうしよう。これ以上進むのは危険な感じがする。やっぱやめとく?」
「明夏ちゃん、入る前からそんなこと言わないでよ」
「私、この静かな雰囲気に3秒くらいしか持たなさそう」
「もう少しねばってみようよ……」
「聞いた話なんだけどさ、図書室には守護者(ガーディアン)と呼ばれてる人たちがいて、うるさくしてる人がいたら実力行使で外に追放するらしいよ」
「それはこわいな……。図書室にほとんど来ないから、そんな人がいること自体知らなかった」
そのとき、図書館の中から「ぎゃー」という叫び声がした。その後、中から傷だらけの男が転がりながら廊下に出てきた。
「うおっ、何これどういうこと!?」
「だっだだだ、大丈夫!?」
真雪と明夏は男のそばまで来た。男は「ぐうぅ」と言いながら気力を振り絞り、よろけながらも立ち上がる。
「ぐぶぅ。またやつに……やられちまったぜ……」
「あの、大丈夫なの?」
真雪が心配して声をかけた。それからふらふらしている男を、真雪と明夏が支える。
「おっとすまねえな、心配かけて。俺は大丈夫、まだまだ戦えるぜ。それよりもお前たち、これから図書室の中に入るつもりなのか?」
「うん、そのつもりだけど」
「なら気をつけたほうがいい。中で大声を出して守護者に目をつけられると、俺のようになるぜ。無茶をせず、静かにお勉強でもしておくことだ」
「あ、あの……忠告ありがとう」
「へへっ。じゃあ俺は、今から保健室にでも行ってくるぜえ!」
男は壁で体を支えながら歩いて行き、真雪と明夏は男を見えなくなるまで見守った。
「本当に大丈夫なのかな」
「あの人、無茶やる部の人でしょ? けがなんていつものことだから大丈夫! ……だと思うけど」
「無茶やる部って……」
試験前の今日は部活禁止。彼らは部活外であっても、ああやっていつも無茶をやっているらしい。
「で、どうする? 中に入ってみる?」
「どうしよう。なんだかこわいな……」
二人が図書室の前で話していると、
「誰ですの? 神聖な図書室の前でずっとおしゃべりしているのは。場合によってはこの守護者、『ガーディアン姫』が許さなくてよ」
中からお嬢様っぽいしゃべりかたの女子生徒が出てきた。
その姿を見て、真雪は思わず声を上げた。
「あっ! 姫ちゃん!」
「あら? あなたはもしかして真雪さん? 久しぶりね。あなたのガラケーはまだ元気かしら」
「元気元気。ガラケー丈夫すぎて、なかなか機種変更できないよ!」
それはガラケー使い五人衆(真雪が入るまでは四天王)の一人、黄色ガラケーの姫だった。
謎の忍者軍団にガラケーを壊されてからスマホになってしまったが、色は黄色のままで、相変わらず原型がわからないほどスマホがデコられているようだ。
「あの、もしかして図書室の守護者って姫ちゃんのこと?」
真雪がおそるおそる聞くと、
「ええ。わたくしも守護者の一人ですわよ。さっきも図書室で騒いでいたゴロツキをぶちのめしてやったところですわ」
言葉遣いに似合わず、やることは過激だった。
「真雪、この人知り合い?」
「ガラケー使い仲間! だったんだけど……」
「謎の忍者どもに壊されてしまったのですわよ。わたくしとしたことが、あのときは油断してましたわ。まさか登山道の道しるべの上にガラケーを置いたとたんに手裏剣が飛んでくるなんて」
どういう状況だったかよくわからないが、とにかく忍者スナイパーにガラケーを破壊されたらしい。
「……真雪さん、わたくしまだあきらめてなくってよ。いつかきっと、昔のようなガラケー使いに戻ってみせますわ!」
「うん。私もガラケーを使いながら待ってる!」
「あの~、話についていけないんですけど……」
謎の友情パワーを見せつけられた明夏は、二人の話が終わるまでその場にぼーっと突っ立っていた。
不本意ながらガラケーになってしまった真雪にとって、ガラケー仲間の存在は本当に頼もしいものだった。
中に入る前から、図書室独特の静かなオーラが廊下までただよってきている。
「どうしよう。これ以上進むのは危険な感じがする。やっぱやめとく?」
「明夏ちゃん、入る前からそんなこと言わないでよ」
「私、この静かな雰囲気に3秒くらいしか持たなさそう」
「もう少しねばってみようよ……」
「聞いた話なんだけどさ、図書室には守護者(ガーディアン)と呼ばれてる人たちがいて、うるさくしてる人がいたら実力行使で外に追放するらしいよ」
「それはこわいな……。図書室にほとんど来ないから、そんな人がいること自体知らなかった」
そのとき、図書館の中から「ぎゃー」という叫び声がした。その後、中から傷だらけの男が転がりながら廊下に出てきた。
「うおっ、何これどういうこと!?」
「だっだだだ、大丈夫!?」
真雪と明夏は男のそばまで来た。男は「ぐうぅ」と言いながら気力を振り絞り、よろけながらも立ち上がる。
「ぐぶぅ。またやつに……やられちまったぜ……」
「あの、大丈夫なの?」
真雪が心配して声をかけた。それからふらふらしている男を、真雪と明夏が支える。
「おっとすまねえな、心配かけて。俺は大丈夫、まだまだ戦えるぜ。それよりもお前たち、これから図書室の中に入るつもりなのか?」
「うん、そのつもりだけど」
「なら気をつけたほうがいい。中で大声を出して守護者に目をつけられると、俺のようになるぜ。無茶をせず、静かにお勉強でもしておくことだ」
「あ、あの……忠告ありがとう」
「へへっ。じゃあ俺は、今から保健室にでも行ってくるぜえ!」
男は壁で体を支えながら歩いて行き、真雪と明夏は男を見えなくなるまで見守った。
「本当に大丈夫なのかな」
「あの人、無茶やる部の人でしょ? けがなんていつものことだから大丈夫! ……だと思うけど」
「無茶やる部って……」
試験前の今日は部活禁止。彼らは部活外であっても、ああやっていつも無茶をやっているらしい。
「で、どうする? 中に入ってみる?」
「どうしよう。なんだかこわいな……」
二人が図書室の前で話していると、
「誰ですの? 神聖な図書室の前でずっとおしゃべりしているのは。場合によってはこの守護者、『ガーディアン姫』が許さなくてよ」
中からお嬢様っぽいしゃべりかたの女子生徒が出てきた。
その姿を見て、真雪は思わず声を上げた。
「あっ! 姫ちゃん!」
「あら? あなたはもしかして真雪さん? 久しぶりね。あなたのガラケーはまだ元気かしら」
「元気元気。ガラケー丈夫すぎて、なかなか機種変更できないよ!」
それはガラケー使い五人衆(真雪が入るまでは四天王)の一人、黄色ガラケーの姫だった。
謎の忍者軍団にガラケーを壊されてからスマホになってしまったが、色は黄色のままで、相変わらず原型がわからないほどスマホがデコられているようだ。
「あの、もしかして図書室の守護者って姫ちゃんのこと?」
真雪がおそるおそる聞くと、
「ええ。わたくしも守護者の一人ですわよ。さっきも図書室で騒いでいたゴロツキをぶちのめしてやったところですわ」
言葉遣いに似合わず、やることは過激だった。
「真雪、この人知り合い?」
「ガラケー使い仲間! だったんだけど……」
「謎の忍者どもに壊されてしまったのですわよ。わたくしとしたことが、あのときは油断してましたわ。まさか登山道の道しるべの上にガラケーを置いたとたんに手裏剣が飛んでくるなんて」
どういう状況だったかよくわからないが、とにかく忍者スナイパーにガラケーを破壊されたらしい。
「……真雪さん、わたくしまだあきらめてなくってよ。いつかきっと、昔のようなガラケー使いに戻ってみせますわ!」
「うん。私もガラケーを使いながら待ってる!」
「あの~、話についていけないんですけど……」
謎の友情パワーを見せつけられた明夏は、二人の話が終わるまでその場にぼーっと突っ立っていた。
不本意ながらガラケーになってしまった真雪にとって、ガラケー仲間の存在は本当に頼もしいものだった。