第18話 部活勧誘週間の後
文字数 1,667文字
部活勧誘週間も終わり、一年生の多くはそれぞれ自分がやりたい部活に入部していた。新入部員も加わり盛り上がりをみせる部活動が多かったが、オンエア部にはいまだ誰一人として入部希望者がいなかった。
とある日の放課後。
今日もいつものように入部希望者が部室に来るのを待っていたが、人が来る気配はまるで感じられなかった。オンエア部の雰囲気は、雨のときの空のようにどんよりしていた。
「おかしいなぁ。ちゃんとチラシも配って、昼休みのオンエアもちゃんとやってるのに。どうして誰も入部してくれないんだろう」
真雪は部室のテーブルに突っ伏していた。その隣では明夏が携帯ゲームをしている。
ドラマならここで誰かやって来るのに。
真雪は、現実がドラマのようにはうまくいかないことを身をもって感じていた。
「部活勧誘週間も終わってるから、積極的な勧誘もできないし。もう『オンエア部に入りたい!』って思ってる人がいない限りは無理じゃない?」
明夏はゲームをやめて、椅子を前後に浮かしてカタンカタンと音を立てている。
真雪は顔を上げて言った。
「オンエア部いいのに。みんなにはわからないのかな~」
「それは真雪の意見でしょ? 周りから見たら、オンエア部はそこまで人気がある部活じゃないみたいだよ」
「じゃあ、どんな部が人気あるの? もちろん運動系以外で」
「わかんない。あ、そういえば今日放送部の文香と話したけど、新入部員の一年生が五人くらい入ったらしいよ」
「五人も!? 一年生だけで戦隊ごっこができるよ!」
「私たちはいま居る部員の数が五人だけどね。似てる部活と言われてるけど、現実は違いすぎるよ」
放送部との違いに、二人はため息をついた。
と、そのとき、
「こにゃす! 今日も元気でにょすにゃろす!」
最近謎の語尾に磨きをかけてきた日菜がやってきた。
「日菜ちゃん一日ぶり~。今日、昼休みのオンエアはどうだった?」
オンエア部では日替わりでオンエアする人を変えていて、今日は日菜がオンエアをしていた。
「それがあんまり見てくれる人がいなかったのねん。みんな見向きもしてくれないで素通りしていってるのです」
「最初の方はけっこう人が集まってきてたけど、もう飽きられてるのかな……」
真雪はますますがっくりした。
学食の中にスピーカーで放送を流しているはずだが、相変わらずうるさい学食で、耳を澄ませていないと放送内容は聞こえてこない。
放送している様子が目に見えている分だけ、以前の学食よりはましだと思うのだが。
「樹々先輩はまだ来てないにょすか?」
「今日は予備校に行くんだって。三年生って、思ってたよりも大変だよね」
「うぬぬ。じゃあ、また日菜たちだけで新入部員を増やす方法を考えないといけないにゅるね。こんなとき、頭のいい樹々先輩がいないだけでも問題だるよ」
明夏と日菜、二人して頭を抱える。
「私たち、いままで樹々先輩に頼りすぎてたんだよ。これからは私たちだけでも、ちゃんとできるようにならないと!」
真雪が立ち上がって言った。さらに両手を上にあげてから振り下ろす、謎の準備運動を始めた。
「おおっ。ゆきちゃんのやる気モード、一週間ぶりくらいに見たっす!」
「真雪~、なんか一年生が入部してくるいい案はないの?」
明夏に聞かれて、真雪は謎の準備運動をやめた。
「ないな~。勧誘週間は終わってるからチラシ配りみたいなことはできないし……」
「それじゃあいっそのこと、またアイドルの格好をしてゲリラライブとかやっちゃう? 面白そうだからって、誰か入部してくれるかもよ?」
「だめーっ! そんなことをしたら、部の存在自体が怪しくなるよ!」
以前のゲリラライブ。
生徒たちにはかなり好評だったが、あとで先生たちにこっぴどく叱られた。もし同じことをやったら、今度は部としても活動停止とかになりかねない。
「まだどこにも入部してない一年生もいるはずだし、誰か来てくれることを祈って待つしかないよ」
「それしかないのかなぁ……」
行動を起こしたいのになにもできない。
そんな状況に、真雪は少しあせりを感じていた。
とある日の放課後。
今日もいつものように入部希望者が部室に来るのを待っていたが、人が来る気配はまるで感じられなかった。オンエア部の雰囲気は、雨のときの空のようにどんよりしていた。
「おかしいなぁ。ちゃんとチラシも配って、昼休みのオンエアもちゃんとやってるのに。どうして誰も入部してくれないんだろう」
真雪は部室のテーブルに突っ伏していた。その隣では明夏が携帯ゲームをしている。
ドラマならここで誰かやって来るのに。
真雪は、現実がドラマのようにはうまくいかないことを身をもって感じていた。
「部活勧誘週間も終わってるから、積極的な勧誘もできないし。もう『オンエア部に入りたい!』って思ってる人がいない限りは無理じゃない?」
明夏はゲームをやめて、椅子を前後に浮かしてカタンカタンと音を立てている。
真雪は顔を上げて言った。
「オンエア部いいのに。みんなにはわからないのかな~」
「それは真雪の意見でしょ? 周りから見たら、オンエア部はそこまで人気がある部活じゃないみたいだよ」
「じゃあ、どんな部が人気あるの? もちろん運動系以外で」
「わかんない。あ、そういえば今日放送部の文香と話したけど、新入部員の一年生が五人くらい入ったらしいよ」
「五人も!? 一年生だけで戦隊ごっこができるよ!」
「私たちはいま居る部員の数が五人だけどね。似てる部活と言われてるけど、現実は違いすぎるよ」
放送部との違いに、二人はため息をついた。
と、そのとき、
「こにゃす! 今日も元気でにょすにゃろす!」
最近謎の語尾に磨きをかけてきた日菜がやってきた。
「日菜ちゃん一日ぶり~。今日、昼休みのオンエアはどうだった?」
オンエア部では日替わりでオンエアする人を変えていて、今日は日菜がオンエアをしていた。
「それがあんまり見てくれる人がいなかったのねん。みんな見向きもしてくれないで素通りしていってるのです」
「最初の方はけっこう人が集まってきてたけど、もう飽きられてるのかな……」
真雪はますますがっくりした。
学食の中にスピーカーで放送を流しているはずだが、相変わらずうるさい学食で、耳を澄ませていないと放送内容は聞こえてこない。
放送している様子が目に見えている分だけ、以前の学食よりはましだと思うのだが。
「樹々先輩はまだ来てないにょすか?」
「今日は予備校に行くんだって。三年生って、思ってたよりも大変だよね」
「うぬぬ。じゃあ、また日菜たちだけで新入部員を増やす方法を考えないといけないにゅるね。こんなとき、頭のいい樹々先輩がいないだけでも問題だるよ」
明夏と日菜、二人して頭を抱える。
「私たち、いままで樹々先輩に頼りすぎてたんだよ。これからは私たちだけでも、ちゃんとできるようにならないと!」
真雪が立ち上がって言った。さらに両手を上にあげてから振り下ろす、謎の準備運動を始めた。
「おおっ。ゆきちゃんのやる気モード、一週間ぶりくらいに見たっす!」
「真雪~、なんか一年生が入部してくるいい案はないの?」
明夏に聞かれて、真雪は謎の準備運動をやめた。
「ないな~。勧誘週間は終わってるからチラシ配りみたいなことはできないし……」
「それじゃあいっそのこと、またアイドルの格好をしてゲリラライブとかやっちゃう? 面白そうだからって、誰か入部してくれるかもよ?」
「だめーっ! そんなことをしたら、部の存在自体が怪しくなるよ!」
以前のゲリラライブ。
生徒たちにはかなり好評だったが、あとで先生たちにこっぴどく叱られた。もし同じことをやったら、今度は部としても活動停止とかになりかねない。
「まだどこにも入部してない一年生もいるはずだし、誰か来てくれることを祈って待つしかないよ」
「それしかないのかなぁ……」
行動を起こしたいのになにもできない。
そんな状況に、真雪は少しあせりを感じていた。