第93話 新部活の条件
文字数 1,671文字
「はあ? 本家オンエア部じゃなくてガラケー部? どうしてそんな名前になってるのよ!」
真雪の話を聞いたあと、こえだ先生はびっくりして大声になった。
「オンエア部の名前を入れると理事長にマークされてまたつぶされるかもしれないから、ぜんぜん違う名前のほうがいいかなって」
「ガラケー部とか、もうオンエア部とは何の関係もないじゃない」
「いちおう私、ガラケー使ってるんです。佐与ちゃんも同じく」
「いや、そういう問題じゃなくてね……」
こえだ先生は、きょとんとしている真雪を見て頭を抱えた。
「あー。こんなことなら部活の顧問とか引き受けなければよかった。オンエア部と関係ない部活だったら、顧問なんて正直だるいわよ」
「名前はガラケー部でも、中身はオンエア部なんです! アイドルオンエア部から部室を取り戻したあかつきには、部の名前をオンエア部に戻そうと思っています!」
「でもねぇ。ガラケー部かぁ」
真雪の言ってることはわかっていても、こえだ先生はどこか腑に落ちない感じだった。
「ま、せいぜい部長さんの好きなようにやってみるといいよ。ただし、問題行動だけは起こさないでね。顧問の私も責任を取らされるから」
「はい! せいぜい好きなようにやってみます!」
真雪は投げやりになったこえだ先生と握手をして、職員室を出た。
これからいよいよ新しい部活動人生が始まる。
真雪はさっそく、佐与と一緒に部員集めをする準備を始めた。
真雪と佐与が新部活動申請書を出した翌日。
生徒会室にいた壱与は、書記から話しかけられた。
「会長。新部活申請の返答が学校側から来ています」
「ごくろうさま。さっそく読ませていただくわ」
壱与は書記の持っていた紙を受け取り、書いてある文字に目を通した。
「……よかった。学校側が部活を減らす方針だからもしかしたら認められないんじゃないかと心配してたけど、新しい部の設立はまだ大丈夫そうね」
壱与はほっとした。
オンエア部が廃部になったのは、自分が部活対抗戦を企画したことにもある。学校の部活を生徒会主導で減らしている今、本来ならば新部活申請の時点で却下する案件だった。
だが壱与にそれはできなかった。
新しく部活を始めようと立ち直った真雪に、少しでも力になってあげたかったからだ。
ガラケー部の設立は認める。
書類にはそう書かれていた。だが、その下にただし書きがされていることに壱与は気がついた。
「えっ? なんなのよ……これ」
書かれていたことを何度も確認する。
ただし、部員は現時点でガラケーを使用している者に限る。
「ガラケーを使用している者って、この学校でも真雪さんと佐与くらいじゃないかしら。そんな条件では、オンエア部の元部員の入部はできない……」
壱与はこの不可解な条件の意味に気がついた。
提出した生徒が元オンエア部の真雪だったので、学校側がその狙いを理解してわざとつけた条件かもしれない。
絶対にオンエア部を復活させまいと。
次の日。
教室で真雪は壱与からその話を聞いた。
やはり現在ガラケーを使用している者だけ入部できるというのは無理があった。真雪の周りでガラケーを使っている人は誰もいない。もちろん元オンエア部のみんなも、ガラケーではなくスマホを使用していた。
「どうしよう。私と佐与ちゃん以外にガラケーを使ってる人なんているのかな……」
「私も学校側にガラケー使用者以外も入部できるようにならないか話をしてみるわ。時間はかかるかもしれないけど」
「ありがとう壱与ちゃん。私のために」
「真雪さんのためじゃないわ。客観的に見ても、今回の条件はあまりにも理不尽すぎる。生徒会長として、やるべきことをやるだけよ。本当だからね」
壱与は少し顔を赤くして去っていった。
真雪にありがとうと言われたのが照れくさかったのだろう。
生徒会長の壱与が協力してくれている。
それだけでも真雪の心は、いつもの平常心でいられた。
本当にありがとう。壱与ちゃん。
部員を増やす望みがほぼなくなった。
これからは佐与と二人で、オンエア部復活作戦をやらなければならなくなった。
真雪の話を聞いたあと、こえだ先生はびっくりして大声になった。
「オンエア部の名前を入れると理事長にマークされてまたつぶされるかもしれないから、ぜんぜん違う名前のほうがいいかなって」
「ガラケー部とか、もうオンエア部とは何の関係もないじゃない」
「いちおう私、ガラケー使ってるんです。佐与ちゃんも同じく」
「いや、そういう問題じゃなくてね……」
こえだ先生は、きょとんとしている真雪を見て頭を抱えた。
「あー。こんなことなら部活の顧問とか引き受けなければよかった。オンエア部と関係ない部活だったら、顧問なんて正直だるいわよ」
「名前はガラケー部でも、中身はオンエア部なんです! アイドルオンエア部から部室を取り戻したあかつきには、部の名前をオンエア部に戻そうと思っています!」
「でもねぇ。ガラケー部かぁ」
真雪の言ってることはわかっていても、こえだ先生はどこか腑に落ちない感じだった。
「ま、せいぜい部長さんの好きなようにやってみるといいよ。ただし、問題行動だけは起こさないでね。顧問の私も責任を取らされるから」
「はい! せいぜい好きなようにやってみます!」
真雪は投げやりになったこえだ先生と握手をして、職員室を出た。
これからいよいよ新しい部活動人生が始まる。
真雪はさっそく、佐与と一緒に部員集めをする準備を始めた。
真雪と佐与が新部活動申請書を出した翌日。
生徒会室にいた壱与は、書記から話しかけられた。
「会長。新部活申請の返答が学校側から来ています」
「ごくろうさま。さっそく読ませていただくわ」
壱与は書記の持っていた紙を受け取り、書いてある文字に目を通した。
「……よかった。学校側が部活を減らす方針だからもしかしたら認められないんじゃないかと心配してたけど、新しい部の設立はまだ大丈夫そうね」
壱与はほっとした。
オンエア部が廃部になったのは、自分が部活対抗戦を企画したことにもある。学校の部活を生徒会主導で減らしている今、本来ならば新部活申請の時点で却下する案件だった。
だが壱与にそれはできなかった。
新しく部活を始めようと立ち直った真雪に、少しでも力になってあげたかったからだ。
ガラケー部の設立は認める。
書類にはそう書かれていた。だが、その下にただし書きがされていることに壱与は気がついた。
「えっ? なんなのよ……これ」
書かれていたことを何度も確認する。
ただし、部員は現時点でガラケーを使用している者に限る。
「ガラケーを使用している者って、この学校でも真雪さんと佐与くらいじゃないかしら。そんな条件では、オンエア部の元部員の入部はできない……」
壱与はこの不可解な条件の意味に気がついた。
提出した生徒が元オンエア部の真雪だったので、学校側がその狙いを理解してわざとつけた条件かもしれない。
絶対にオンエア部を復活させまいと。
次の日。
教室で真雪は壱与からその話を聞いた。
やはり現在ガラケーを使用している者だけ入部できるというのは無理があった。真雪の周りでガラケーを使っている人は誰もいない。もちろん元オンエア部のみんなも、ガラケーではなくスマホを使用していた。
「どうしよう。私と佐与ちゃん以外にガラケーを使ってる人なんているのかな……」
「私も学校側にガラケー使用者以外も入部できるようにならないか話をしてみるわ。時間はかかるかもしれないけど」
「ありがとう壱与ちゃん。私のために」
「真雪さんのためじゃないわ。客観的に見ても、今回の条件はあまりにも理不尽すぎる。生徒会長として、やるべきことをやるだけよ。本当だからね」
壱与は少し顔を赤くして去っていった。
真雪にありがとうと言われたのが照れくさかったのだろう。
生徒会長の壱与が協力してくれている。
それだけでも真雪の心は、いつもの平常心でいられた。
本当にありがとう。壱与ちゃん。
部員を増やす望みがほぼなくなった。
これからは佐与と二人で、オンエア部復活作戦をやらなければならなくなった。