第99話 ライカの修行

文字数 2,053文字

「さて、どんどんいくぞい。次は誰かの? お主やってみるか?」
「ともちゃんの修行を手伝ったからやらないです」
「そういえばそういう約束だったの。残念じゃが、まあ戻るがよい」

 真雪は自分が座ってた場所に戻っていった。
 そして、いままでずっと見てるだけだったライカがすっと立ち上がる。

「ヤット私ノ出番デスネ。チョット足ガシビレテキマシタヨ~」

 ライカが立ち上がり、少ししびれた足を気にしながら、ガラケー仙人の前に立った。

「お主は……海外の血が流れておるな」
「イエス。日本人と外国人ノはーふデスヨ」
「とりあえずその台詞じゃ。平仮名と片仮名の逆転が起きておるようなので、直してやろう。さあ、文章よ。元に戻るのじゃ!」

 ガラケー仙人が杖を掲げると、杖先から光が発した。
 光はライカを包み込んでしまう。

「コレハ何デスカ? チョット変ナ感ジ……………………あら? 片仮名じゃなくて平仮名になってまーす! 嬉しいでーす!」

 ライカは飛び跳ねて喜んだ。

「ライカの読みにくい言葉を元に戻すなんて。ガラケー仙人はいったい何者なんだ?」
「ライカちゃんの言葉がわかりやすくなってよかったよ。ははっ」

 謎の能力を発揮するガラケー仙人。
 寿はただただ驚いていたが、真雪はなんかもう笑うしかなかった。

「では始めようかの。お主がガラケーを壊されたのはどういう状況じゃ?」
「下校中、研究所に向かってたときでーす。完全武装だったガラケーが破壊されました。油断してましたねー。まさか小型レーザー砲で攻撃してくるとは思いませんでしたー」
「なるほど。実弾ではなくレーザーとな。では、お主のガラケーは普通の攻撃には耐えられるということかな?」
「もちろんでーす。私の武装携帯をなめないでくださーい」

 ライカは預かった展示用ガラケーに、手持ちのパーツをいろいろと取り付け始めた。
 しばらくして、

「ライカ式ガラケー装備Ⅱ。以前よりもパワーアップ済みでーす。今度はレーザーさえも寄せ付けませーん」

 ライカの武装携帯が完成した。ガラケー仙人の目がきらりと光った。

「ふむ。それでは始めるとしようかの」
「いつでもいいでーす。足が痛いのでしばらく横になってくつろいでますねー」

 ライカは言葉通り横になりくつろぎ始めた。少し離れた場所に、武装されたガラケーが放置されている。

「無防備すぎる! あんなんじゃガラケーが簡単に壊されるよ!」
「真雪さん。それは違いますわよ。ライカはガラケーの武装に、絶対の自信があるんですわ。何が起きても壊されないという、絶対の自信が」

 ガラケー仙人はガラケーを壊そうと杖で何度もたたくが、姫の言葉通りガラケーはまったく壊れなかった。それどころか外装に傷一つついてない。

「……なるほどの。さすがに一筋縄ではいかんか」
「ふっふーん。私の勝ちですねー」
「じゃが、自信過剰になったその油断が一番の弱点じゃ」

 ガラケー仙人は何やら力をためる構えを始めた。周囲の空気が少し重くなった気がした。

!! いけない! ライカ、いますぐガラケーを守りなさい! 仙人の気が異常なまでに上がってきているわ!」
「姫? あなたがそこまで恐れるなんて、いったいどいういことですかー」
「はぁぁぁぁぁぁ!」

 ガラケー仙人は気合いを込めて拳を振り上げる。そして、瓦割りをするかのように、武装ガラケーに向かって一直線に拳を振り下ろした。

 シャラキェーン!

 聞いたことのない音がした。
 ガラケー仙人がゆっくりと立ち上がったそのとき、武装ガラケーから音が聞こえてきた。

 ピキッ。ピキキキッ。

 絶対に壊れないはずのガラケーの武装にひびが入った。寝転がっていたライカは、驚きの表情で起き上がり、武装ガラケーの外装をたしかめる。

「オー。そんな馬鹿な。絶対に傷をつけられないはずの武装が!」
「武装の弱点を突いて攻撃したのじゃ。どんなに頑丈な物でも、形があれば必ずどこかに弱点があるのでな」
「くっ、悔しいでーす!」

 ライカは携帯の武装を外した。ひびは中の本体まで続いていた。

「自分の技術力におぼれるとは……まったく隙が大きすぎるぞい。まだお主らにガラケーを渡すわけにはいかぬ。これからしばらく、ガラケーにふさわしい人物になってもらうため修行をするのじゃ。よいな」
「はいっ!」

 自分たちの力不足を痛感したガラケー四天王は、大きな声で返事をした。
 ガラケー四天王は、ガラケー使いにふさわしい人物になるために、修行を続けることを決意した。

「ええーっと、私は……みんなの応援かな?」
「お主もガラケー使いじゃろ? もちろん参加してもらうぞよ」
「やっぱりそうなるんだ~」

 真雪はがっくりと肩を落とした。
 そんなとき、誰かが玄関から道場に入ってきた。

「じいちゃん。誰か来てるの?」

 真雪の学校の制服を着た、ショートヘアーの小さな女の子だった。
 どこかで見たことがあると思っていたが、それは真雪のよく知っている子だった。

「さ、佐与ちゃん!?
「真雪先輩!? どうしてここに?」

 真雪は意外なところで佐与に出会った。
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登場人物紹介

真雪(まゆき)


主人公。

二年生になっても、たまに人見知りする。

明夏(めいか)


真雪の幼なじみで親友。

活発でレトロゲームが好き。

日菜(ひな)


真雪の元クラスメイトで、真雪のことが大好き。

ちょっと変な性格で語尾が変。特技は自己流の落語。

樹々(じゅじゅ)


オンエア部の部長。

相変わらずいつも冷静でクールな先輩。

西瓜(すいか)


真雪のことを面白い人だと思っている先輩。

自由気ままな人。

もなえ


真雪のいとこで元気な女の子。

中学生になり、真雪の家から学校に通うことになった。

佐与(さよ)


一年生。

真面目な性格で、背がもなえと同じくらいちっちゃな子。

あみ


人気アイドルグループ「みみみローリング」に所属する清純派アイドル

ゆうたと一緒に真雪の高校に転校してきた


学年は一年生で、真雪の後輩。佐与と同じクラス

こえだ先生


数学の先生で、一年生のクラス担任

授業中は真面目だが、それ以外のところではけっこう雑な性格

ガラケー四天王


真雪と同じ二年生の寿(ことぶき)、とも、姫(ひめ)、ライカの四人で、元ガラケー使い

持っていたガラケーを、スマホを普及させようとする謎の忍者軍団に壊されてしまった


真雪と仲良くなったいきさつなどは、別作品「真雪まだガラ女子」のほうでわかるらしい

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