第9話 一度落ちた作品を再応募していいか

文字数 2,565文字

 では、次に行きます。何度も落ち続けた私ですが、
 『一度落ちた作品を別の文学賞に出していいか』
 について私なりの考察を述べます。
 これについてはネットや著書でも様々な意見があります。
「一度落ちた作品を別の文学賞に出すと、後出しされた文学賞は格下と言われたような気になる。それなら一度落ちた文学賞に、書き直して再度挑戦する旨を明記し、応募した方がいい」
「下読みさんはいろんな文学賞をまたいで読んでいるから、また性懲りもなくこの作品かと落とされる」
「自分の作品なのだから二重投稿でなければ、出すのは自由。でも新しい作品を書くことも大事」
「三次選考や最終選考に残った作品ならば他の文学賞に出せば評価してくれる」
 いろんな意見がありました。

 私は、一度す〇文学賞で一次選考通過した作品を改めて書き直し、「第〇回で一次選考を通過した作品です。改稿し、再応募します」と明記し、同じ『す〇文学賞』に出したことがあります。形を整え、話の内容自体も深く掘り下げたつもりですが、落選でした。
 私が一次を通過した年は、七十作品以上が予選を通過していましたが、翌年になると四十作品以下に減っていました。翌々年も変わりませんでした。憶測ですが、私が予選を通過した年は審査を甘くしすぎたと文学賞側が反省し、翌年から予選通過基準を厳しくしたのかなと。
「文学作品」対象の文学賞は、門戸が狭く、一度落ちた作品に対しては評価が厳しくなる傾向にある、と個人的には思います。ですから、よほどの改稿がない限り、予選通過も難しいのではないか、と思います。

 エンタメ系の文学賞ですが、「最終選考に残った作品を審査員の指摘通りに書き直し、再度同じ文学賞に応募したけれど落選した」、「編集者の講評通りに書き直したけれどダメだった」という話はちらほら聞きます。
 もちろん逆バージョンで、「指摘された部分を直し、他の文学賞に出したら受賞した」、「直さずに他の文学賞に出したら受賞した」、という話もあります。
 いくつかの著書や記事で、「三次選考通過作品と最終選考に残った作品は大差ない。要するに編集者の好み、運みたいなもの」、と書かれていました。また、「最終選考作品が少ないと三次選考通過作品から引っ張ってくる」、「最終選考作品の傾向のバランスを取るために三次選考通過作品から毛色の違った作品を入れる」という描写は、文学賞について書かれた小説に幾度も出てきます。一種の脚色かもしれませんが、これが本当だとすると、やはり、三次選考を通過した作品は最終選考作品と大差なく、受賞の可能性もある、のかもしれません。
 しかし、それでも私は、
「受賞が視野に入った作品を手直しする一方で、新しい作品を書くこと」
 を強くお勧めします。

 私は文芸誌で受賞作の講評を読んでいます。(注)今はもうしておりません。
 ある文学賞で最終選考まで残った作品に、「ここが惜しい、また書いて下さい」、と審査員が激励ともいえる講評をしていました。
 それからしばらく経ち、別の文学賞でその作品が佳作になっていました(タイトルが個性的だったので覚えていました)。
 佳作ならいいじゃん、と思うかもしれませんが、佳作では本を出してもらえない文学賞でした。その上、その文学賞は鷺まがいの賞でした。
 では、また別の文学賞に出したら……、という期待は残ります。私も期待します、はい。
 その場合でも、最終選考に残った作品を手直しして他の文学賞に出しながら、同時進行で新しい作品も書きましょう。
 ある作家は、「落とされ続けた怨念が作品を書き続けるエネルギーになっている」、そうです。「落選した作品を元ネタにして新しい作品を書いている」、とも。
 別のある作家は、小説家志望者に向けて、「落ちた作品は忘れて(手直しして出し直さず)、新しい作品をどんどん書け」みたいなことを言っておりました。私は、〈そんなにどんどん書けないよ〉、と思った記憶があります。
 ここで言う「落ちた作品」が、一次選考を落ちた作品なのか、二次選考を落ちた作品なのかは分かりかねますが……。
 前者の作家は、「十年の間、二次と三次をうろうろしていた」そうです。
 二次選考と三次選考を行ったり来たりする応募者は少なからずいるそうです。私からすればうらやましい話ですが、本人にとっては結構辛いものでしょうね。上にも行けず、下にも行けない、どうすればいいんだ、と。
 こういうケースは、おそらく同じところで躓いていると思うので、それこそプロ作家に意見を求めてはどうかと思います。実際は、自作の欠点に気づいている人もいると思いますが、第三者(プロ)にガツン、と言ってもらわないと直せないのなら、プロにみてもらうのも一つの手だと思います。
 『プロ作家養成塾 小説の書き方すべて教えます』著者:若桜木虔(わかさきけん)(ベスト新書)二〇〇二年
 若〇木さんは、「小説の書き方」についての著書が多数あり、また小説指南の講習会をし、またメールでの指導もしております。
 著書の最後のページに小さな字で、作品の添削のご案内をしています。今現在もされているかどうか分かりませんので、ネットで検索して下さい。くれぐれも、いたずらメールは送らないようにして下さい。

 話を戻し、受賞するまでも、受賞してからも、プロ作家であり続けようと思ったら、作品をどんどん書く能力がないとやっていけない(生活できない)、ようです。
 三者三様の好みや思考があるとはいえ、
 『一度落ちた作品は、最終選考通過作品でない限り、よほど、全くの別作品と思えるくらい改変しない限り、結果は同じ』
 かもしれません。
 そして、受賞したい(プロ作家になりたい)なら、三次か最終選考を残った作品でない限り、文学賞には出さずに手元に置いておき、新しい作品を書いて応募した方が手っ取り早い、かもしれません。
 三次や最終選考まで残らなかった作品は大事にしまっておきましょう。
 それは努力の結晶です。
 また、いつかどこかで形を変えて役立てることができます。私はノベルデイズさんに載せて、役立てています。おいおい。
 だって、どの作品も思い入れはあるし、自分なりに一生懸命書いたんだから、落選しようがしまいが、大切な作品の一つに変わりありません、ですよね。



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