第7話 どの文学賞に狙いをつけて書くか

文字数 3,747文字

 『では、どの文学賞に的を絞って書けばいいか』
 何作も書いていると、自分の作品の傾向や原稿用紙何枚くらいというのが分かってくると思います。一作品を書き上げるのにどれくらいの日数がかかるか等も。
 まだ分からないという方は、何作か書いてみてはいかがでしょう。
 短編向きなのか、長編向きなのか、ラノベ向きか、一般小説か、エンタメ系か、文学か……。ジャンルは、SFか恋愛ものか、時代劇か、ミステリーか……。
 私の作品はどれも、長さは三百枚以上、文体はエンタメ、内容(傾向)は中間小説か、もしくはエンタメより、ノンジャンルが多いです。作品にかかる期間は7か月から1年以上。(作品によっては二年以上かかっているものもあります……) 
 目的もはっきりさせておきます。
 受賞すればいいのか、作品が受賞し本になればいいのか、本になった後、受賞後第一作も出したいのか(プロへの道を目指したいのか)、など。
 短編では受賞しても本にはなりません。受賞してもネットでの公開だけで紙面に載らない文学賞もあります。
 お目当ての文学賞を決めるにあたり、これは止めておいた方がいい、と思うことは、
 本を出すだけでいいのに、新人賞発掘の文学賞に出すこと、です。
 えー、そんなこと言ったって、本を出すには文学賞で受賞しないと出してもらえないし、自費出版じゃ売れない。受賞すれば、○○文学賞受賞作品という肩書で本が出せる。それに新人賞はプロアマ問わずの文学賞より、予選を通過しやすいし、編集者がコメントをくれることもある。――だから。
 ……気持ちは分かります。
 私も同じように考えている時期、ありました。作家になると望むには覚悟がなく、本を一冊、できたら数冊出せたらいいなあ(図々しくて、すみません……)、なんて考えたりしました。それで上手く波に乗れたらそのまま作家に……、などと夢?を膨らませていました。 ……やっぱり調子いいな……。
 もちろん、作家になるつもりはないけれど新人賞に応募して幸運にも受賞したとしても、黙っていれば分かりません。
 作家志望で新人賞に受賞した方だって受賞後第一作を出せずに消えていく、第一作は出せたけれど次で行き詰る人は少なくないそうです。だから、プロ作家になるつもりはないけれど新人賞に応募して受賞しても、黙っていれば分かりません。
 しかし、やはりこれはお勧めしません。
 ある新人賞の編集長は、「受賞作品だけで終わる新人が多い」、とぼやいて?いました。
 出版社側は新人を発掘する(文学賞受賞者が決まる)までに、下読みさんを雇い、一次通過作品、二次通過作品、三次通過作品……と編集者で読み講評し、審査員を集め、受賞したら受賞パーティーを開く。受賞パーティーはお金がかかるため、他の賞と一緒にすることもありますし、開かないところもあります。
 このように、ただでさえ忙しいのに、労力と時間とお金がかかっています。それもこれもこれから活躍してくれる可能性を秘めた新人を発掘したいからです。
 出版業界は赤字経営で、文学賞の運営も儲けになりません(読んだ話)。
 本を一冊出したいだけなら自費出版で出せよ。自費出版代を出版社に肩代わりさせるために応募してくるんじゃねえよ、と思われても、反論できません。
 ……あああ、ごめんなさい。今は、決してそのようなことは考えておりません。ただ、作家になる夢を抱くほど自信も筆力もないだけで……。
 もちろん、自分の胸の内だけに秘めていれば絶対にばれない、です。けれど、やっぱり、出版社側の苦労を考えれば止めてあげましょう。
 それでも新人賞にこだわるなら、せめて、〈よし、受賞後の第一作はもう出来上がっているから受賞しても大丈夫〉くらい準備しておきましょう。
 出版社側は受賞後第一作は面倒見るけど、それ以降の作品は作者の自由というスタンスです。
 私としては、放り出されるより、そのままその出版社に居着きたいですが……。

 話を戻し、
 よく、応募時に、作品とは別にして、表紙に筆歴を記載するよう書かれてありますが、どの程度書く力があるか、どれくらい書き続けているか、を文学賞側が見たいからではないかと、個人的には思います。冷やかしで出しているのか、ぽっと出か、それとも、作家になって書き続けるつもりか……。
 筆歴は作品自体の評価には影響しません。作品の出来不出来で純粋に審査してくれます。そのために、作品を読む時は表紙(作品タイトル、氏名、筆歴等)を外す、そうです。
 あれ、また話が逸れてない……?

 『どの文学賞に的を絞って書けばいいか』に話を戻します。
 文学賞一覧のサイトから、自分の目的、自作品の傾向に合いそうな文学賞をピックアップし、少なくとも過去数年の受賞作と講評をチェックします。
 作品によって、中間小説はこの文学賞、エンタメのアクションはこれ、文学作品はこっちというふうに、傾向ごとに応募する文学賞を決めておくのもいいし、幅広く受け入れてくれる文学賞を選んでおくのもいいと思います。
「そんなこと言ったって自分に合う文学賞がどれか分からない。どうしたらいいんだよ」と思われた方は……、そうですね……。
 貴方がまだ作品を世に出していない新人で、書かれたその作品が、短編ではなく中編程度の長さ(原稿用紙二〇〇~五〇〇枚)であれば、私は『小説す〇新人賞』をお勧めします。 ←応募規定に変更があるかもしれません、募集要項を確認して下さい。
 個人的に、『小説す〇新人賞』は、文学よりの作品もエンタメよりの作品も、ノンジャンルも幅広く受け入れてくれる気がします。そして、受賞すれば本にしてもらえ、また受賞後第一作が出版されるまで担当者がつきます。←現在もそうか、調べて下さい。情報は日々変わります。
 同じ新人賞で、小説〇代長編新人賞がありますが、小説す〇よりも、キャラが立ったエンタメよりの作品が受賞している気がします。そして、小説す○より、何か突出したものがあれば少々の欠点があっても見過ごしてくれる気がします。←私の勝手な意見です。傾向や情報は日々変化します。ここ数年の受賞作品をお読み下さい。
 小説現〇長編新人賞は、一次選考と二次選考を通過した作品すべてに、編集者からコメントを貰えます(ネットで公開)ので、とても魅力的です。 (注)今もしているかは分かりません、お調べ下さい。
 小説す〇新人賞は、一次以上か二次以上かは忘れましたが、選考通過作品の中から応援の意味を込めて、数十作品に編集者がコメントします。(文芸誌『小説す〇』に掲載)
 (注)これも現在も行っているは分かりません。各自でお調べ下さい。
 『小説す〇』は、作品の傾向ごとに担当があるようです。私はアクション作品を出し、コメントをいただきましたが、他にもアクションと思わしき作品には同じ編集者がコメントをしていました。

 (追加)二○二四年三月十日
 いくつかの著書やネット記事を読みますと、
「複数の作品を同じ年の同じ文学賞に出すこと」はお勧めできません。
 二つある作品のうち、評価の悪い方がその作家の実力と、編集者は思うそうです。どちらの作品も同じ評価であれば、そのくらいの筆力なのだなと思われ、どちらの作品も同じような内容だと、その作家はそれしか書けないのだなと思われる、そうです。
 それならば、一つの作品はその文学賞に、もう一つは別の文学賞に応募した方がいい、ようです。
 私は、幸い?にも一年に一作しか書けないので、同じ年に二作品を同じ文学賞に応募する芸当は出来ません。
 プロ作家になりたければ、一年に数作品は書くように、みたいな記述はありましたが……。

 ご存知だとは思いますが、二重投稿は絶対に止めましょう。発覚すれば、作家としての道は閉ざされ、応募してもスルーされる、可能性が大です。
 二重投稿とは、ある文学賞に応募した作品を、結果が出る前に(ここ重要!)、別の文学賞に出すこと、です。
 文学賞の応募要項にも、『二重投稿は応募対象外』と、書いてあると思います。
 二重投稿がどれくらい駄目かと言うと、二人の人と婚約して、相手が結婚準備を着々と進め、ようやく結婚式を迎えた当日に二股がバレたくらいのヤバさです。分かりにくかったらすみません。
 前に述べましたが、文学賞受賞作品を決めるまで出版社側(文学賞側)は資金と人手と時間を費やしています。ようやく受賞作品が決まったと思ったその作品が、実は他の文学賞でも受賞していたとなれば、出版社同士に禍根を残します。おそらく。
 投稿サイトを掛け持ちするのとは訳が違うということを認識しておきましょう。
 言わなくても分かってるよ、と言う方、スルーして下さい。老婆心です……。
 ちなみに、○次選考を通過しなかった作品はもちろん、受賞しなかった作品(佳作であっても本にならない、出版社側との契約が生じない作品)を別の文学賞に応募することは全然問題ありません。
 とにもかくにも、結果が出てから、別の文学賞に応募しましょう、ね!

 追伸.最終選考まで残らなかった作品を再応募するのはどうか、という議題は別のところで話していますが、それは個人の問題であって、二重投稿でなければ全然構いません。

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