第20話 プロ作家として生き残るための能力

文字数 2,946文字

 いろんな著作物を読んで、いろんな失敗をして、私なりに思った、『小説家(プロ作家)として生き残るために必要とされる技能(能力)』を書こうと思います。
 と、その前に、著書数冊を読んで分かった?受賞するための教訓をちょこっと書いておきます。一般的に、受賞しないとプロになれませんから。
 以下の事柄を知った(読んだ)時は、私がどれもできないことばかりだったので、……ショックでした。
 『受賞したいなら……』
 一.自分の強みを見つけろ。
 一.どんどん新しい作品を書け。
 一.面白い作品を書け。
 一.出し惜しみするな。
 一.テーマは捨てろ。
 一.好きなものは捨てる。 ←二次創作は止めろという意味かな?
 一.作品書き上げるのに一年もかけるな。
 一.渾身の作品を書こうとするな。 ←つまり、「一生懸命書け。しかし、この一作しかないと思って書くな、落ちた時にショックが大きすぎるから」、ということだと思います。
 例えば、弓道で、「一射絶命」という言葉があります。一射に命をかけろ、みたいな意味です。通常、試合は一人四射です。大学生の大会なら、一日で四試合、五試合あります。社会人でも二試合、三試合あります。一射絶命だと、一試合も戦えないわけです。
 そして、矛盾しているようですが、
 一.内容の濃い作品を書け。内容が薄っぺらい作品は書くな。 ←個人的には、勝手だなと思いました。
 一.傾向と対策を考えろ。 ←これについては、他の方(編集者か作家)は、傾向と対策がなくても予選は通過できる、と述べております。作家になれるとは、書いておりませんでしたが……。
 一.五年で受賞出来なかったら作家の道は諦めろ。 ← えええっ、私十年頑張りましたが。かなりショックなんですけど……。ああ、でも現実的(お金)に考えたら、そうなりますよね。
 ……他にもいろいろあった気がしますが、忘れたので、次に行きますね。

 では、本題。
 私の考える『小説家(プロ作家)として生き残るために必要とされる技能(能力)』

 〇短編でも長編でも、連載でも、どんなジャンルでも書ける、柔軟性と発想力がある人。
 ある小説家は、「文芸誌の連載作品を落としそうな作家さんの穴埋めに読み切りを頼まれる」ことがあり、「原稿用紙○○枚くらいで、○○な話を書いてほしい」と注文されるそうです。
 よくノベルデイズさんで課題文学賞「○○したくなる話」や三つのキーワードを使った課題が出されます。小説の書き方講習会では、「このテーマで原稿用紙二〇枚の話を書いてくる」課題を出され、それを講師が添削指導することがあるようです。
 私はこれ、書けません。全然思い浮かびません。何度か、ノベルデイズさんの課題文学賞に出したいと思ったのですが、アイデアが全然出てきません。
 私は自分でテーマを決め、それについて調べ、考察をまじえ小説を書いています。ですから、抽象的な『○○な話を書け』と言われても書けないのです。
 そして私は短編が書けない。ラノベを書いていた時代、原稿用紙一七〇枚以内の作品募集の文学賞に出してみましたが、何回出しても最後は慌てて終わらせたような作品になってしまいました。何度も失敗するうち、三〇〇枚以上の作品が一番書きやすい、という結論に至りました。
 長編でも短編でも、どんな注文でも臨機応変に書ける人は強い、と思います。

 〇とにかく新しい作品を生み続ける。
 一年間に少なくとも単行本二冊出す(書ける)、ラノベなら年間三冊出せないと最低限度の収入が得られない(生活できない)そうです。一つの作品を印刷し発行する時間を一か月半と仮定して、一年間に二つ作品を世に出そうとしたら、九か月で二作品書かないと間に合いません。
 しかし、収入は作品の長さや印刷部数、印税率により変動しますので、〈この作家(作品)は売れる〉という確信が出版社側にないと部数を刷ってもらえません。新人作家はそういう意味では不利です。足元を見られて部数を削られたり、印税率を下げられたりしたら、単行本二冊程度では生活が破綻する……、そうです。芥川賞作家でもバイトと掛け持ちしている方は少なくないとか。
 要するに、小説は売れない、小説家は儲からない、です。
 私は一作品にかける執筆期間は最速でも六か月です。それ以上の年月をかけている作品がほとんど、全部です。とても九ヶ月で二冊は書けません。そういう意味では私は小説家向きではないです。

 〇締め切りは必ず守り、かつ、一定程度の質を満たす作品を書ける。
 仕事がなく、いろんな出版社に電話をかけやっと仕事を融通してもらっても、締め切りを守れず、安定した筆力(良質な作品を書ききる能力)がないと、次から仕事を回してくれなくなる、そうです。
 編集者から「クリスマスを過ごす恋人の話を書いてください」等、注文がある場合は、初めて書く類の作品でも一定程度の質を保ち書ききる能力が求められます。
 また、コンスタントに一定の基準を満たした作品を生み出さないと、その作家の数ある作品の中から、運悪くいまいちな作品を読んだ読者が、この作家の本はもう二度と読みたくない、となってしまいます。
 私は有名な作家の作品で残念な作品に当たり、それ以来、その作家の作品は、有名な作品であっても購読していないです。

 〇自分から作品を売り込みに行ける、自分で仕事を取ってこられる行動力とコミュニケーション力がある。
 仕事がないと自分から編集者に電話して、「仕事ありませんか」と相談するそうです。作品が映画化された作家さんでも仕事にあぶれるそうですから、……過酷です。
 時折、新聞の宣伝広告に有名作家の顔写真と作品紹介が出ています。これも売り込み努力の一つらしいです。
「(小説を売るために)顔を出してはどうか」、「サイン会を開いてはどうか」と編集側からしつこく勧められるそうです。自分の顔を出したくない作家さんはどうするんだろ……。
 編集部に電話をかけて「仕事ありませんか」と聞く。その行動力が私にあれば、一般企業の営業職に正社員として雇ってもらっています、きっと。……正社員で働いたことがないので断言は控えますが。
 また、仕事を貰えても、質の良い作品を締め切りまでに納品できなければ、それ以降、仕事を貰えません。そのプレッシャーたるや……。
 私は友達や家族に「作品を読んで」と言えないから、言っても読んで貰えない(本を読まない、多忙等)から、この投稿サイトを見つけて載せているのです。とても売り込む度胸はありません。
 そのうえ、お金も絡んできたら、編集部に電話する前に私の心臓が止まってしまうかもしれません……。

 いろいろ書きましたが、私にとって、
 作家とは想像力と行動力で自分の作品を売り込む職人
 のように思います。そして、最低賃金以下の職業とも言えます。
 本が売れない → 生活できない → 面白い作品をどんどん書かなければいけない → 本は売れない。
 ……悪循環ですよね。
 小説家は五年生存率、一〇年生存率と例えられるように、小説家として五年間続けるのは大変みたいです。生存率って、あんた。ガンじゃないんだから……。
 実際、それくらい小説家として生き残るのは過酷なのでしょう。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み