第11話 引用の可否

文字数 1,285文字

 『引用の是非』
 引用をする是非については、十年以上、気にしていました。〈盗用にならないか〉、〈著作権侵害にならないか〉、〈これは二次創作にあたるのではないか〉と。
 著作権について書かれた著書やネットを調べましたが、
「法律文であろうとそこに書き手の意図(解釈や表現)が入ればそれは著作権の対象になる」、「著作物を要約することも引用にあたる」、「新聞の書評も著作物の対象になり引用する場合は著者の承諾を得る必要がある」等々、『引用自体が悪』のような印象を受けました。
 そうすると私の執筆方法自体が間違いということになります。
 文献の内容を使用する際は、引用文献と著者名を明記していますが、要約も引用にあたるなら、情報を自分なりに解釈し物語に盛り込むのも『盗用』ではないかと。
 同じ「著作権侵害」になるなら、せめて著者名と文献タイトルを明記して引用しようと思いました。その方が、少しは罪悪感が薄れ?、専門家がこう言っているんだと作品に真実味が増します。
 まあ、そうはいっても、最後に投稿した作品『ダイヤモンド――』で編集者から、〈引用し続ける限り、文学賞は受からない〉と、ズバリ指摘されたように感じ、(感じただけで直接的にそう言われたわけではありません)、私の中で、小説家になる望みが崩れました。
 『引用』すれば物語の流れが途切れ、物語の世界から現実に引き戻されます。文中に引用を入れる場合、話の流れを考えると著者名や本のタイトルを記述できません。
 著作権うんぬんの問題だけでなく、物語性を損なう意味でも小説に引用はふさわしくないのかもしれません。
 『ダイヤモンド――』は特に引用が多く、公人とはいえ現在も生存している人物(大統領と副大統領)の名前をそのまま載せているので、その意味では、……あかんだろ……。
 言い訳になるかもしれませんが、私は研究機関に勤務していました。(注)実験をし、論文も読んでいましたが、研究者ではありません。
 研究の世界では、どれだけ自分の論文が引用されたかが実績になるため(インパクトファクターと呼ばれています)、もちろん引用する際は著書名や雑誌名、頁等を明記しなければなりませんが、引用に関してはポジティブなイメージを抱いていました。
 それが、小説になると『盗作扱い』になるかもしれないと知り、ショックでした。
 著作権に関するネット記事や文献を読み漁りましたが、……よく分かりませんでした。
 『文章を要約することも引用になる』、『引用の際は著者の承諾を得なければならない』等々、無理な話ばかり書かれていたような気がします。
 一般人が著名人(著者)に電話して了解を得る、ってハードル高すぎるだろ……。
 最終的に、『引用しないことが無難』、という結論に至りました。
 そして、
 「新書と小説の橋渡し役的な作品」
 「新しい知識が得られ、小説としても楽しめる作品」
 私が目標とする書き方は小説ではなく、第三者からすると二次創作だったかもしれないと、分かりました。それを十年かかって気づきました……。

 あれ、話が暗くなってきたな。すみません。
 ……逃げろ!

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