第23話 最後に(発表の場があるっていいね)

文字数 2,459文字

 最後に――。
 紆余曲折してきた私ですが、文学賞に応募し終わった作品がたまり、また、それらの作品の続きを書こうと思い、文学賞に応募するのは止めました。いつかまた、読み切りの新作ができれば文学賞に応募するかもしれませんが、今のところ、その予定はありません。

 さて、今までに書いた作品と、その作品の続きを誰かに読んでもらいたくて、私は小説投稿サイトをいくつか検索しました。
 それまでweb小説は、横書き、異世界ものが多い、イメージがあったのですが、幸いにもノベルデイズさんに辿り着きました。
 ノベルデイズさんは、文芸も幅広く取り上げ、ジャンルも多彩、エンタメも日記も評論もOK。作品は長くてもいいし、短くてもいい、続きものでもいいし、シリーズものでも、何でもOK。
 何より、縦書きができ(個人的に縦書きにこだわりあり)、自分のアトリエがある。
 自分のアトリエ、個展みたいでテンションが上がります。これは決定的でした。
 という訳で、ノベルデイズさんに投稿することに決めました。
 web小説初心者で、右も左もわからず投稿し始めてから、一年以上が過ぎました。
 いやあ、居心地いいですね。毎日が楽しくなりました。張り合いがあります。
 昔であれば、自分の作品を読んでもらおうと思えば、小説や本を読んでいる友達に的を絞り、勇気を出して頼み、それでやっと二、三人です。……交友関係が狭い私はそれくらいです……。無理に頼んでも、彼女たちも多忙ですし、好みもあります。全作品は読んでくれないでしょう。
 私は文学賞に応募している時は、一日三時間かそれ以上の時間を、一年以上かけて書き上げていました。
 文学賞に作品を郵送した五日間ほどは解放感や達成感で高揚していますが、その後は、ああ書けばよかった、こう書けばよかったと悔み、次の作品に着手しながら、応募済みの作品をちょこまか、ちょこまかと手直ししていました。
 一次の発表が近づいてくると落ち着かず、〈落ちていたら……〉と想像してはへこみ、〈通過しているかも……〉と望みをつなぎ、書く作業ははかどらず――。
 発表の日は、心臓ドキドキで本屋に行き、お目当ての文芸誌をめくり――。名前がなければ、この世の終わりとばかりに落ち込みました。
 幸いにして一次を通過しても、数ヶ月後の二次発表までまた落ち着かず、次の作品を書きながら悶々としていました。
 ……こんなにメンタル弱いと、万一、念願かなって作家になれたとしても長生きできません。私は長生きしたいです。
 奇跡的に、受賞してやっと本を出せても、一ヵ月かそこらで書店から消え、売れなきゃ絶版。売れない作家と思われたら、どこからも声をかけてもらえず、自分で「仕事ありませんか」と電話をかけ続けなくちゃいけない。
 残念ながら、その姿を容易に想像できる自分がいます……。
 ところが、しかし、です。
 ノベルデイズさん(小説投稿サイト)に投稿したら、数人どころかもっと多くの人に読んでもらえ、自分で退会するか、サイトが閉鎖しない限り、ずっと消えずに残ります。 ……ですよね?? 消えないですよね?

 ノベルデイズさんには、感謝感謝です。
 通りすがりの方も、表紙開いただけの方も、読んで下さった方も、途中で読むのを断念された方も、本当に有り難うございます。
 書く張り合いができました。本当に有り難うございます。
 こんなふうにプロ作家への道を一旦諦めた私ですが、自分のペースで、自分の書きたいものを書き続けられ、なおかつか公開できる場がある。そのことに感謝申し上げます。

 小説家になれる人は少なく、小説家で居続けられる人はもっと少ないです。
「好きな事でお金を稼げる」、とても魅力的ですが、小説家であり続けるために生活や娯楽、いろんなものを犠牲にしなければいけないでしょう。少しでも面白い作品をと、周りからいろいろ言われるうち、自分が書きたかった小説が書けなくなるかもしれません。
 小説家でなくなったら、辛くて趣味としても書けなくなるかもしれない。そうなると仕事と趣味を一度に失うことになります。
 そういう覚悟があるか、生活のためにこだわりを捨て小説を書き続ける生活ができるか。
 私は自分に問いかけました。結果、無理だな、と思いました。
 けれど、小説家の道を諦めてもこういう投稿の場がありました。そこにたどり着けたのは、幸運だと思います。
 
 どこかのサイトか本で、
「小説家という資格はない。自分がそう思ったら小説家だ」と書いてありました。個人的には、とても勇気づけられたのを覚えています。
 要するに、本を出していなくても、作品を書ききれなくても、「私は小説家だ」と思えば小説家ってことですよね。 
 言うくらい、思うくらい、誰にも迷惑かけないし、元気が出るならいいんじゃないでしょうか。
 諦めきれなかったらまた文学賞に応募してもいいですし、こちらのゆっくりまったり生活に浸りながら、時折文学賞に挑戦してみるのもいいと思います。
 兼業に、副業に、趣味に、隙間時間に、定年後の生きがいに、書き続けたらいいと思います。ペンと紙があればすぐに書けるのですから――。今は、スマホかな。

 私は応募生活の時は一喜一憂、あくせくしていましたが、今はゆったり気分で、時間にも余裕があります。最近はあちこちで、作品を読んでいます。
 仕事が始まれば慌ただしい生活に戻りそうですが、今はこのひと時を楽しみたいと思います。
 私事ですが、仕事が決まり、三月下旬から働くことになりました。提出書類や手続き、準備物の購入等をしなければなりませんが、時短勤務なので、仕事に慣れてきたら、また少しずつ書きたいと思います。
 温かいお言葉を下さった方、応援ありがとうございます!
 本音を言うと、小説が趣味の一般人の話を、これだけたくさんの方に読んでもらえるとは思いませんでした。
 この場を借りて、改めて、御礼申し上げます。
 また、何か思いついたら、書かせて下さい。

 最後まで有り難うございました。

 (了)
 
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