第15話 本が売れない理由と書く人が増えた理由

文字数 2,671文字

 次に、本が売れない理由を、語っていこうと思います。
「そんなの知っているよ」という方、スルーして下さい。

 私が思う、『本(小説)が売れない理由』
 〇本代が高い。
 単行本なら二千円前後します。漫画やドラマ、映画は無料か月額料金数百円で視聴できます。
「本は高くない。二千円で三日間、本を堪能できるのだから安いものだ」旨の編集者の意見を目にしたことがありますが、それは本が好きな方の意見であり、同じ二千円を使うなら、私はランチ(外食)を二回したい。
 本を買うにしても、小説より漫画を買いたい。専門書やハウツー本を買いたい。想像の産物である小説より、専門家や研究者が五年、十年、それ以上の年月をかけて集めた情報やデータと、分析や考察が載った専門書や新書に、私はひかれます。
 どうしても同じ二千円を小説で使うなら、品質が保証されているプロ作家さんの小説を買いますし、自分が好きなジャンルを買います。懐が寂しいなら図書館で借ります。図書館は、漫画は少なくても、小説は大量にあるからです。
 小説は安ければ買うというものではなく、分厚ければ〈え、こんなに読めないよ〉と思い、薄ければ損した気分になり、上下巻で分かれていたらもうお手上げです。 ……炎上するなぁ、これ。

 〇小説を読むには時間と手間がかかる。
 小説は字だけなので、映像も感情も全部自分で想像しなければいけません。
 漫画やアニメなら画や映像で頭に入ってくるため分かりやすいし、画力があれば心情、吐息、心臓の鼓動等、目で見えない部分も手に取るように分かり、時間があっという間に過ぎます。そんな漫画でも売れなくなっていますし、アニメやドラマ、映画は〇倍速で視聴される時代です。
 小説は一冊読むのに時間がかかります。私の場合は早くて二、三日かかり、そのうえ(老眼が入ってきたため)字が小さいと読みづらいです。

 〇面白くない。読み終わるまで面白いかどうか分からない。
 小説は字だけで、最後まで読まないと面白いか分からない。私は二、三日かけて読んだ小説で、がっかりした経験が多々あります。プロ作家の作品や芥川賞作品、他の文学賞受賞作品で、です。今まで例にあげた以外にも、いくつもあります。芥川賞作品はもう読んでいません。
 面白い物語が読みたいなら漫画やアニメ、映画でもいい。感動したいなら音楽でもいいです。
 一言弁護するなら、小説に対しては他の娯楽より見る目が厳しくなるように思います。本当はそんなに酷い内容ではないのに、小説になると目につく、みたいな。
 漫画やドラマでは許せる設定が小説では許せない、気がするのです。なぜでしょうね。
 例えば、漫画を、これ本当に面白いんだろうな、と疑いながら読むこと少ないですよね。小説は、あります。
 私は小説を買う前に最後の方をパラパラとめくり、ラストを確認して買うことがあります。……あかんやん。そうしないと安心して読めないからです。好きな作家さんなら安心して買いますが、それでも興味のないジャンルであれば買いません。 おい、こら。(訳:ちょっと、そこのあなた)
 二千円で買って、三日かけて読んだ小説が全然面白くなかったら(自分の嗜好に合わなかったら)怒りを感じます。
 わずかな空き時間に、他にも娯楽があるのに、せっせと字だけの小説を老眼と闘いながら読み、眠気と戦いながら一行読むごとに頭の中で映像を組み立てる地道な作業を行い、読み終えた作品のエンディングが拍子抜けだったら、怒ります。
 お金、時間、労力が、作品の良し悪しで全部パーになるのです。
 そう考えると、小説を見る目が厳しくなる要素がてんこ盛りです。
 また、小説は、漫画よりも没入(感情移入)しやすいと思います。主人公(登場人物)に憑りついた霊のように、主人公(登場人物)の五感、心情を感じ取れます。誤字脱字くらいなら許せても、情景描写に違和感があると、現実に引き戻される(しらける)。音楽に聞き入っていたら突然イヤホンを外される、ような感じです。小説では少しの違和感が大きく感じられ、漫画では許せる違和感が、小説では許せなくなります。

 〇買っても置く場所に困る。
 単行本は何冊にもなると置く場所に困ります。電子辞書やスマホ一つで楽しめる、というわけにはいきません。小説も電子書籍化すれば字も大きくできるし、場所も取らないし、わざわざ買いに行く手間も省けるし、何より安くなるのでは、と思います。
 ただ、私は、小説を画面上で読むよりは、紙面で読む方が没入しやすいです。

 『本は売れないけれど、書く人は増えた』
 昔は、インターネットが普及しておらず、スマホもありませんでした。
 私は家でゲームは禁止されていたので、本を読むか、テレビを見るか、音楽(CD)を聴くか、勉強するか……に限られていました。本もそれほど高く感じませんでした。ラノベは五〇〇円出してお釣りがきました。年がバレる……。
 読む体力?もありました。若い頃であれば、漫画でも小説でも、ホラー、サスペンス、SF、ジャンルを問わず、学校でも家でも夜遅くまで夢中で読んでいましたが、四〇代になると(年がバレた)、小さい字が厳しい……。集中力も続かなくなり、就寝時間は小学生の時より早くなりました。
 特にフルタイムで働いている時は貴重な一人の時間を、読むのに時間と手間がかかる読書に使おうとは思えませんでした。
 今は、インターネットで何でも見られます。音楽は聴けるし、漫画も読める。月額料金を払えば、映画もドラマも好き放題見られる。私は無料動画を見るのにはまっています。
 無理して本を読まなくても短い時間で手軽に好きなものを堪能でき、感動できるのです。
 映画もドラマも〇倍速で視聴され、テレビは録画してCMは飛ばし、やはり〇倍速視聴。
 テレビ局側もそれが分かっているからか、番組と番組の空白時間を短くしたり、「CMの後で」と、結果を先延ばししたり。視聴者とテレビ局側の知恵比べです。
 テレビですらインターネットに押しやられ視聴率が下がり続けています。面白いかどうか分からない一冊二千円前後する単行本をわざわざ買って、何日もかけて読もうとは思わないです。
 そんな状況ですが、SNSやブログ等で文字を書いて表現する機会が増えると、小説を書く人が増えたそうで、『読む人は少ないのに書く人は多い』という需要と供給のアンバランスが生じています。
 それは出版社サイドでも分かっているらしく、「本は売れないのに文学賞に応募する人は増えている」、現状を嘆く記事が散見されます。
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