第1話

文字数 415文字

2000年。喫茶店でコーヒーを飲んでいた僕は壁際のテーブルに座って本を読んでいる女性に目を向けた。彼女がちらちらとこっちらを見ているのに気づき、また僕の視線も彼女に向けられた。彼女に目が行ってしまうのは、なんだかすごくタイプだからだ。コーヒーカップの縁越しに再び目が合った。僕は思い切って立ち上がり、彼女に話しかけてみた。彼女はその気配に気づき、読んでいた本から顔を上げた。軽い口調で尋ねた。「一人ですか?」彼女は目を上げて僕を見上げた。あ、それから、僕は誰にでも声をかけるわけではない。声をかける女性は、僕の力になってくれそうな女性だ。近くの席には興味がなさそうにこちらをじっと見つめる人もいたが、「ええ、そうです」と彼女が答えてくれて、なんとなく気持ちが楽観的になり、彼女のテーブルに座った。いや、それくらいは応じてくれると思える人だから声をかけたのかもしれない。彼女の表情は落ち着いていて、どこか楽しんでいるようにも見えた。
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