第22話

文字数 572文字

みゆきが自分の彼女になったらどんなにいいだろうと考えてみるが、それは最初から失恋しているようなものであり、まさに自己嫌悪との闘いだった。

それでも、ときどきみゆきが、ドンキーホーテや東急ハンズなどで売られていたボイスチェンジャーで声を変えてふざけて僕に電話してきて、突然切ったりしてきた。酔っ払って、どこかの店から電話してきたこともあった。こちらからかけてもみゆきは電話に出てくれなかった。そして彼女のことを考えずには、いられなくなって、みゆきに会いたくなり、みゆきが勤めているデリヘルの店に電話すると、電話に出た女性が、「みゆきさんには辞めてもらったんです。スタイルもいいし、可愛くて綺麗なんだけど、毎回毎回、ああお客さんと喧嘩して揉めごとを起こされたら、こちらも手に負えなくて……」

みゆきにどうやったら会えるかなんてことばかり考えた。また会えればいいなあ、と願っていた。それでも、同時に気にしてもいないようなところがある。だって、デリヘル嬢だから、愛しているわけでもなく、いつかなにか成立するようになるとも思えなくて、もうどうでもよくなって、しみじみとした気持ちにもなった。

みゆきの方は所詮はただの客だから、僕のことなんか気にもとめていないだろうしね。

もっとも、そのあとも僕の携帯電話の中にはみゆきの二つの携帯の番号が消去されずに残っていた。
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