第7話

文字数 473文字

ベッドで横向きになったまま「ねえ、今晩一緒に食事しない?つきあってよ」と誘うと、みゆきは今日はもう仕事を終えようかな、と呟き、僕に目を向けて、一度事務所に戻らないといけないからと言って、すぐに戻ってくると言い、駅前で落ち合うことにした。彼女は僕に対して職業的なことをいっさい聞かなかった。ほかのデリヘル嬢たちとは違い、どういったらいいのか、お金に執着していなかったように思える。

お高くとまってる人かと思ったけど、僕と一緒に飯食いに行くなんて、変わってんなとも思った。あるいはただの寂しがり屋か、そのときその場に飽きたというに過ぎなかったのかもしれない。

みゆきと僕は部屋を出て、ホテルの前で一度別れ、僕はビニール傘をさして歩いて駅に向かった。やがて15分もたたないうちに彼女は微笑みらしきものを浮かべてやって来た。

シンプルな半袖のブラウスに、足首まである紫色のスカート、爪先の開いた金色のハイヒールのサンダルという組み合わせだ。

それから49歳の今に至るまで、僕が彼女を覚えているほど一途に見つめていたことを、果たしてみゆきは知っていただろうか……。




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