第21話

文字数 421文字

彼女が連れて行ってくれたしゃぶしゃぶの店は、歌舞伎町にある高級な店だった。席に案内され、おちつくと、みゆきが注文して、従業員の女性が鍋を持ってきたとか、なんだか拍手しなければいけないような気がして、オカマみたいに手をたたいたら、みゆきが低いふくみ笑いをもらしはじめ、微笑んだ。その鍋はまるで発光しているかのように眩しかった。僕は自分でもすっかり楽しくなって、ニヤリと笑った。で、ワインを飲みながら、肉や野菜が運ばれてきたんだけど、肉は目を見張るほど質の高いもので、黙ってみゆきが料理するのを見守った。

そして、しゃぶしゃぶを食べるんだけど、初めて食べるフリをしながら、演技しながら食べるのも疲れるものだな。

でも、たいてい、人といるときは何かしら演じている感じがするだろ? 違う?

でも、それじゃなんだか他人になりすましているようなもんじゃないか? 俺、一生そんなふうに過ごすのは絶対に嫌だ。なぜって、望ましい気分や幸福感を、自然体で感じたいんだ。

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