第14話

文字数 1,788文字

ようやく自分のカウンセリングルームを持てた。
少し狭いけど、自分の理想を詰め込んだカウンセリングルーム。
同じフロアの人もみんな優しいし、よかった。
しばらくは誰も来ないかもしれないけど、焦らずにできることだけしていこうと思う。

ブログを更新したり、チラシを配ったりの日々。
心理カウンセラーになったけど、カウンセリングが全然できていない。
でも焦っちゃダメだ。
今はきっと種まきの時期。

このカウンセリングルームでの初めてのカウンセリング!
クライエントさんが来てくれたのは嬉しいけど、クライエントさんはクライエントさんで苦しんでるから来てるのであって、嬉しいというのは不適切かもしれない。
でも、この人が元気になれるようにできる限りのことをしてあげたい。

少しずつクライエントさんが増えてきた。
紹介されてきたという人も。
本当は心理カウンセラーがいらない世の中がいいんだろうけど、こうやって仕事ができるのはやりがいがある。

1回のカウンセリングだけで元気を取り戻す人もいれば、何度も何度もカウンセリングをして、良くなったり悪くなったりを繰り返す人もいる。
それぞれにいろいろな事情がある。
おこがましいかもしれないけど、ひとりひとりが自分なりに頑張って生きていて、それが愛おしく感じられる。

今日はクライエントさんが感情的になって、少しビックリしてしまった。
こういうときに動じてはいけない。
どのような状態でもクライエントさんを受け止めないと。
私もまだまだ足りないところがある。

今日は地域のお祭りだった。
無事に終わってよかった。
お隣さんとあれこれ準備するのは学生時代の文化祭みたいでちょっと楽しかった。
カウンセリングルームが評判になってるねと言われて、本当にありがたい限り。

最初の頃が嘘みたいに忙しい。
どれだけ忙しくなってもひとりひとりと丁寧に向き合っていかないと。
でも、それだけたくさんの人が心に問題を抱えているのかと思うと複雑な気持ちにもなる。

クライエントさんのひとりが霊感商法に引っかかってしまった。
ここなら話を聞くのは私だけだから大丈夫と言ってもひどく怯えていて、見ているのがつらいくらいだった。
できる限りのことをしてあげたい。

ボランティア活動で、かつてのクライエントさんと再会。
今はとても元気そうにしていて、本当によかった。
今度、差し入れを持ってきてくれるらしい。
楽しみ。

霊感商法に強い弁護士をいくつかピックアップし、クライエントさんに教えてあげた。
前回来たときよりは少し落ち着いたのかなという印象。
すぐに相談してみると言っていたので、いい方向に進むといいなと思う。

コーチをしているという女性が怒鳴り込んできた。
怖い顔をしていた。
言っていることも支離滅裂で、こういう人ほどカウンセリングが必要なのに。
カウンセリングルームをめちゃくちゃにされてしまった。

カウンセリングルームに張り紙がされていた。
何て書いてあるのかわからないものが多かったけど、たぶんひとつは悪魔と書かれていた。
玄関前に生ごみが撒かれていて、においがひどかった。
フロアの人にも迷惑をかけてしまって本当に申し訳ない。

今日はクライエントさんにまで心配されてしまった。
いけない。
もっとしっかりしないと。

女性からの嫌がらせはまだ続いている。
警察に相談したけどダメだった。

私が来る前に同じフロアの人が張り紙や生ごみを片付けてくれたらしい。
本当に本当に申し訳ない。
久々に泣いてしまった。
もう引っ越しをしたほうがいいのかもしれない。

ここ何日か、張り紙もないし、生ごみも撒かれてない。
他の人も片付けてないらしい。
お隣さんと「やっと諦めてくれたのかも」と話して、ちょっとだけほっとした。

少しずつ日常が戻ってきたような気がする。
頑張らないと。

クライエントさんが人を殺してしまった。
私のせいだ。
どこかに匿ってあげればよかった。
私が何度もしつこく警察に訴えればよかった。
どこで間違えたのだろう。
涙が止まらない。

メンタルがぐちゃぐちゃ。
でもクライエントさんにはちゃんと向き合わないと。

何で嫌なことに限って続くのだろう。
ブログのコメントが気になってしまう。
たぶんあのクライエントさんだろうなと見当もついている。

自分でもビックリするくらい心が弱っている。
私の死にたいという気持ちを見透かしたように、クライエントさんが自殺の話をしてきた。
自殺だけは絶対にできない。
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