第18話

文字数 1,100文字

数日後、アブさんがダンボールから何の気なしに小ぶりな箱を取り出し、テーブルにぽいっと置いた。
その箱をちらっと見ると、いかにも梱包に使われそうな箱だった。
よくある箱だとは思ったのだが、それがなんとなく気になった。
よく見てみると、箱の側面に何かのマークのようなものがある。
手を伸ばして箱を近くで見てみると、そのマークには見覚えがあった。
漫画で使われるような丸い吹き出しの形をしたお化けの額に「呪」という漢字がポップな感じで描いてある。
「んん!これは……」
「えっ、何?何かあった?」
「これ、呪い代行業者の箱です」
「今は呪いすら代行する時代か……」
「中身はあります?」
「いんや、空よ。ちなみに、箱はもうひとつ」
アブさんがダンボールから同じ箱を取り出す。
まったく同じサイズ、まったく同じデザインの箱。
「あ、こっちの箱は何かついてんな……こりゃ釘だな」
確かに、ビニール袋に入っている大きな釘があった。
とても綺麗な釘でおどろおどろしさのようなものは感じられない。
「あー、やっぱり。藁人形ですね」
「呪い代行が藁人形の通販もしてんの?」
「珍しくないですよ。呪いの代行だけじゃなくて、本人がやる用の丑の刻参りキットみたいなのもありますし」
「つーか、これがあるってことはさ……」
「茉麻さん、やったんですかね……丑の刻参り。しかも2体も」
「ひとつは予備とかじゃないの?」
「予備だったら残ってるはずですよ」
「1回失敗しちゃったとか?」
「失敗……うーん、あり得ますかね」
茉麻さんのパソコンからメールを確認してみると、やはり最初から2体分の注文をしていた。
ついでに呪い代行業者のホームページを確認してみると、やはり同じ箱で藁人形と五寸釘のセットを販売していた。
「これは自分でやる用ですから、当然、茉麻さんがどこかに打ち付けてるはずなんですよね」
「今度はそれを確認しに行く、と」
「大正解です。まぁ、誰に呪ったのかはもうわかってるんですけどね。問題はどこの神社なのかってことです。万が一、霊山とかだったら確認しに行くのが本当に大変になっちゃいますね」
茉麻さんのパソコンの検索履歴を確認してみると、やはり丑の刻参りをする神社を吟味していたらしい。
近場から少し距離のあるところまで。
ただし、丑の刻参りは7日間続けないと成就しない。
そう考えると距離のあるところは避けるはず。
近場の神社で丑の刻参りするなら、やはりここか。
近場の神社で茉麻さんが何度も何度もアクセスしているところがひとつだけあった。
「アブさん、神社に行きましょう」
「えっ、もうわかったの?」
「たぶんですけどね。仮にハズレでも近場の神社でしらみつぶしにいけば、当たると思います」
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