第17話 後日談②

文字数 1,306文字



屋上に着くと先客がいた。
 
「糸音、元気か?」
 
「兄さんこそ、骨を折ったのかい?」
 
「あぁ肋骨を少々ね」
 
「糸見は?」
 
「彼女はあの後すぐに起きて、何も言わずに僕についていた異能殺しを解いて去って行ったよ。後から来た咲夜に聞いたら仲間も一緒に居なくなっていたそうだ」
 
「そう。たしかに皆んな生きてる」
 
「ん?」
 
「いや、こっちの話。それより聞いたよ、力の事」
 
「あぁ、すまないな隠していて」
 
「わかってる。兄さんの妹だしね」
 
「ふ、嬉しいね。どうするんだ?糸音の決めた道なら止めはしないよ、ツグハはうるさく言うかもだけどね」
 
「ツグハもわかってくれるさ」
 
「なら良いんだけどね。糸音」
 
志貴は改まって糸音に向き直る。
 
「兄さんの事はすまなかった、隠していた方がいいと判断したんだ」
 
「いいよ、別に。もう思い出したんだから」
 
「あぁ、だけどまだ」
 
「うん、まだ四年分の記憶は分からずじまいだ」
 
「糸音、もし、、そのなんだ。その記憶がとても辛いことだったとしても取り戻したいか?」
 
「当たり前だよ。私の記憶で私が覚えておかないといけないものなんだ、たとえどんなに辛く残酷な過去であっても」
 
「そうか」
 
「あ!こんなとこにおったんか!糸音、もう一回勝負や!」
 
メイが屋上の扉を豪快に開け学園のみんなが迫ってくる。

「糸音ちゃん、また遊び行こうぜ!今度はみんなでよ、パーッと打ち上げしようぜ。な!真宵」
 
「俺を巻き込まないでくださいよ、先輩。糸音先輩とは、ほぼ初対面だし譲葉の事で礼をしないとですから。そうですね打ち上げは奢りますよ」
 
「マジで!やったー!」
 
「槍士先輩は自腹で」
 
「冷てぇ後輩だぜ」
 
「糸音さん、お見舞い来たの」
 
「お!ユズちゃんじゃん久しぶり!お兄ちゃんと呼んで良いんだぜ」
 
「近づかないでください、槍士先輩」
 
「グッ!かなりショック」
 
騒がしい非日常が終わりを告げ、騒がしい日常がやってきた、今日この頃である。
 


西にある京の都と呼ばれている神薙で、ある女は絵を描いていた。
 
「上手いな」
 
「何者だ」
 
「これは失礼しました。我が主より使われました、ゾフィトと申します」
 
「失せろ」
 
冷たく冷徹な声と共にゾフィトという男の頭が落ちる。
 
「誰かは知らんが寄越すならもっとマシな人材を寄越すんだな。それか

が来い」
 
絵描きは霧がかかる空に向かって言った。すると霧の中から声が響く。
 
「これは失礼したな、紅呂椿。一つお前に良いことを教えてやろうと思ってな」
 
「何者かは知らんが、目障りだ失せろ」
 
「そう、言うな。夕凪糸音は」
 
その名を口した瞬間、椿の凄まじい殺気に寄り霧がはれる。
 
「貴様、私の前でその名を口にする事はどう言う事かわかって言っているのか?」
 
冷徹にそして残酷に空虚に響く声は、霧の主に届く。
 
「凄まじいな。良い事ではないかもしれんが、夕凪糸音は生きている。そしてもうじき来るだろうこの場所に」
 
「いい加減にしろ、戯れ事はたくさんだ」
 
そう言い放ち椿は去って行った
 
「手駒にはできなかったが、いずれわかるだろうからいいがな。お前達は必ず出会う」

第一章 
報仇雪恨(見) 閉幕 

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登場人物紹介

夕凪糸音(17)


本作の主人公

殺し屋異能一家夕凪家の末っ子。

四年前ある事がきっかけで夕凪家から出て行く。

理由は覚えてないそうだが人殺しはもうしないと決めているそうだ。

学園に通う数ヶ月前、夕凪家当主である夕凪志貴に倒れているところを発見され保護される。

志貴に再開するまでの四年間の記憶がない。

記憶を失っているからなのか静かで冷静沈着。


ツグハ(25)


夕凪家に仕えているメイドさん。

何でもこなして万能なメイドさんだが実は少し抜けている。

休みの日はいつも何しているか誰も知らない、謎多きメイドである。

雷々メイ(17)


夕凪学園の糸音のクラスメイト

活発で正義感に溢れた関西弁の女の子

あんまり考えなしで行動しがち、誰とでも仲良くなれる性格である。


異については体内から電気を放出しそれを自在に操れる。

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