第113話 悲劇
文字数 1,598文字
一
「居ないな」
「結構歩いたと思うが」
二人はひたすらに濃い霧の中を歩いていた。
すると糸音が前から歩いてくるルクスリアを見つける。
「おっ!居たぞ。紅羽、、、紅羽?」
糸音は振り返り、辺りを見回すと紅羽が居なくなっていた。
「今度は紅羽か。仕方ないとりあえずルクスリアと合流、、!?」
糸音がルクスリアの方へ向き直ると鋭い爪を立てて襲ってきた。
「なんだ!いや、お前ルクスリアじゃないな!」
続け様に偽物のルクスリアに糸音は襲われる。
「この感じ、幻覚か」
糸音は針剣を取り出してルクスリアへ攻撃するとそれは消えていった。
二
「やられたな」
「糸音!どこだ!」
紅羽も同じく糸音と逸れてしまった。
「くそ!見事に分断されたな」
しばらく歩いていると前方に人影が現れた。
「おい!誰だ!そこにいるのは!」
モヤっとしていた人影に紅羽が近づくと次第に姿があらわになった。それは喪服を着た何とも怪しげな男だった。
「何者だ!この騒動の首謀者か」
「初めまして、私は宗谷という。紅呂紅羽、お前には死んでもらう」
「俺が目的か。しかしそう簡単にはやられないぜ」
紅羽は和刀を抜いて宗谷を切りつける、がしかしその剣は空を切った。
「なるほど、この霧はお前の仕業か。異能だな」
「そうだ。そしてお前は私には勝てない」
「ぬかせ、椿をどこへやった?」
「あの娘にはお前は会えないだろう」
「答えになってないな。まぁいいさ、自分で探すからよ!」
紅羽は宗谷が現れては次々に切っていくがどれも空を切り、宗谷には届かなかった。
「くそっ!」
すると再び紅羽の前に人影が現れる。よく見るとそれはルクスリアだった。
「ルクスリア!やっと見つけたぞ」
紅羽はルクスリアに近づいた。しかし間合いに入った瞬間にルクスリアの爪が紅羽を襲う。
「くっ!」
一瞬の判断で避けることはできたが、傷を負ってしまった。
「偽物か!ふざけた真似を」
そのルクスリアの偽物を見ていると次第にぼやけ、やがて糸音へと姿を変える。
「とことんふざけやがって!」
紅羽は偽糸音からの攻撃を交わし後退していく。
「やりずれぇな」
その頃、糸音は繰り返し紅羽とルクスリアの幻覚に惑わされていた。
「全く、やりずらい」
攻撃力はさほどないが知っている顔だからこそ、タチの悪いやり方にどんどんイライラする糸音。
「!?」
次々に切り捨てていくと糸音はあるたくさんの幻影が現れて動きが止まる。
「どうして、殺した」
「や、やめろ、、、」
それはかつて糸音が切り捨てたこの国に居た悪党達だった。次から次へと現れて口々に皆、同じ言葉を口にする。
「殺す必要があったのか?あんなに酷い殺し方をして」
「やめろと言っている!」
糸音は次々に幻影を切り捨てていく。しかしそれはただ消えることなく血を吹き出して倒れていく。
「なっ!?」
「やめてくれぇ」
切られた幻影達は血を流しながら糸音に助けを求めては悲鳴をあげる。糸音は幻影とわかっていても精神的に耐えれなかった。怒りと後悔が溢れ出して、やがて糸音は現実がわからなくなり、闇雲に針剣を振り翳して切り捨てていく。気づけば糸音の足元には多数の屍と血の池があった。倒れたその顔を見るとどれも糸音の見た事がある顔だった。
「あ、あ、あああああああ!!!!!」
そして遂に糸音の精神は崩れた。
「今の声は糸音か!」
紅羽は声のする方へと進むと膝を落として下を俯く糸音を見つける。
「本物か!?」
紅羽は糸音に駆け寄ると、糸音の持っていた針剣でゆっくりと貫かれた。
「うっ!」
糸音は何かが近づいていることに気づくと少し顔を上げてその顔を確認するが顔が無かった、話している言葉も糸音には届かなかった。
(ああ、まただ。殺さないとやられる)
糸音は肩を揺するその相手にゆっくりと針剣を突き刺した。その時、糸音の意識は現実へと戻される。
「居ないな」
「結構歩いたと思うが」
二人はひたすらに濃い霧の中を歩いていた。
すると糸音が前から歩いてくるルクスリアを見つける。
「おっ!居たぞ。紅羽、、、紅羽?」
糸音は振り返り、辺りを見回すと紅羽が居なくなっていた。
「今度は紅羽か。仕方ないとりあえずルクスリアと合流、、!?」
糸音がルクスリアの方へ向き直ると鋭い爪を立てて襲ってきた。
「なんだ!いや、お前ルクスリアじゃないな!」
続け様に偽物のルクスリアに糸音は襲われる。
「この感じ、幻覚か」
糸音は針剣を取り出してルクスリアへ攻撃するとそれは消えていった。
二
「やられたな」
「糸音!どこだ!」
紅羽も同じく糸音と逸れてしまった。
「くそ!見事に分断されたな」
しばらく歩いていると前方に人影が現れた。
「おい!誰だ!そこにいるのは!」
モヤっとしていた人影に紅羽が近づくと次第に姿があらわになった。それは喪服を着た何とも怪しげな男だった。
「何者だ!この騒動の首謀者か」
「初めまして、私は宗谷という。紅呂紅羽、お前には死んでもらう」
「俺が目的か。しかしそう簡単にはやられないぜ」
紅羽は和刀を抜いて宗谷を切りつける、がしかしその剣は空を切った。
「なるほど、この霧はお前の仕業か。異能だな」
「そうだ。そしてお前は私には勝てない」
「ぬかせ、椿をどこへやった?」
「あの娘にはお前は会えないだろう」
「答えになってないな。まぁいいさ、自分で探すからよ!」
紅羽は宗谷が現れては次々に切っていくがどれも空を切り、宗谷には届かなかった。
「くそっ!」
すると再び紅羽の前に人影が現れる。よく見るとそれはルクスリアだった。
「ルクスリア!やっと見つけたぞ」
紅羽はルクスリアに近づいた。しかし間合いに入った瞬間にルクスリアの爪が紅羽を襲う。
「くっ!」
一瞬の判断で避けることはできたが、傷を負ってしまった。
「偽物か!ふざけた真似を」
そのルクスリアの偽物を見ていると次第にぼやけ、やがて糸音へと姿を変える。
「とことんふざけやがって!」
紅羽は偽糸音からの攻撃を交わし後退していく。
「やりずれぇな」
その頃、糸音は繰り返し紅羽とルクスリアの幻覚に惑わされていた。
「全く、やりずらい」
攻撃力はさほどないが知っている顔だからこそ、タチの悪いやり方にどんどんイライラする糸音。
「!?」
次々に切り捨てていくと糸音はあるたくさんの幻影が現れて動きが止まる。
「どうして、殺した」
「や、やめろ、、、」
それはかつて糸音が切り捨てたこの国に居た悪党達だった。次から次へと現れて口々に皆、同じ言葉を口にする。
「殺す必要があったのか?あんなに酷い殺し方をして」
「やめろと言っている!」
糸音は次々に幻影を切り捨てていく。しかしそれはただ消えることなく血を吹き出して倒れていく。
「なっ!?」
「やめてくれぇ」
切られた幻影達は血を流しながら糸音に助けを求めては悲鳴をあげる。糸音は幻影とわかっていても精神的に耐えれなかった。怒りと後悔が溢れ出して、やがて糸音は現実がわからなくなり、闇雲に針剣を振り翳して切り捨てていく。気づけば糸音の足元には多数の屍と血の池があった。倒れたその顔を見るとどれも糸音の見た事がある顔だった。
「あ、あ、あああああああ!!!!!」
そして遂に糸音の精神は崩れた。
「今の声は糸音か!」
紅羽は声のする方へと進むと膝を落として下を俯く糸音を見つける。
「本物か!?」
紅羽は糸音に駆け寄ると、糸音の持っていた針剣でゆっくりと貫かれた。
「うっ!」
糸音は何かが近づいていることに気づくと少し顔を上げてその顔を確認するが顔が無かった、話している言葉も糸音には届かなかった。
(ああ、まただ。殺さないとやられる)
糸音は肩を揺するその相手にゆっくりと針剣を突き刺した。その時、糸音の意識は現実へと戻される。