第63話 ラウンド1

文字数 1,050文字

「始まりましたね。さてさてメインイベントですから楽しみです」
 
一人事務室にてワイン呑みながら優雅にカメラを見ていたゴトー。そのカメラには今から数分間、短くも長い戦いが始まろうとしていた。
 
先に動き出したのは糸見の方だった。駆け出した先の男、モーティブは平然とくないを構えていた。腰を落として両者接近する。そして二つの刃がぶつかった次の瞬間、気づくと次の音が鳴り響いていた。速さは互角、しかし未だ見ぬモーティブの実力に警戒をしている糸見は本気とはいえなかった。
 
「どうしましたか、糸見様。あなたはそんなものじゃないでしょう」
 
「チッ!」
 
懐から針を飛ばしてモーティブに接近する。針剣を床に突き刺し遠心力を使い強烈な蹴りを御見舞いする。
 
「おっと、今のは効いたな」
 
モーティブは手の痺れを感じて後退する。
しかし糸見はそれを許さず、地面に刺した針剣を抜いて、モーティブへと距離を詰める。
針剣を片手のくないでなんとか受け切るモーティブは、もう一方の手で針剣の持ち手を手刀で弾く。糸見は針剣を落としてしまい、その隙にくないで糸見の喉を抉りにかかるが、針剣の柄に糸を通してあったため、それを引っ張りあげ難なくガードした。糸見は上に針を飛ばし上へと上昇し片手で針を飛ばす、それを避けながら走り回るモーティブ、彼も彼でくないで応戦する。しかし糸見も針で応戦する。そして突如、モーティブの動きが止まる。
 
「こ、これは、なるほど糸の鳥籠ですな」
 
見ると糸見達のいるホールに糸が張り巡らされていた。
 
「何もお前にだけ飛ばしていたわけではないぞ、これで鳥籠の完成だ」
 
「切れ味が凄まじい糸でしたかな」
 
「そうそう、よく知ってるな。なら動かない方がいいぜ」
 
「いいや、まだですな」
 
「!?」
 
モーティブが消えた。文字通り、何のアクションも無く消えた、瞬き一瞬で消えた。
 
(どこだ!異能だな、何の能力だ)
 
糸見は目をつぶって感覚を研ぎ澄ませる。
数秒ののち、モーティブは糸見のいる天井から現れた。
 
「な、なんだと!くっ!」
 
糸見は一瞬の殺気で気づいて、くないを避け、床に落ちた。
 
「さすがは糸見様。お教えしましょう、私の能力は闇に溶け込み消える能力」
 
モーティブは天井から落ちて床に降りてくるとそう言った。
 
「厄介だな、はぁ、なんでこんなに厄介な異能ばかりここにいる」
 
「あなたも厄介な物を持っているでしょう!異能殺し」
 
「そうだったな」
 
(やはり、知っているか。だが、知られていたところで関係はない)
 
「さて、ラウンド2です」
 
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登場人物紹介

夕凪糸音(17)


本作の主人公

殺し屋異能一家夕凪家の末っ子。

四年前ある事がきっかけで夕凪家から出て行く。

理由は覚えてないそうだが人殺しはもうしないと決めているそうだ。

学園に通う数ヶ月前、夕凪家当主である夕凪志貴に倒れているところを発見され保護される。

志貴に再開するまでの四年間の記憶がない。

記憶を失っているからなのか静かで冷静沈着。


ツグハ(25)


夕凪家に仕えているメイドさん。

何でもこなして万能なメイドさんだが実は少し抜けている。

休みの日はいつも何しているか誰も知らない、謎多きメイドである。

雷々メイ(17)


夕凪学園の糸音のクラスメイト

活発で正義感に溢れた関西弁の女の子

あんまり考えなしで行動しがち、誰とでも仲良くなれる性格である。


異については体内から電気を放出しそれを自在に操れる。

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