第19話 死者憑依
文字数 1,538文字
一
襲撃未遂のあの夜からは特に何も起こらず一ヶ月が経った。そしてある雨の夜、男は暗い病棟を歩いていた。自身の病室へ着いたとき違和感を覚えた。いつも自分がいるベットに知らないやつが寝ていた。
「なんで、俺のベットで」
「あ、あ、あ、あ、」
「何言ってやがんだ!」
男はベットにいる人物に近づいて胸ぐらを掴み。その顔にかかっていた布を取ると男は驚いた。
「うわあああ!?なんだこれは!」
自分の顔がそこにはあった。
男は自分が霊安室にいたことを霊になってから気づいた。
ニ
「志貴様、そろそろ交代です」
「あぁ、そんな時間か」
志貴は夜になっていることに気づかずにただただ病室の天井を見ていた。
「少し休まれてはどうですか?今は忙しい時期でしょう。私なら一週間は寝てなくても大丈夫ですから。その間にゆっくりと休んでください」
「いや、大丈夫だ。それよりあれから何も襲撃がなかったな。一応。捕まえた奴からの情報では、奴らにはボスが居たそうだ。しかし数日前に死んだらしい、組織としては自然消滅したそうだ。残った者でボスへの手向けとして僕を落とそうと思ったらしい」
「全く、愚かな連中ですね」
「そう言ってやるな。それと仲間の一人が妙な事を言っていたがな」
「妙なこと?」
「あぁ、なんでも生前では霊と話せたそうだ、降霊術なるものにも手を出していたらしいが、そのボスは異能を使えたらしい」
「自然発現ですか?」
「異能には未だ謎が多い。最近は妙な力が発現したと報告が多く上げられているし、つい先日もそういう案件を解決してきたところだ」
「何も起こらないといいですが」
!?
妙な気配を二人は感じ取った。空気が凍りつくような、嫌な感じだった。
「なんですか?この感じは」
「警戒しろ、ツグハ」
どこから共なく現れた一枚の布が糸音の顔に落ちる。
「ガハ!」
声のする方を見ると、糸音が跳ね起きていた。
「糸音様!目覚めたのですね」
「ツグハ、待て!こいつは」
「くくくく、志貴!貴様の妹だったよなコイツは!この体は俺の物だ!くくく!」
「なるほど。お前がボスか」
「どういうことですか志貴様」
「こいつは死んだチンピラ共のボスだ。いやお前は元朝霜の人間だな」
「朝霜家ですか!」
「よく、俺が朝霜の者だとわかったな」
「ふん、お前は馬鹿か。お前の今のそれは朝霜家に伝わる死者憑依じゃないか、異能だがそれはこちらではない」
「死者憑依ですか?」
「あぁ、そのチンピラに聞いた話で思い出してな。昔、朝霜家にそういう技を使う物がいたと蘇匁亜に聞いてな」
「蘇匁亜か、この俺を朝霜から追放した男。お前を殺した後は朝霜をいただくつもりだ」
「何言ってんだお前は、殺せんだろ?」
男は近くにあったハサミを自身の首もとい糸音の首に当てた。
「コイツを助けたければ、さっきの発言を詫びて自害しろ。俺は既に死んでいるから死ぬのはコイツだけだ」
「糸音様!」
「待てツグハ。やれるのならやって見ろ。もし糸音が死ねば糸音はそこまでの奴だったってことだ」
「志貴様!」
「は?お前正気か。いやお前はそういう奴だったな、もういい、なら死ね」
刃が勢いよく首に向かう、がその手前で手が止まる。
「な?何故動かん!志貴!てめぇ何しやがった!?」
「僕は何もしてないよ、ただ見ていただけ」
男は心の中で声を聞く。聞いたことのない声を。
(誰だかしらんが、寝覚めが悪い)
「!?」
「消えろ」
自分の胸に手を当てて、異能を発動させる糸音。
ドン!
鈍い音が鳴った時には男の気配は完全に消失した。
「おかえり、糸音」
「ただいま兄さん」
「糸音様!」
ツグハは糸音を抱きしめて
「おかえりなさいませ」
「ごめん、ツグハただいま」
襲撃未遂のあの夜からは特に何も起こらず一ヶ月が経った。そしてある雨の夜、男は暗い病棟を歩いていた。自身の病室へ着いたとき違和感を覚えた。いつも自分がいるベットに知らないやつが寝ていた。
「なんで、俺のベットで」
「あ、あ、あ、あ、」
「何言ってやがんだ!」
男はベットにいる人物に近づいて胸ぐらを掴み。その顔にかかっていた布を取ると男は驚いた。
「うわあああ!?なんだこれは!」
自分の顔がそこにはあった。
男は自分が霊安室にいたことを霊になってから気づいた。
ニ
「志貴様、そろそろ交代です」
「あぁ、そんな時間か」
志貴は夜になっていることに気づかずにただただ病室の天井を見ていた。
「少し休まれてはどうですか?今は忙しい時期でしょう。私なら一週間は寝てなくても大丈夫ですから。その間にゆっくりと休んでください」
「いや、大丈夫だ。それよりあれから何も襲撃がなかったな。一応。捕まえた奴からの情報では、奴らにはボスが居たそうだ。しかし数日前に死んだらしい、組織としては自然消滅したそうだ。残った者でボスへの手向けとして僕を落とそうと思ったらしい」
「全く、愚かな連中ですね」
「そう言ってやるな。それと仲間の一人が妙な事を言っていたがな」
「妙なこと?」
「あぁ、なんでも生前では霊と話せたそうだ、降霊術なるものにも手を出していたらしいが、そのボスは異能を使えたらしい」
「自然発現ですか?」
「異能には未だ謎が多い。最近は妙な力が発現したと報告が多く上げられているし、つい先日もそういう案件を解決してきたところだ」
「何も起こらないといいですが」
!?
妙な気配を二人は感じ取った。空気が凍りつくような、嫌な感じだった。
「なんですか?この感じは」
「警戒しろ、ツグハ」
どこから共なく現れた一枚の布が糸音の顔に落ちる。
「ガハ!」
声のする方を見ると、糸音が跳ね起きていた。
「糸音様!目覚めたのですね」
「ツグハ、待て!こいつは」
「くくくく、志貴!貴様の妹だったよなコイツは!この体は俺の物だ!くくく!」
「なるほど。お前がボスか」
「どういうことですか志貴様」
「こいつは死んだチンピラ共のボスだ。いやお前は元朝霜の人間だな」
「朝霜家ですか!」
「よく、俺が朝霜の者だとわかったな」
「ふん、お前は馬鹿か。お前の今のそれは朝霜家に伝わる死者憑依じゃないか、異能だがそれはこちらではない」
「死者憑依ですか?」
「あぁ、そのチンピラに聞いた話で思い出してな。昔、朝霜家にそういう技を使う物がいたと蘇匁亜に聞いてな」
「蘇匁亜か、この俺を朝霜から追放した男。お前を殺した後は朝霜をいただくつもりだ」
「何言ってんだお前は、殺せんだろ?」
男は近くにあったハサミを自身の首もとい糸音の首に当てた。
「コイツを助けたければ、さっきの発言を詫びて自害しろ。俺は既に死んでいるから死ぬのはコイツだけだ」
「糸音様!」
「待てツグハ。やれるのならやって見ろ。もし糸音が死ねば糸音はそこまでの奴だったってことだ」
「志貴様!」
「は?お前正気か。いやお前はそういう奴だったな、もういい、なら死ね」
刃が勢いよく首に向かう、がその手前で手が止まる。
「な?何故動かん!志貴!てめぇ何しやがった!?」
「僕は何もしてないよ、ただ見ていただけ」
男は心の中で声を聞く。聞いたことのない声を。
(誰だかしらんが、寝覚めが悪い)
「!?」
「消えろ」
自分の胸に手を当てて、異能を発動させる糸音。
ドン!
鈍い音が鳴った時には男の気配は完全に消失した。
「おかえり、糸音」
「ただいま兄さん」
「糸音様!」
ツグハは糸音を抱きしめて
「おかえりなさいませ」
「ごめん、ツグハただいま」