第79話 忍術

文字数 1,061文字

「本当に真っ暗だな」
 
翌朝、ミラーレス地区へ入った四人は森で眷属崩れの様子を伺っていた。眷属崩れ達はミラーレス地区のだだっ広い荒野に数万と埋め尽くされていた。
 
「さて、じゃあ状況開始ですな。行くよー」
 
詩織が先陣をきって森から出ると、早速眷属崩れ達は詩織に向かってきた。
 
「どうするつもりなんだ詩織は」
 
「まぁ見てなって、俺も原理はわからないが凄いものだぜ」
 
詩織は懐から巻物を取り出して広げると円が書かれた場所をクナイで刺した。すると刺された穴から勢いよく水が溢れ出し眷属崩れ達を飲み込む。
 
「おー、こりゃすごいな」
 
「詩織は忍者だったのか」
 
「忍者?」
 
紅羽は糸音に問いかける。
 
「私も実際に会った事がなかったけど、姉から聞いた話しでは異国の地に妙な妖術を使う忍者と呼ばれる者達がいるらしい。詩織の扱うあの武器も巻物も忍者が扱う物だ」
 
「糸音はなんでも知っているな」
 
「だが、ここからどうするんだ?」
 
ルクスリアが疑問に思って見ていると、詩織は違う巻物を取り出して広げると再び円が描かれている場所にクナイで刺すと、穴から猛烈な風が飛び出して首都に続く、道の上に居た水に飲み込まれた眷属崩れ達を吹き飛ばした。
 
「よし!これで首都へは一本道だね」
 
森で見ていた三人は驚愕した。普通、水が周りにあれば空いた所に水で再び埋まるはずなのだが、まるで何かに固定されているように水の壁ができて首都へと一本道ができていた。
 
「よ、よし行こうか!」
 
糸音達は驚いたが切り替えてその一本道を進む事にした。
 
「詩織、これってどういう原理なんだ?」
 
ルクスリアは歩きながら、おそらく二人も思っているであろう疑問を詩織になげかけた。
 
「あー、これはね正直私もわからないんだよね。まぁ原理はともかく、この巻物に力を封じて解き放つみたいな。あ、ちなみに水の壁に近づきすぎるとそいつら手を伸ばしてきて引き摺り込まれるかもしれないから気をつけてね」
 
「あ、あぁ、わかったよ。しかし不思議なものだ」
 
疑問は解消されなかったが、三人共納得はした。
 
四人は数分歩いて、遂に首都ラルダの塀に辿り着いた。
 
「おそらく中にはさっきの奴らがうようよいるだろう、此度は私も戦おう」
 
「ルクスリアは私に任せて、できるだけサポートはするから、二人は親玉を早急に片付けてくれたらいいから」
 
「了解した」
 
ルクスリアは剣を抜き、詩織はクナイを構える。そして紅羽と糸音がでかく聳え立つ門を破壊すると案の定、街には眷属崩れ達が歩き回っていた。
 
「わー、まるでゾンビランドじゃん」
 
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登場人物紹介

夕凪糸音(17)


本作の主人公

殺し屋異能一家夕凪家の末っ子。

四年前ある事がきっかけで夕凪家から出て行く。

理由は覚えてないそうだが人殺しはもうしないと決めているそうだ。

学園に通う数ヶ月前、夕凪家当主である夕凪志貴に倒れているところを発見され保護される。

志貴に再開するまでの四年間の記憶がない。

記憶を失っているからなのか静かで冷静沈着。


ツグハ(25)


夕凪家に仕えているメイドさん。

何でもこなして万能なメイドさんだが実は少し抜けている。

休みの日はいつも何しているか誰も知らない、謎多きメイドである。

雷々メイ(17)


夕凪学園の糸音のクラスメイト

活発で正義感に溢れた関西弁の女の子

あんまり考えなしで行動しがち、誰とでも仲良くなれる性格である。


異については体内から電気を放出しそれを自在に操れる。

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