第109話 静かな朝

文字数 1,216文字



紅羽は救護室のベッドの上で目が覚めた。
 
「あれ、ここは」
 
「あっ、やっと起きた!ごめんね兄さん、ちょっとやりすぎちゃったよ」
 
椿はベッドの側で椅子に座っていた。その横にはルクスリアが立っていた。
 
「はぁ、びっくりだぜ。まさか椿に負けるとはな」
 
「紅羽、どうだった?」
 
「あぁ、仕方ねぇ。約束だからな、認めるよ」
 
椿とルクスリアは顔を見合わせて喜んだ。
 
「やったぁ!」
 
「ただし、ルクスリア。椿を一人では行かせるなよ。こいつは一人だと突っ走る可能性がある」
 
「わかった」
 
「頼んだぞ」
 
かくして椿の治安維持局への入隊を許可された。その後、椿と紅羽は家へ戻った。ジータはその後、また椿と模擬戦をしていたが25回目でようやく自分が一本取れると終わることができた。そしてルクスリアは椿の入隊の手続きと今度について決めるため治安維持局へと戻った。
 
「ただいまー」
 
紅羽は椿に肩を借りながら帰宅する。
 
「おかえり、ってどうしたの?」
 
「ちょっとやりすぎちゃって」
 
「椿お嬢様、紅羽様、ずいぶんと遅かったですね。夕食の準備はできてますよ」
 
「すまねぇな、さぁ飯食うか」

「そうだね」
 
二人はその後、何も話さなかった。食べ終わると紅羽は早々に自室へと戻った。ミナモは片付けと風呂の用意を、椿と糸音は食後のクッキーを食べてお茶をしていた。そこで訓練所であった出来事を椿から聞いていた。
 
「なるほどね。でも良かったじゃん」
 
「うん!糸音は入らないの?」
 
「あー、私は椿以上に止められてるからね」
 
「へぇ、なんでだろうね」
 
「さぁな」
 
しばらく雑談していたら風呂の準備ができたとミナモが報告しにきたので、椿は先に風呂へと入った。
 
「はぁ、私も部屋へ戻るよ」
 
「承知しました」
 
その日の三人は会うことなく1日が終わった。


 
夜も更けた深夜、ヘイオーの南の海岸にて一隻の小舟が岸に乗り上げていた。その船から二人の男が降り立った。
 
「ここがヘイオーか」
 
「ええ、ここに間違いなくいます。

からの情報です」
 
「数年、どこへ行ったかと探したが、まさかこんな辺境の地ににいるとはな」
 
「では、向かいましょうか宗谷さん」
 
「あぁ」


 
次の日、ルクスリアが朝イチで紅呂家を訪ねてきて早速今日、椿を治安維持局へ案内して軽い任務でテストすると言った。
 
「えー、朝から眠いな」
 
「おいおい、それがお前の選んだ道だろ」
 
「はい、ちょっと待ってね」
 
椿は10分くらいで準備をして玄関へやってきた。外へ出ると、まだ誰も起きていない家を見る。
 
「行ってきます」
 
まだ静かに眠る街の中、二人は治安維持局へと向かった。
 
「いいんですか?紅羽様」
 
自室の窓から椿を見送る紅羽に部屋に居たミナモが問いかける。
 
「いいんだ、約束だし。それにもう大人だ、いつの間にかな」
 
「そうですね」
 
「俺はもう少し寝るよ。昼頃に起こしてくれ」
 
「承知しました」
 
紅羽はベッドに向かい、再び目を閉じて眠った。
 
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登場人物紹介

夕凪糸音(17)


本作の主人公

殺し屋異能一家夕凪家の末っ子。

四年前ある事がきっかけで夕凪家から出て行く。

理由は覚えてないそうだが人殺しはもうしないと決めているそうだ。

学園に通う数ヶ月前、夕凪家当主である夕凪志貴に倒れているところを発見され保護される。

志貴に再開するまでの四年間の記憶がない。

記憶を失っているからなのか静かで冷静沈着。


ツグハ(25)


夕凪家に仕えているメイドさん。

何でもこなして万能なメイドさんだが実は少し抜けている。

休みの日はいつも何しているか誰も知らない、謎多きメイドである。

雷々メイ(17)


夕凪学園の糸音のクラスメイト

活発で正義感に溢れた関西弁の女の子

あんまり考えなしで行動しがち、誰とでも仲良くなれる性格である。


異については体内から電気を放出しそれを自在に操れる。

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