第13話 自分騙し

文字数 752文字

すごい音やなあ

水族館デートの翌朝、激しい雨音で目が覚めた。テレビをつけると僕の住んでいる地域は大雨洪水警報が発令されていた。この激しい雨音はまるで、僕の本音を知ったまなみの怒りや涙にも思えた。当然、まなみは僕の本音など知る由も無いのだが。

スマホを見るとまなみからメールがきていた。

「昨日はありがとう。とても楽しかったよ。
まなみの彼氏になってくれてありがとう!
これからいっぱい思い出作ろうね〜」

「こちらこそありがとう、楽しかった!
まなみを幸せにできるように頑張ります。山ほど作りましょう」

僕は心を持たないメールの返事を済ませて再び、眠りに落ちてしまった。気がつくと昼過ぎだった。遅めの昼ごはんを食べて部屋の掃除をしつつも、まなみとメールをしていた。この日はおそらく、今までで1番メールをしただろう。夜を迎える頃には10往復以上もしており自分でも驚いた。メール内容はまだ付き合って1日だが、付き合う前とずいぶん変わった気がした。

例えば、より深く、具体的に恋愛経験などを聞いてくるようになった。まなみには過去何度か元カノの話してよと言われていたが、僕は答えていなかった。いや、彼女などできたことがない僕に答えられるはずもなかったのだが……

僕は今日のメールで恋愛経験は3人、最後に付き合ってた人とは5月に喧嘩して別れたなどと嘘の話をまなみに伝えた。きっと男のプライドが邪魔したのだろう。

まなみの過去の恋愛について知っていた僕はなおさら、初めての彼女と言いづらく、言えば負けのような気がしていた。

もしかすると、初体験の相手は処女がいいと思っていた僕に、まなみの非処女を受け止め自尊心を保てるように嘘をついたのかもしれない。

僕も非童貞だから、別に非処女でもいいよなと……
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