43話 邪魔者

文字数 1,073文字

濃厚なキスは続いており、相変わらず僕の右手は美保さんの胸を触りっぱなしだ。美保さんも僕の突起物を服の上から触り、まさに『それ』が始まりそうだった。

ピンポーン

エレベーターの止まる音が聞こえた。扉が開き、夜景目当てのカップルが手を繋ぎながら、降りてきた。

(クソ、邪魔者め)

『それ』の邪魔をされた気になり、なんの罪もないカップルに腹を立てた。僕達はキスをするのをやめ、夜景を眺めながら話をし始めた。しかし、お互い『それ』の続きをしたかったのだろう、話の内容など全く頭に入ってこない。正面にはネオン輝くラブホテル街がある。僕達が大人なら、きっと向かっているはずだ。時刻は22時を回り、ラブホテルで一夜を過ごすにはベストな時間だからだ。

『そろそろ帰りましょうか?』

『そうだね・・』

高校生で実家住みの僕達は、ラブホテルで一夜を過ごすということは出来ず、まだまだ子供だということを痛感した。

強風の吹く歩道橋を手を繋ぎながら渡り、美保さんをJRまで送った。

『わざわざありがとね。今日は楽しかった。これからもよろしく』

『一瞬で時間過ぎました。こちらこそよろしくお願いします』

美保さんは大きな胸を揺らしながら改札をくぐり、ホームに降りていった。

僕も家に帰ろうと、地下鉄に向かった。足を進めた頃、僕の耳が女性の声を感知した。

『兄ちゃんカッコいいね』

僕は突然声をかけられた。声先を見るとブランド物で身を固め、付けまつ毛にエクステをしている、いかにもキャバクラ嬢という姿の女性が立っていた。少しお酒も入っているのか、顔が赤らんでいた。

『あっ、ありがとうございます』

『んー可愛いね』

(可愛いという表現は褒め言葉なのか?)

『ご飯行こうよ~?』

『キャバクラの誘導ですか?』

僕の問いかけに嬢は笑いながら答えた。

『キャバクラ嬢じゃないよ。看護師してるよ。君に一目惚れしたからご飯行きたいなあって思って』

この時間からご飯に行ったら確実に終電を逃すだろう。しかし、僕は夜釣りをしたりするので、門限はない。

(どうしよう・・もしかしてやれるかもなあ)

その女性は明らかに軽そうだ。そして、おそらくやれる。僕は美保さんと中途半端な『それ』しか出来ず、ムラムラ感が溜まっていた。

『終電も近いのでちょっとだけでもいいですか?』

『終電気にするとか可愛いね。全然いいよ』

(だから可愛いってなんなんだ)

僕はその女性に100パーセントの下心とともに着いていった。

そして人生初のバーに入った。
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