第18話 大晦日

文字数 754文字

大晦日を迎えた。

今日はまなみと夜に待ち合わせをして難波のカウントダウンに行く予定だ。難波のカウントダウンは例年大賑わいで、大阪名物の道頓堀ダイブも見ることができる。僕は冬休みの宿題をやりながら今年1年を振り返る番組を見ていた。

あれも今年かあ、そういえばこんなのもあったなあ……

1年の終わりを感じ少し寂しい気持ちもあったが、新年への期待心も湧いていた。ふと、僕は社会的な出来事ではなく自分の1年を大まかに振り返ることにした。

受験勉強を必死にしていたのに定員割れだったこと、6月には手首を怪我して試合に出れなかったこと、夏休みは部活三昧で海にすら行けなかったこと、まなみにメールアドレスをもらい女性への人生初メールを送った9月、まなみとメールだけで面と向かってあまり話せなかった10月、まなみとの距離感が縮まった11月、まなみの過去を知り複雑な気持ちになったことや、クリスマスデートをした12月、そして今日はまなみと一緒にカウントダウン。

なぜだろう……
1年を振り返るとまなみとの思い出が意外にも大きいことに気がづいた。特にメールアドレスを渡された9月以降、まなみとの思い出しか記憶に残っていないようだった。

自分では『それ』のためにまなみと付き合ったと思っていたが実は好きなのかもしれない。もしかすると自分に『それ』のためと言い聞かせ、まなみの過去に目を瞑らせていたのかもしれない。当時は処女を神格化していた童貞だったから……

それとも『それ』から始まり、『それ』の延長線上に愛情や恋心が生まれるのだろうか。いや、『それ』から始まる恋などあるものか。そんなもの結局『それ』目当てに過ぎないだろう。

僕は風呂に入り身支度を整えて、目的地へ向かった。

そう、まなみとの待ち合わせ場所へ。
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