第19話 難波

文字数 909文字

難波に向かうまでの地下鉄は大混雑でまるで狭い檻の中に入れられている動物のように、身動き1つ出来ず苦痛の時間だった。大晦日に難波に向かう人は圧倒的に若者が多くカップルや友達同士、皆が楽しそうだった。

反対に僕はというと、地下鉄の窓からは当然綺麗な景色など見えないがぼんやりと外を眺めていた。ガラス窓に映る僕の顔は寂しそうだった。

まなみとは地下鉄難波駅で待ち合わせをしており僕とまなみは同時に着いた。

「今日は着いたの同時だったね」

「ほんまやな。この前はまなみだいぶと早かったもんなあ」

「クリスマスデートだし、気合い入ってたの!」

僕達はまず道頓堀の屋台に向かった。屋台では様々なものが売られており僕達は食べ歩きをしながら見物していた。すると、ある屋台の前でまなみがいきなり指差して言った。

「これ欲しい」

それはカップルに人気のキーホルダーで2個着き1000円の物だった。まなみはそれをお互いの通学用バッグに付けようと言った。いかにも女子高生らしい。僕は当然、乗り気ではないが買うことにした。

そうこうしている内に、カウントダウンの時刻が近づき道頓堀の熱気は最高潮に達していた。お酒を飲んだ大学生の暴れっぷりは尋常じゃなく、普段は社会人として働いてるであろうお兄さんやお姉さんもアルコールの奴隷になって馬鹿騒ぎをしていた。喧嘩をしているのを幾度も見かけ、何が彼らをそこまで熱くするのかと疑問に思った。まるで普段感じている鬱憤をアルコールを通して発散しているようだった。

お酒を飲むとこんなに人は変わるものなのか

僕は心の中でそう思うとともに来たるべき飲む日、僕がどうなるのかを想像して楽しみになった。

僕達は未成年で当然お酒なしのカウントダウンを迎えた。深夜にこれほどの熱気を感じることができるのは大晦日ぐらいだろう。カップル達は新年を迎えた喜びをキスやハグなど各々の方法で感情表現をしていた。

まなみと僕は手を繋ぎながらカウントダウンの瞬間を迎えた。カウントダウン直後には横にいたカップルやお兄さん、お姉さんなどとハイタッチもした。

とりあえず新年を迎えた高校1年生の僕がそこにいた。
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