ルルド学校へ入学する

文字数 1,114文字

「疲れた」
 慣れない仕事をしたせいか、授業を終えた後にエリスを疲労感が襲う。
 中庭の柱に寄り掛かりながら
「生徒に勉強を教えるのは、思っていた以上に大変だな」
 大きな溜息をついた。
 昼を告げる鐘の音が響く。
「そろそろ、昼食の時間だな」
 懐から財布を取り出し
「……」
 エリスは苦い顔をする。
「……売店のパンで我慢しようか」
 そう言って、学校の入り口近くにある売店へ向かう。
「……」
「……」
 なぜか、ルルドが店番をしている。
 視線が合ったが、逸らしたのを見てエリスは溜息をついた。
「何してるんだ?」
「パンを売っています」
「……君は、ここの売店でアルバイトをしているのか?」
 エリスに聞かれ
「違います」
 ルルドは首を振る。
「パン屋のおじさんが、腰を痛めたので代わりに配達に来ました。そしたら、売店のおばさんが、職員室に荷物を運ぶからと店番を頼まれました」
 また怒っているのか、どことなく不機嫌そうだ。
「ああ、そうなのか」
「ここの生徒は、何だか楽しそうですね」
 ルルドが呟く。
「学校とは、そういうものだろう。たまに勉強はサボりたくなるが」
 同じ目的があるというのは、アドバンテージになる。
 そこで、生徒たちは競って成長をしていく。
「……エリス様、勉強サボったことあるんですね」
 ルルドの言葉に、エリスは咳払いをする。
「コホン、昔の話だ。それより、パンを買いたい」
「揚げパンおいしいですよ」
「……揚げパンか」
 こんがりと焼けていて、適度に砂糖の衣をまとっている。
「カロリー、高そうだな」
 エリスが悩むのを見て
「やっぱり、女性ですね」
 ルルドが言った。
「君は、私にどんな印象を持ってるんだ」
「あー、資料に目を通したら肩が凝った」
 ユーリスは肩を回しながら
「エリス君、お昼かい?」
「今日は、持ち合わせがなくてパンにしようかと」
 エリスはユーリスに視線を向ける。
「パンも悪くない。本を読みながら、片手で食事ができるメリットがある」
 ユーリスの言葉を聞いて
「まさか、理事長もパンを?」
 エリスが目を丸くする。
「俺だって、パンは食べるぞ。こう見えて庶民派なんだ」
「理事長、ならここで一番偉い方ですよね」
 ルルドが目を輝かせる。
「一番偉いと言っても、この学校は他の錬金術師からも資金提供を受けている。まあ、それでも偉いと言ってもいいが」
 ユーリスが得意気に言った。
「僕も、錬金術師になりたいです」
「……ふむ」
 ユーリスは顎に手を当てながら
「いいんじゃないか? 明日から一年のクラスに編入するといい。手続きの方は、リア君に任せようかな」
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